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最終話:再び会うその日まで

西暦3015年 10月20日

フロンティア共和国連邦領・ルウム星系自治連合王国・惑星ルウム

連邦直轄領・エントロフ州・カラゲル島



 秋の紅葉がとても美しい島だ。春になれば花並木になるだろうな。

 ぼくが、カラゲル島に来たのは今日ここで戦没者式典が行われるからだ。

 皇立ルウム国際宇宙総合学園までの並木道を一枚一枚カメラに収める。

 あの戦いの後、ぼくは軍を辞めた。辞めた後まず始めたことは、サクヤの居場所を確かめることだった。

 案の定、彼女は兵士として志願したようだ。

 なぜ彼女がその様なことを行ったのかわからなかった。熱狂的な帝政主義者ではなかったと思う。

 軍が解体された後兵士のデータベースは、新設された宇宙対外武装警備庁に移されたと聞いてぼくは彼 女のことを調べた。

 戦争終結後、彼女がどうなったかを知りたかったからだ。

 結果は予想通りだった。



〔サイレーン防衛・壇ノ浦平家方防衛隊所属。所在。行方不明〕



 カラゲル島の潮風は気持ち良かった。

 ぼくは、海沿いを歩いていた確かこちらの方だったはずだが、どうやら道に迷ってしまったらしい。

 しばらく歩き小さな小道に出る。


――さてどうするか。


 そう考えていると、ふと昔懐かしい響きが聞こえて来た。目の前から男女の学生が歩いていた。


(わかっていること何度も言わないで)

(わかってるのなら、最初からやれよな)


 略式ウーディア語と言う物だ。

 もともと言語の発音が速いウーディア語を形容詞や接続後省いた言語だ。

 側から聞けばボソボソと喋っているように聞こえる。

 仲の良い者同士ならさらに省いた言葉が用いられある種の暗号として使われることもある。

 この二人の略式は普通の人よりも数倍は早い。それで会話が成立しているからこの二人は恋人だろうが。

 ぼくも小さい頃はシャラとサクヤの三人でよく言いあっていた。

 ぼくはウーディア語で話しかける。


「すいません。戦没者共同墓地はどっち?」

「え、ああ、共同墓地ね」


 と少年が答える。


「このままはっ直ぐ行って、途中で大木があるんでそこを左です」

「ありがとう。お礼に一枚」とぼくは持っていたカメラを向けシャッターを切る。唐突に写真を取られたので二人の顔は間が抜けているような顔だった。


「行き成り撮らないでください!」と少女がすごい剣幕で向かってくる。

「ごめん。いや、被写体があんまりにも良かったので」

「仲が良いからなんですか?」といやそうな顔で男の子が言う。

「いや、恋人同士かと……」

「こいつとですか? 誰がこんな奴と」

「それはおれのセリフだぜ」


 とぼくの目の前で口論を始めた。何だが、初々しいなと思うぼくはバカだろうか。


「ありがとう。これお礼だ。インタムあるかい? データ送るよ」


 少年が持っている情報端末インタムにデータを送る。

 ぼくは先ほど取った画像を送る。


「間抜け面ね」

「お前の方が抜けているよ」


 と二人で顔を近づけながら見ている。ぼくと彼女もそうだったと思いだす。

 始めの頃はそうだ、ぼくもあのような会話をしていた。

 早く会いに行こう。ぼくはそう思い。二人に別れを告げる。

 彼らが言った通り大木を左にまがった先に有った。戦没者共同墓地。

 門のところには礼拝を済ませた人で溢れていた。ぼくは管理人に戦戦没者碑はどこに有るかと聞いた「この奥だよ」と管理には言う。

 奥の海が見渡せる丘の上にあった。

 この地は戦後解体処理で、唯一、王制廃止に反対した自治国であり、熱狂的な帝政主義国家だ。

 そして、革命戦争の最後の戦場でもある、その関係上、この革命戦争で者達の供養の為にこの地に慰霊碑が創られた。

 三角錐の大方のモニュメントだ。

 そこには革命で亡くなった革命軍、帝国軍。両軍の戦死者の名前が刻まれている。

 無論、二人の名前もある。

 ぼくは持ってきた花束を置く。


「シャラ、サクヤ。久しぶり」


 海風が強い丘の上でぼくは膝を着き彼女達に語りかける。ぼくは、仕事のこと、子供の頃のこと、サクヤとは仲良くやっているか、戦後のことも。


 全てを語り終えぼくは立ち上がり「まだそっちに行けないけど、いつかは行くよ。何年掛るかわからないけど、必ず行く、その時は、あのバーカロイドになにを入れたか教えろよ。じゃあな」


 ぼくは歩き始める。その背中を押す海風はなんだが暖かった。

 二人に押されているかに様に「精一杯生きてから来てね」と。


 じゃあな、また、会う日まで――


 待っているよ、必ず。


 二人で首を長くして待っているから!

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