行動開始
田村家の諸将が軍議をしていると、慌ただしく斥候が駆け込んできた。
「申し上げます! 二階堂、大内軍を物見が捉えました!」
「大義! 誰かこの者に水を持って参れ!」
息を整えた斥候は、礼を述べると持ち場に戻って行った。
「父上、それでは手筈通りに兵を伏せて合図をお待ち下さい。氏顕も頼んだぞ」
「任せておけ。一人として生かして帰さん!」
「父上には負けませんぞ!」
儂の言葉に頼もしい言葉が返って来る。
「その意気や良し! 奴らなどに屈する田村では無いわ!」
「祖父上様はあまり御無理はなさらずにお願いしますぞ」
「何を申すか! 若い者には負けん所を見せてやるわ。
この田村義顕、多少老いたとは言え我が子や、ましてや孫になどまだまだ負けん所を見せてくれるわ」
「はははっ。御無理だけはなさらず、よろしくお願いいたします」
祖父上様の言葉に思わず苦笑が漏れてしまった。
確かに誰よりも経験則が有り、それでいて勇猛ではあるが、身内の情としてはどうしても心配してしまう。
まあ、祖父上様なら何とかしてしまうのであろうが。
「では、各々方、万事抜かりなく!」
「おう!」
三名が声を揃えて儂の檄に応え、勇ましく軍議の場を出て行った。
さて、儂も行くか。