城外
城を出た一団が、三世代の親子を先頭に進んでいる。
先先代当主義顕、先代当主隆顕、現当主の弟氏顕
それぞれ後方、左、右を担当するが、今はまだ家族の会話を楽しみながら共に進んでいた。
「しかし父上、御自分の御歳をお考えくだされ。
いくら元気とは言え、そろそろ戦など引退してくだされ」
「そうですぞ祖父上様。そろそろ我等にお任せ下さい」
「何を申すか!
儂から見れば、まだまだお主等などひよっこでしかないわ。
それとも何か? 儂がお主等の足を引っ張っておるとでも言いたいのか?」
衰えを知らず、それ故に勇猛過ぎるから心配なんだよ
そう思った親子だったが、弁が立つ相手に言っても言い負かされるだけと諦め、声には出さなかった。
「ともかく、無茶だけは無茶しないで下され。
では儂はここで。氏顕も抜かるなよ」
そう言って隆顕が左へ馬首を返して行った。
「はっ。父上もお気をつけて下され。
それでは祖父上様、私もここで。御武運を」
続いて氏顕が右に進路を取った。
「おう。お主等もな。
年長者より先に逝くのは許さんぞ!」
義顕がからからと笑いながら応えた。
「さて、儂も少し急ごうかの。
大見栄切っておいて戦に間に合わないでは皆の笑い物じゃ。
皆の者、遅れず付いて参れよ!」
そう言うと義顕は大きく迂回し、森の中へ消えて行った。