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狂気の白雪姫  作者: 鳥見風夫
狂気の始まりと終わり
2/4

第1話

 下仕えの人達の手によって目を覚ました白雪姫は、王子から直々に説明を受け、やっと自分が置かれている状況を知ることができました。

 「私はこれから、どうすればいいのでしょう?」

 いくら眠っている間とは言え、四六時中王子のそばにいた女性が突然離れるなど、王子の対外的な面からも、白雪姫の身の安全的な面からも出来ません。

 白雪姫の容姿を見た貴族たちの一部は、明らかに白雪姫に対して好意を寄せていたので、このまま解放してしまえば、白雪姫が危険な目に遭いかねません。

 「まぁ、最善策としては、僕と形式上だけでも結婚していただく。というのが考えられる中では最善でしょうね」

 「はぁ、やはりそうなりますか」

 王子のその案に、白雪姫は渋々ながら頷きました。いくら玉の輿とは言え、嫌なものは嫌なのです。

 白雪姫からすれば、王子とは初対面のようなモノですから、それも仕方ないでしょう。

 「その前に一つ、お願いがあるのですが」

 「何でも言って下さい」

 王子としても、どこか引け目があるのでしょう。王子は白雪姫の言葉を即座に快諾します。その早さ、王族として心配になるレベルです。

 「小人の方々に挨拶をしに行きたいのですが」

 「あぁ、あの小人の人達ですか。もちろんです。今から馬を準備するので、すぐにでも行きましょう。白雪姫が目を覚まさなくなって、心配していましたからね」

 王子は爽やかな笑顔で、下仕えの人達にすぐに馬車の準備をするように言いつけました。結果的に目を覚ましたのですが、その直前には白雪姫の背中を殴りつけたのです。白雪姫が一言そのことを漏らせば、下仕えの首なんて一瞬で物理的な意味で飛びかねません。




 それから一日ほど経った頃でしょうか、王子たちを乗せた馬車は森へ到着しました。

 森の入り口からは、馬が通れないので徒歩になりますが、途中からは小人たちが踏んでけもの道のようになっているので、大して問題ではありません。

 程なくして、一行は小人たちの小屋へ到着して、白雪姫は小さなドアを軽くノックしました。

 「はーい」

 すぐに返事が返ってきて、どたばたとあわただしい音が響いた後、ガチャリとドアが開き、一人の小人が顔を出しました。

 「どちらさ……って、白雪姫!?」

 「はい、お久しぶりです。七番目の小人さん」

 小人は驚愕に目を見開きました。それもそうです。もうとっくの昔に死んだと思っていた人間が、元気に戸口の前に立っているのですから。

 「あぁ、白雪姫は死んだはずなのに、俺はもう幻覚を見るほどに疲れ果ててしまったのか。だから家の中で家事なんてしたくないと思っていたのに‼ はっ、それとも、俺は本当に死んだのか!」

 白雪姫はオーバーリアクションに驚く小人の頭を、こつんと軽く叩きました。

 「幻覚ではありませんし、死んでもいません。目を覚ましてください」

 後ろでこの流れについてこれずに、目を白黒させている王子を置き去りにして、白雪姫は家の中にズンズンと踏み込んでいきます。

 短い間でしたが、家事をこなしてきた家でもあるので、間取りなんてとうの昔に頭の中に入りこんでいます。

 白雪姫は、ドカンと小さめの椅子に座り、微笑みました。

 「さて、これからは、私の時間ですわ」


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