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侍女の事情

 あ─、こちら松尾丸です。聞こえますか? どうぞ

聞こえるってのも変か。伝わってますか? どうぞ


『普通に話して頂いてよろしいですよ若様。

確かに若様の仰る通り、話すと言うのが正しいかはわかりませんが』


 晴がこちらを見て微笑んでいる。

普通にって言われても、この世界に来て初めての会話だし、テンションおかしくなるよね─。

あと2、3年は後の事だと思ってたのに突然すぎるし。


『てんしょん? それは何ですか?

と言うより、この世界とは如何なる意味でございますか?』


 あっ⋯⋯やっちまった


 俺の考えてる事は晴に筒抜けなんだった。ってこれも筒抜けか。

もう言い逃れはできないだろうな。


『ええ』


 ⋯⋯わかった。それについては後程答える。

それよりも、晴は何故俺の考えてる事がわかる?

元々そのような能力の持ち主なのか?


『元々はこのような事はできませぬし、何故わかるのかは私にもわかりません』


『ですが、いつからかと問われれば、若様がお倒れになり、意識がお戻りになられた頃からにございます』


『若様の意識がない間、私は毎日願掛けに行っていたのですが、お目覚めになられる前の日に突然目の前が暗くなり、その時に御自分が田村麻呂様だと仰る方が現れて私に若様の手助けをするようにとだけ仰られ消えました。

その次の日に若様がお目覚めになられた時に私の頭の中に若様の声が響いて参りました』


 手助け? つまり情報伝達とかか。

普通に聞いたら信じられないだろうけど、今の俺には信じられる。

何せ俺の存在自体が信じられないんだから。


 わかった。俺は晴を信用する事にする。

これから話す事は他言無用で頼む。

尤も、言っても誰も信じないだろうが。


『わかりました』


 晴が少しだけ緊張の面持ちになった。


晴よ、俺は松尾丸であって松尾丸ではない。


『⋯⋯はい?』


 うん、そうなるよね。ごめん、ちょっと格好付けて言っちゃった。


 俺の外見は松尾丸だけど、人格は500年くらい未来で生きてた人物なんだ。そしてここからが問題なんだが、俺の未来での名前は畠山義彦、二本松畠山氏の子孫なんだ。

寝て起きたら何故か松尾丸になってた。

信じられないかもしれないが、これは事実だ。


『⋯⋯さようでございますか。それで畠山攻めにあれ程動揺なされておられたのですね』


 ⋯⋯俺の言葉を信じられるのか?


『もちろんでございます! ⋯⋯と言いたいところですが、若様が私に嘘をつく意味を見出せませんし、そのような話、人によっては乱心したと判断されてもおかしくありません。

にも関わらず、お話しになられたという事や、何より今の状況に説明がつきません。

それらの事から、この話は真実だと判断いたしました』


 晴は信用できる人間だ。


 もし、俺の言う事は無条件で全て信じるなどといわれたら、逆に信用できないところだった。


 これからよろしく頼む。


『はい。若様の手助けになれるよう努めます』


 ありがとう⋯⋯『生憎老い先短い老婆ですのでいつまで務まるかわかりませんが』

⋯⋯ございます。

 

 あー、怒ってる

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