田村
晴が戻って来た。
本当は準備する事とかたくさんあるんだけど、一度俺の様子を見て来ると言って、情報を伝えに来てくれた。
ありがとう。
『殿のお考えをお伝えします。
まず、結論から言いますと、籠城はしないとの事です』
ん?
一か八かで真っ向勝負って事?
『いえ、籠城はしないが、籠城すると見せかけるとの事です』
『まず、城に1000名程の兵士を残し、残りの4000のうち、1500は二本松城の守備のためにそちらに入っていただきます』
『次に、2500の兵士をさらに分け、1000名は敵の退路を断つために、1400名は敵に奇襲をかけるためにそれぞれ伏兵していただきます』
残りの100人は?
『万が一敗れた場合、若様をお連れして落ち伸びる、それが叶わない時は、若様の介錯をした後、若様のお首をお守りする者達です』
は?
それって、俺も死ぬかもって事?
『それが戦でございます』
⋯⋯正直舐めてた。
自分が関わってない分、どこか他人事のように考えてたけど、これは田村家の戦だ。
そして俺も幼いとはいえ、今は田村家の人間だ。
今回の畠山の件のように、俺が生きていれば反乱や再興の旗印になり得るわけで、敵としてもそれは好ましくないだろう。
ならば自分達に従わないなら養子なり何なりで傀儡を立てるか、田村の一族は滅ぼした方が敵にとっては手っ取り早いんだろう。
それに、今回も、今までもこれからも、田村家の戦で死ぬ、死んだ、田村家以外の人がたくさんいるだろう。
敵味方問わず。
なら田村の俺がそんな考え方じゃいけない。
田村の命令で、田村のために前線に立ち死んでいった、そしてこれから死んでいく人達に顔向けできない。
そうか。俺は変わらなきゃ。
いつまでもどこか観光気分みたいな他人事でいるわけにはいかないな。
俺はもう畠山義彦じゃない。
田村松尾丸なんだから。
よし、そういう訳で決意も新たに寝るとしよう。