見える探偵と知りたがる幽霊 1
ぎゃあ!1日に投稿するはずが遅れてる!
後、幽霊って人外なんでしょうかね、まあいいか。
「お嬢さん、貴方が犯人ね」
誰もがゴクリと固唾を飲み、静まり返った沈黙の中、長い黒髪の女が声を出した。
冷酷に告げられた宣言、女が指をさした方へと書斎に居た誰もが振り返った。
そこは幼さが残る、まだ18の少女である。そして被害者の孫でもあった。
「私が犯人ですか……? 酷い……私がお爺様を殺すなんて……、それに力の強いお爺様にか弱い私が叶うはずがありません」
孫は涙を流し、無実さを訴えるが、私は冷めた目で容赦なく切り捨てる。面倒なので早く終わらせたいのだ。
「いいえ、貴方しかいないのよ。貴方しかね」
女は淡々と淡々と殺害方法を語り、話が長引くたびに孫の顔は青ざめていき、そして全てを白状したのだった。
「仕方なかったのよ! お爺様に……お爺様の遺産を受け取るのは私しかいなかったのよ!」
孫は私に敵意を抱いた目を向けるが、それをどうでも良いかのように無視して書斎から出た。
黒い蕾の刺繍が入れられた着物を着る女の目の前に、宙に浮かぶ男が現れた。
それは足が陽炎のように揺れていて、一言で纏めるのなら幽霊、実際目の前の男の肉体は後ろの書斎で血を流し絶命している。
女はそれを平然と見つめながら、
「事件は解決したわ」
「ええありがとうございます『探偵』さん」
目の前の初老の男性は軽く頭を下げ、温厚な対応をしていたが一変怒り顔。
「しかし……あの餓鬼……私があれだけ可愛がったのに恩を仇で返すような真似をしおって……!」
実際目の前のお爺様は悲惨である。家族から嫌われ、ただ一人心を開いた孫に殺されるという、何とも哀れな話だ。
「しかし、かの『名探偵』と呼ばれている貴方が、まさか幽霊が見えるとは驚きました。もしや事件も今回のように例の力を借りて解決を?」
「ええ」
「ほうほう、これは婆さんに面白い土産話ができましたな。もう陰口を言われる必要もありませぬ。これはこれでいいかもしれません」
自らの死の怒りが消え、亡き妻の元に迎える事からかお爺様は柔らかな微笑を浮かべた。
「では、死んだ私はさっさと成仏する事にします」
本当に死ねばあの世に行けるのだろうか、幽霊は単なる生の延長戦で成仏の後は無ではないのか。何度もそう思った、でも死んでいない探偵には関係ない話だった。
「ええ、さようなら」
こうしてお爺様の姿は、霧のように霧散していき最後にはまるで何もなかったかのように消えた。それは暑い季節の夏が見せた幻覚のように。
φ
探偵である私が幽霊を見えるようになったのは理由がある。
それは幼い頃、確実とは言えないが一度母親に殺されかけたのが原因だろう。育児に疲れた母が姉妹の私達の食事に毒を入れ心中しようとした。
あいにく全員毒を飲んだが、奇跡的に私だけ生還する事ができた。が、臨死体験をしてしまったせいか探偵の見える景色は一気に変わってしまった。
それは死人が見えるようになったのだ。
最初は単なるトチ狂った自分の幻覚だと思ったが、死人の証言が恐ろしい程に一致してしまい、ある日事件に巻き込まれた時に死人の力を借り解決してしまったのが始まりだった。実際解決してしまったのだから受け入れるしかない。
私はそこから、その力を堕落的に人生を過ごす為に利用する事にしたのだ。
それが探偵業だった。
φ
探偵事務所の小さな寝室。窓際の頭向きに置かれたベッドとデスク、他は積み上げられた本で部屋が埋め尽くされている。
いつもなら読書をしたいが今日は疲れた。
寝る事にしよう。
着物の帯を解き、着替えもせずベッドに体を埋めた。
目を閉じる。
「あのーすみません」
目を閉じる。
「寝ていますね……仕方ない」
目を閉じる。
「す!み!ま!せ!ん!」
探偵は黒く長い髪を前に垂らしながら顔を上げた。
「わっ!? 驚きました……貴方が探偵さんですね?」
探偵が顔を上げると年は30ほどの男性がいた。当然足はない。
顔は素朴で、押しに弱そうな印象を抱いた。私は眠りを邪魔されたのに不機嫌になりながら髪をかき分けた。
「誰?」
「おお、顔を見れば美しい。わたくしはあるお屋敷の専門『庭師』なのですが、少々探偵様のお噂を聞き、力をお借りに来ました」
「ごめんなさい、私は暫く依頼は取らないの」
そう言って探偵はまたベッドに顔を埋めた。
「そう言わず、聞いてくださいよ」
無視。
無視。
無視。
顔を上げる。そこにはニコリと苦笑いを浮かべる庭師がいた。
「女性の部屋に居座るなんて最低ね」
「その事には本当に申し訳ないと思っています。ですが私はこの体になっても覗きなど一度もしておりませんので安心してください」
「今がそうじゃないの?」
「ですから! 話を聞いてくださいよ! 貴方様のお力を借りなければ私は夜しか眠れません」
「充分じゃない」
「ですが……本当に心残りで成仏ができないのです」
庭師は項垂れて、肩を落とす。この男は聞いてくれるまで引かない男だ。
探偵はこのまま居座れても困るので話だけなら聞こうとした。
「わかったわ、話だけなら聞く」
軽く欠伸をして、体を起こそうとするが庭師は私の手を掴み。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
と耳元でキンキン五月蝿い感謝をもらった。
「私が聞くのは話だけよ」
「はい! わかっていますとも!」
これは絶対解決してもらおうとする喜びだった。
「私は、ある事件の動機を解決してもらいたいんです」
しかし、その言葉を聞いて探偵の眉が上がった。
「ねえ、私は亡くなった人の力を借りて事件を解決してるのよ。私自身にそんな知能は無いわ」
「ええ? 話を聞くに被害者すら知らない毒殺方法等、いくつも解決してきたと聞きましたが」
実際そういう事件にぶつからないわけじゃない。だがわざわざ一から考えて解くのは頭が疲れて好きじゃない。だからその手の事件が関わりそうな時は避けるのを心構えているが、避けられない時もある。今もそうだ。
「疲れるのよ、私は自分の頭を使って解決する徒労より、楽な方を選ばさせて頂くわ。だから期待しないで」
そう言うが庭師に引く様子はない。
「ですが話は聞いて下さるんですよね?」
探偵は嫌な顔をしながらも「ええ」と答えた。
「でしたら語らせていただきます」
こうして庭師の長い夜が明けるような話を聞かされる羽目になった。
一応、庭師の謎はカットする事はなくキチンと謎解きをします。