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狂気の白雪姫  作者: 鳥見風夫
狂気の始まりと終わり
4/4

第3話(残酷描写あり)

残酷描写ありです。苦手な人は気を付けてください

 白雪姫は笑いを堪えきれない、という様子で王子にささやきかけます。

 「白雪姫、せめて式が終わるまでは我慢してくれないか?」

 「もちろんですわ。私、そこまで短気じゃありませんから」

 白雪姫はいたずらに成功した子供のように笑います。

 結婚式が終わり、参列者たちが思い思いに帰っていく中、白雪姫はお母さんを呼び止めました。

 「あら、どうしたの、白雪姫?」

 「お久しぶりです、お母さま。少しお話をしませんか?」

 お母さんはなるべく平静を保とうと努力しています。しかし、そんな演技も白雪姫にはバレバレでした。

 「ねぇお母さん。私を殺したのは、お母さんですよね?」

 「こ、殺した? どういうことかしら? 貴女はこうやって生きているじゃない」

 「それは、私が生き返ったからですよ」

 「ともかく、変な言いがかりは止めてくれないかしら、王女様?」

 「何を言っているのかしら、王妃様」

 氷の女王のように、ゾッとするような冷たさで、白雪姫は微笑みます。

 「王妃様は私を殺しに来た時、三度とも変装をしていましたよね?」

 「…………」

 お母さんは沈黙を守り続けます。しかし、白雪姫にとってはその沈黙が何よりの回答です。

 「でも、あなたは自らが誇るその美しさを、捨てきることができなかった。恰好だけは薄汚く出来ても、肌や髪を汚すことはできなかった。思い返してみれば、すぐに分かりましたわ」

 「な、何を言っているの、白雪姫」

 「そうだ、お母さん。今日はプレゼントがあるの」

 白雪姫はリンゴのタルトを差し出しました。すると、あからさまにお母さんは顔を引きつらせます。

 「い、いえ、要らないわ」

 「あら、私の記憶だと、お母さんはリンゴが好きだったと思ったのですが」

 「そ、そう」

 「それとも、何か食べられない理由でもあるのですか?」

 白雪姫はお母さんに詰め寄ります。その表情には、余裕の笑みが浮かんでいます。

 王妃様は結構あっさりと、そのプライドを捨てました。

 「お願い、何でもするから、許して!」

 「あら、お母さんは何もしていないのだから、何も許すことなんてないと思ったのですが……じゃあ、あの靴を履いて踊ってください」

 白雪姫が指さした先に置いてあるのは、火で真っ赤に熱した鉄の上履きです。

 「オーブンで一緒に間違って焼いちゃったの。あれを履いて踊ってみてくれないかしら」

 「いや、いや、いや………」

 「じゃあ、このタルトを食べてみてください」

 お母さんはタルトと鉄靴を見比べ、ごくりと生唾を飲み込みました。

 そして、ゆっくりと鉄靴の中に、白くほっそりとした足を入れていきます。

 「っ、くっ、あっ……うっ」

 「早く踊ってみてください」

 白雪姫は残酷にも、お母さんの背中をどんと押しました。

 「きゃぁァァァァぁァァァァアアアアっ‼」

 高温に熱されて真っ白な皮膚が黒く変色し、爛れ、血が滲み出てきます。その激痛にお母さんは悲鳴を上げ、たたらを踏みます。

 「あら、愉快なステップですこと」

 「ううっ、ああっっっ……」

 白雪姫は容赦なく、慈悲なく、残酷に。その背中を押します。

 その度に王妃の足からは肉が焼ける臭いが漂い、傷一つない皮膚からは血が滲み、喉からは苦悶の声が漏れます。

 「さぁ、宴の時間です。踊ってください、王妃様」

 その宴は、王妃が息絶えるまで続きました。


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