いい精神科
この前の一件で、ちょうしに乗ってしまった芽衣子は、「美少女探偵」を名乗り、学校の使われてない教室を一室借りて、そこに探偵事務所を開設する。
それで、ぼくはその助手というわけ。
「だ〜れも来ないわね〜」
と、芽衣子があくびをして、今にも眠ってしまいそう。
「いいじゃないか。事件がないということは」
「この狂った世界の中で、事件がないはずがないじゃない!」
「何言ってんだ」
「これは、『事件がないという事件』に違いないわ! きっと、誰かの陰謀よこれは。でもなんのために? いよいよ面白くなってきたわね」
何が面白いかわからないので、
「いい精神科を紹介しようか?」
とぼくは言った。
その時、教室に入ってきたのは、いかにもおとなしそうな、メガネをかけた女の子で、芽衣子が目を輝かせる。
「依頼!? 依頼よね!?」
「は、はい」
とメガネの子、少々たじろいで、
「実は、恋人を探して欲しいんです」
「失踪事件ね?」
「いいえ、失踪というわけではないんです」
「どういうこと?」
「わたしには、恋人はいません。だけど、この世界のどこかにはきっといるはずだと思って、それを見つけて欲しいんです」
ぼくは、
「いい精神科を紹介しようか?」
と言った。