不死身の兄と死期近い妹 エピローグ
「…………ナカダ……! ……ダイ!!」
俺はふと、何かに強く揺さぶられる気持ちを感じ、目を開ける。
目の前にはガタイのいいマッチョの黒人兵士が俺を心配そうに見ていた。
「銃に撃たれたかと思った」
その言葉と荒れ狂う銃撃音を聞き、俺はこの状況を把握できた。
「あ……撃たれたよ」
「本当か? 傷は?」
実際頭を撃たれて少し意識を失っていた。何度か撃たれて死んだ事はあったが頭を撃たれて死ぬのはこれが初めてだ。
痛みはそこまでないが脳を強制的にシャットダウンされたように気分が悪い。
「冗談……あ、カメラはどこいった……ああクソ……」
ふと胸にかけていたはずのカメラが見当たらない。
手探りで砂埃の舞う周辺を探り、運良く見つかった。
「壊れてねえよな……」
一眼レフカメラを仲代は弄るように触り、ニコッと笑みを見せて自撮りをした。
カメラを確認すると見事に紛争地帯で笑顔を見せるバカの顔が綺麗に写っていた。
隣の黒人兵士は呑気な俺を見て頭を抱えた。
「ナカダイ早く行くぞ!」
「わかったわかった、すぐ行く」
俺はカメラを持ち、この銃声の鳴り響く地域から離れようとする軍用トラックにかけ走った。
他の兵士達とトラックに何とか乗り込み軽く息を吸った。
やっとまともな息を吸えた気がした。死なないからと言ってこう見えて一応緊張はするし銃弾の音を聞くとびくりと鼓動が跳ね上がる。
俺は迷彩服のポケットから一枚の写真を取り出した。
既に火に焼けていて古びている。
そこには一枚の少女が親子と共に満面の笑みを浮かべた写真であった。
そして俺も写っている。
「ナカダイ? それは何だ?」
さっきまで俺をエスコートしてくれた兵士が写真を覗き込んだ。
「俺の家族の写真だよ」
「そういう割には古い写真だな」
「実際古いからな」
「?」
兵士は不思議そうに俺を見て納得したようなしてないような顔をした。
「お前は変な奴だな」
「実際変な奴だよ、紛争地帯に自ら来る奴なんて大概そうじゃないのか?」
「そうか? 俺が前に会った戦場カメラマンはお前とは違って立派な信念を持っていたがな……いやそういう点では変わった奴だった」
ガタンガタンと揺れるトラックに乗りながらケツが痛くならないように何度か体勢を変えた。でも痛い。
「どんな奴だった?」
その言葉に深い理由はない、ふと気になっただけだ。
「こんな悲劇が2度と起きないよう世界に伝えていきたいってのがアイツの信念だった。まあ言葉だけで聞けば単なる綺麗事だがあいつの目には本当にやってやる輝きがあった、俺も最初は鼻で笑ってたがな」
「それでそいつは今はどうしてる?」
「死んだよ、カメラごと撃ち抜かれて死んだ」
「そうか……なんか悪い事聞いたな」
。
「こんな場所じゃ死は普通さ、お前もそうならないように気をつけるんだな」
「俺には縁のない言葉だけどな」
パシャッ。
俺は笑いながら隣の黒人兵士の顔を一枚撮った。
「お前が死んでも俺が覚えといてやるよ」
不意を突かれた事に不満か、兵士は少し睨んでいたが数秒経ったら笑みに変わった。
「本当に変わった奴だなお前は」
これが俺と彼の最後の会話になった。
彼は死んだんじゃない、死にかけて戦線から抜け出しただけだった。元々その場限りの関係だったし連絡先まで聴くような仲でも無かった。
だけど彼の咄嗟に撮られた時の写真は今でも残っている。
不死身は孤独で嫌になる。
俺の知る創作物では大半がこの考えを持ち死を望む事が多い、だが、俺は敢えて逆を選んだ。
不死身である事を利用し、自分のやりたい事をやるだけやってみようと思う、まずは世界一周でもどうだろうか、馬鹿げてる話だが俺が言うと馬鹿な話ではなくなる。
それに俺が生きてる限りは優花を忘れる人間はいない、俺が生きてる限りは優花は生きてる事になるそうだ。
ならそれでいい、俺はずっとお兄さんとして妹の願いを叶え続ける事にしよう。
そう俺は優花の兄なんだから。




