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はじめまして

 駅に着くと案の定詩音が驚いた表情で、アレはなんだ? コレはなんだ? と聞いてくる。

 その様はまるで幼子のようなはしゃぎ方だった。


「あ〜あ〜、聖騎士様? そろそろ電車に乗るっスよ〜」


 そうセルイに言われると詩音は、


「そうか! とうとう乗るのだな!! どんな物か楽しみだ!!」


 期待した表情の詩音に、セルイは本当に子供だなぁと思いながら、


「さ、切符を買うっスよ!」


 そう言い切符の買い方を教える。教えられた詩音は、目を丸くし、


「きかい? とやらから紙切れが!! コレだけで乗れるのか!?」


「そうっスよ〜。それ無くさないように! 出る時使うっスから!」


 そう言うとセルイはICカードを取り出し、改札機にタッチする。

  それを見ていた詩音は、


「なんだそれは! 私のとは違うぞ!!」


  不満げな詩音に、面倒くさいなぁと思いながら、


「帰りに詩音用のを作るっスから、今はそれで改札通って!! オーケー?」


  そう言われ、詩音は絶対だからな? と言いながら改札を通った。

  ホームに上がり、電車を待つ。


「そういえば気になっていたのだが、セルイはそのとらんく? という物をずっと持ち歩いているな。市場には行かないはずだが、なぜだ?」


  詩音の質問に、


「オレは行商人っスからね〜。何時でも何処でも商売できそうならする! それが信条なんスよ。だから持ち歩いてるんス。オーケー?」


  軽く説明していると、電車がホームに入って来た。


「詩音! 黄色い線の内側にいるんスよ! 危ないから!!」


  そう言われ、内側に下がる。

  徐々にスピードを落としながら入ってくる電車に、

 詩音は驚きを隠さずに言う。


「これがでんしゃ!! 凄いな!! 一体どれだけの人が乗っているんだ!? そもそもどうやって動いているんだ!?」


  詩音のはしゃぎっぷりに、まぁ初めてだから仕方ないか〜と思いながら、セルイが乗るよう促す。


「ほらほらー見てないで入るっスよ! 扉閉まっちゃから!! 急いで!!」


「わかったから押すな! 子供じゃない! 入れるぞ!!」


  そう言うと恐る恐る入って行く詩音に、やや呆れ半分面白さ半分でセルイも乗り込んだ。


****


 電車が動き出すと、詩音が驚きながら言う。


「この椅子ふわふわしているな! それに、横に座っているのに縦に動くのか!! なんだか不思議な感じだな!!」


  流れる景色を見ながら言う詩音に、


「まぁ確かに慣れるまでは、戸惑うかもっスね。オレ、最初乗った時、酔ったっスからね〜」


  と言っても、セルイの初電車はかなり昔なのだが。

  それをわざわざ言う必要もないと判断し、話題を変える。


「それで? 着いたらどうするつもりっスか?」


  セルイの言葉に、


「それなんだが、私に考えがある。教団の拠点だった所に行くだろう? そこで私が魔法を使ってみる。この世界で魔法が使えるかは博打だがな」


  試してみたい。そう言う詩音に、セルイも頷く。


「ま、確かにやってみる価値はあるかもしれないっスね〜。オカルトは実在してるわけだし」


「おかると? と言うものはよくわからんが……任せてほしい!」


  そうして話をしているとあっという間に、目的地に着いた。


「さ、降りるっスよ!」


  立ち上がりドアまで行くと、詩音がゆっくりした足取りでおって来た。

  乗った時と同じように恐る恐る降りると、詩音は一息吐き、


「……セルイ。気持ちが悪い……。うぅ」


  その様子にセルイは慌てて詩音を椅子に座らせる。


「完全に乗り物酔いっスね!! なんとなくわかってたけど!! ちょい待ち! 今、酔いに効く薬出すから!!」


  セルイはそう言うとトランクを漁り、酔い止めの薬を取り出した。


「本当は商品なんスけどね……特別っスよ?」


  そう言いながら、詩音に薬を飲ませる。しばらくして、詩音の様子を伺う。


「どうっスか?」


「だいぶ落ち着いた。お前の薬は効くな。もう大丈夫だ、行けるぞ!」


  パンパンと顔を叩くと詩音は立ち上がり、何事もなかったかのように歩き出す。


「元気になったのはわかったっスけど、道わかんないっしょ? 先に行かない!!」


  慌てて詩音の後を追いかけ、合流し二人で改札を抜けた。


****


「え〜と、ここを曲がってっと」


 駅を出てから、セルイのスマホでナビを起動し目的地まで歩いて行く。


「このきかいは便利だな! 通信も出来て道案内も出来るとは!!」


「ハイハイ、そ〜っスね。よし、着いたっスよ!」


  町外れの高台にある、空き地。ここがかつて教団の拠点の建物があった場所だった。


「本当に何も無いな……」


  予想以上に何も無いその場所で、詩音が言うとセルイも同意する。


「そうっスね。……それで? 試すのはどうするんスか?」


  そう言われ、詩音がギターケースを開ける。


「今は昼だが、問題ないだろう。やるぞ!!」


「了解っス。そんじゃ、邪魔者が来ないようにっと!」


  そう言うとセルイはトランクから紙を出し、何かを書き始めた。


「なんだそれは?」


  疑問符を浮かべる詩音に、


「人避けっスよ。名目は『自主映画の撮影中! 』っスね!」


「じしゅえいが? とはなんだかわからんが、邪魔が入らないならそれでいい。始めるぞ!」


  詩音は気合いを入れ、自分の剣と父親の剣を地面に突き刺し、呪文を唱えだした。


(わぁ〜呪文とか久々に聞いたっス! なんか考え深いっスね〜)


 何を言っているのかはわからないが、懐かしさを感じながら見守る。

 しばらくして、詩音の剣と彼女の父親の剣から光が生じ、

 周囲が暗くなった。


(お? 魔法成功っスかね?)


  そうセルイが感じていると、

  二つの剣から光が出て、まるでCGかのように映像が浮かび上がって来た。


(おお!)


  一人感激するセルイを気に止めず詩音は詠唱しながらその映像をみる。

  その映像は、雷が落ち、白い甲冑の人物が建物内に現れたとこから始まった。

  白い甲冑の人物は、周りを見渡すと、教団の信者達に囲まれ、そして、何かをかけられていた。

  そうしていると、扉が開き、神父のような格好の男が甲冑の人物と握手を交わしたところで、

 映像が終了した。


「やはり、父上も私と同じようにこの世界に来ていたのだな……」


  ようやく言葉を発した詩音に、セルイが声をかける。


「お疲れ様っス。どうやら親父さんがこの世界に来たのは確定っスね。ただ、それと教団がどう繋がっているのか……。謎っスね」


「ああ。父上と教団……ここからどうなったのか、それが知りたいものだな」


  そう言うと、詩音は剣をギターケースに戻す。


「それじゃ帰るっスか〜。……の前に! 誰っスか〜! いるのはわかってるんスよ?」


  そう言うと、空き地から少し離れた木から人影が写る。


「な!? 気配を感じなかったぞ!! 何者だ!!」


  詩音とセルイが警戒体勢に入る。

  すると、現れたのは十代前後の少女だった。


  少女は二人に近寄り、詩音を見てこう言った。


「はじめまして、お姉ちゃん」

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― 新着の感想 ―
[一言] シオンにとっては初電車ですし、はしゃぐのは仕方ありませんが、いちいちこれは何だあれは何だと聞かれると面倒くさいですね笑。 それでも答えるセルイ、本当にいい奴だ……! 酔って商品の薬までくれる…
[良い点] キャラの個性が強く、設定が良いと思いました。 吸血鬼と聖騎士相反するキャラがタッグを組むと言うというのはこの作品の面白いところですね! [気になる点] 個人的にですが主人公の口癖のッスがき…
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