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人外×人間ストーリーズ  作者: ガッチムチ帝国神
見える探偵と知りたがる幽霊
10/17

見える探偵と知りたがる幽霊 2


「生前、私はあるお屋敷の庭師を担当しておりました」


「そう」


「はい、ってさっきも言いましたね……ごほん、そこには麗しき双子姉妹のお嬢様がおられまして、私は幼い頃から二人を見守ってきました、お二人共鏡を写したかのように似ておりまして……いやまあ……私はお嬢様方が15の頃に頭を打って死んでしまいましたが……」


 庭師は頭をポリポリと掻いた。


「ですが意外、私が向かう先は閻魔大王がいらっしゃる地獄ではなく現世でした。私は最初は受け入れられませんでしたが、お嬢様方を見守れるのならこれはこれで良しとしました」


 誰もが幽霊になれるわけじゃない。幽霊になるものは主に偶然、それか恐るべき生への執着の二つが大半だ。

 庭師は後者か。

 

「気持ち悪いわ貴方」


 見守りたいという気持ちは分からなくもないが、基本思春期の時期に見守られてもかえっていい迷惑だ。それに庭師は男だ、同性なら兎も角、異性なら嫌悪の対象となるだろう。

 庭師は私の言いたいことに気づいたのか地震の名誉のために口を開いた。


「いえいえ、私はお嬢様達の部屋には一度も覗いた事はありません、この命にかけてもそれは言えます」


「そういう問題かしら」


 それに死人が命をかけると言われても説得力に欠ける。


「まあそれは兎も角、私はお嬢様に悪い虫がつかない様見守り続けました。お二人方は仲が良く、見ているこちらも癒されるほど麗しき似た者姉妹でした」


 一喜一憂しながら語っていた庭師だったが、ふと俯いた。


「ですが18の時です。『妹』様が、ある日に『姉』様の事を『殺してやる』と影で言っておりました。最初は仲のいい姉妹でもそういう事があるだろうと複雑な心境ながら納得しようとしたのですが……その一週間後に姉様が殺されました……死因は恐らく毒殺です」


 妹が姉を殺した。その言葉に一瞬、息ができなくなったが平然を装い探偵は口を開いた。


「よくある話じゃない。貴方の知らないところで関係は拗れてるものよ」


「いや……ですが……私は納得ができないのです。仲のいい姉妹が殺人を犯した話だけじゃありません。その二日後にお屋敷担当の『料理人』が屋敷に火をつけ、妹様、『家政婦』、料理人もろとも全てを燃やし尽くしたのです。おかしくないでしょうか? 何故料理人が火をつけたのでしょう?」


 庭師の物言いから、妹が毒を入れた瞬間までは見ていないらしい。料理人もだ。


「死因が毒殺なのなら怪しまれるのはまず料理人でしょう? それに妹が殺したとは限らないわ、料理人が毒殺したのかもしれないじゃない」


 探偵が髪をくるくると回すように弄りながら言うが、庭師は意地になって反論を返す。


「お言葉ですが料理人と姉様は恋仲の関係でした。それも爛れた……ゲフンゲフン、誰もが羨むほどの二人でした。その料理人が姉様を殺すわけがありません」


「ならこうしましょう。妹が姉を殺し、料理人が疑われそれに耐え切れず火をつけた」


「むむむ……ですが二日で火をつけるまでの行動に出向くのでしょうか? それに彼は誰よりも姉様を愛しておりました。そんな彼が殺すなんてありえません、私が認めた男なのですよ」


「人間何が起こるかわからないわ、経った1日で愛情が殺意に変わる事だってあるもの」


 探偵はそう返すが、庭師は一向に納得のいかない表情だった。これは手強い、そもそも話を聞くだけのはずだったのにこちらも真剣に聞き始めてるではないか。

 これ以上長引くと睡眠時間が削られそうなので探偵は、


「被害者の中で幽霊になった人はいないのかしら」


 最初から本人に聞けば早い話だ。こうやって何度も議論を繰り返すのは徒労の極み。私は簡単な道を選ばせてもらう。

 だが探偵の考えとは逆に庭師は横に首を振った。


「いえ……当時亡くなった方に私のように霊になったものは…………」


 庭師は悩める表情のまま顎に手を当てて……閃いたように目をカッと開けた。


「一人います……! 私が知る中では一人だけいます!」


「ならその人に話を聞いた方が早いんじゃないかしら」


φ


 探偵は目頭に手を当てながら溜息を吐いた。

 何故か元気よく去って行った庭師は、何故かまたこの事務所の部屋に戻ってきたのだった。幽霊を一人連れて。


「こちらがお屋敷の『家政婦』です」


「よろしくお願いします」


 庭師が目元に皺がある優しそうな笑みを浮かべる家政婦を探偵に紹介して、私は愚痴を言う。


「どうして私のところに連れてきたのかしら」


「話を聞こうとしたのですが、私より貴方の方が正確だと思いまして」


「庭師さん、最初の約束覚えているかしら」


「お、お願いします! 私には貴方以外悩みを解決できる方はいないのです……ですから」


 庭師はめい一杯頭を下げ、隣の家政婦も、


「はい、私も何故料理人と妹様があのような犯行を犯したのか気になりますわ」


 同じく頭を下げ、探偵の雪女のように冷たい表情に動きがあった。諦め気味に息を吐き、


「わかったわ、家政婦さん、話を聞かせてくれないかしら。姉妹と料理人について」

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