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狂気の白雪姫  作者: 鳥見風夫
狂気の始まりと終わり
3/4

第2話

 白雪姫と七番目の小人は、小さなリビングの小さなテーブル越しに向かい合っていました。

「お久しぶりですわね、七番目の小人さん。他の小人さんたちはいらっしゃらないのですか?」

 「みんな森に行っているよ。陽が暮れるころには帰ってくるはずだ」

 その言葉を聞いて、白雪姫は少しだけ思案します。

 「それなら、別にいいですわ。早めに用件を済ませてしまいましょう」

 「用件ってのは何なんだい? わざわざ王子までこんな辺境に連れてきて」

 「とっても大切な用ですわ」

 私の復讐のために──白雪姫は非常に小さく呟きました。

 「リンゴは、まだありますか?」

 「リンゴ? それなら、ここの裏の樹になってるはず」

 「そうじゃなくて、私がかじったリンゴのことですよ」

 白雪姫はあの真っ赤に熟れたリンゴを思い出し、顔をしかめました。

 「あぁ、それなら今もあるよ……ほら、あそこに」

 七番目の小人が指した棚の上には、とても美味しそうに熟れ、半分に割られて一口分だけかじられたリンゴが置かれています。

 「私を殺した、とってもとっても憎たらしい、美味しそうなリンゴ。これを貰ってもいいかしら?」

 七番目の小人は白雪姫を訝し気に見やります。

 「このリンゴを、どうするつもりだ?」

 「復讐に使います」

 白雪姫は当然のことのように、あっけらかんと。必然のことのように、力強く。彼女は一切の迷いなく断言しました。

 「はぁ、やめとけ白雪姫。復讐なんてしても、お前さんの得にはならねぇ」

 「私の得になんて、ならなくても構いません。ただ、私を殺したあの人に、お返しをしてあげたいだけです」

 白雪姫は笑っています。それはもう、楽しそうに。

 「私は三度も死んで、三度生き返った。その体験で私は様々なことを学びました」

 「だったら、その復讐が何の意味もないってことくらい、とっくに学んでるんじゃねぇのか?」

 「はい、もちろんです。七番目の小人さん」

 白雪姫は頬を上気させ、どこか艶めかしい吐息を漏らします。

 「でも、でも……楽しいじゃないですか!」

 「は?」

 七番目の小人は、訳が分からないとでも言うように首を傾げました。しかし、白雪姫は続けます。

 「私を憎んで、憎んで、憎んで、殺したいほどに憎んだあの人が! 苦しみながら、何度も殺したはずの私に殺されていく! 私は想像するだけで身震いしちゃいます‼」

 白雪姫は叫びます。もはやその眼中には、七番目の小人のことなどありません。

 しかし、彼女は突然スッと冷静になりました。それでも、口元にある笑みは消えません。

 「分かった。好きに持ってけ」

 「ありがとうございます、七番目の小人さん! また今度、お礼をしに来ますわ!」

 「お礼なんていい。だから、早く出ていけ」

 七番目の小人は呻くように吐き捨てます。

白雪姫はその言葉に従い、大人しく王子と共に帰りました。


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