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私が初めて読んだ本
てんてんてん、てんてんてん。
私が初めて読んだ本はそんな感じの始まりだ。本というより絵本。文字を覚えて、一人興奮した記憶は今でも何故か思い出す。母に読み聞かせてもらった記憶は残念ながらこれっぽっちも無い。だが、自分で覚えた文字を指でなぞりながら、誰かに見せつけるように、自慢するように、得意げに、声に出して読んだ。てんてんてん。たのしかった。てんてんてん。思い出す。てんてんてん。中身なんて覚えちゃいない。いや、中身なんてどうでもよかったのだ。自分が何かを成したのだと実感できれば、それでよかったのだよ。二歳の私は。
今では数百冊の本が棚を埋める。ミステリー、恋愛、SF、ライトノベル。私が求めて買ったものだったり、友人から貰い受けたり。何度も読み返すのもあれば、一度しか読んでないもの。ここだけの話、積ん読も幾冊かある。
しかし、初めて私に読まれた絵本は存在しない。
てんてんてんは存在しない。