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一話:宇宙

 ねえ、また、三人で会おう。


 そうだな、三人で会おう。


 そうね、その時は――

西暦二九九九年9月14日

フロンティア帝国連邦領ハーディア星系


『ぼく達は今宇宙にいるよ、なんだが不思議な気分だ。いつもは地上から見上げていた美しい宇宙は上がると船の残骸やゴミで埋め尽くされているんだ――』


 ぼくはその続きを書こうとしたときドアが開く音がした。振り向くとそこにはぼくの天使がいた。カルー・シャーララ・トラール。ぼくの恋人。そして天使。


「何してるの?」と笑顔で彼女はぼくに訊く。

「手紙さ、あいつに……」


 ぼくはペンを止め、彼女に手を差し出す。


「早く終わればいいね、戦争」そう言いながら彼女はぼくの手を取り、ぼくの元に引き寄せられる。

「そうだね」とぼくは笑顔で答える。


 ぼくと彼女は同郷の出身で家が隣同士だった。その縁あってかぼく達はよく遊んでいた。『達』と付けるのにはもう一人いるのだ。今は首都衛星ルドリアに住んでいる。

今書いていた手紙はそいつにあてた手紙だ。


「ねえ、サクヤはいま何しているのかな?」

「いまでも売れない小説でも書いてるだろうよ」


 ぼくは言う。彼女は笑う。

 彼女の笑顔は好きだ。ぼくは彼女の笑顔を見ると落ち着く。

 再び書き始めようとしたペンを止めぼくは彼女を抱きよせた。


「ちょっと!」

「誰も見てない。誰も」


 ぼくは彼女を抱きしめた。もうすぐ作戦が始まる。もう抱きしめることが出来ないかもしれない。もしかしたら彼女が居なくなるかもしれない。そう思ったら無性に寂しくなった。


「シャラ。死ぬなよ」

「あなたも」


 ぼくは彼女のキスしようとしたが『艦長より総員に達する』その言葉にぼくはよりも早く彼女が離れる。邪魔しやがって。


『本艦は恒星間航行用粒子ドライブ不調により、本隊より遅れることになった。これより第一臨戦態勢解除。第二警戒態勢に移行する。各員休息を取れ。以上』

「どうやら、シルバン攻略戦に参加できなそうだ」とぼくは彼女を見て言う。


 フロンティア帝国連邦の最前線宇宙要塞、ここを攻略することはフロンティア帝国本土星系への侵攻の足掛かりになる、重要な作戦に乗り遅れる事になるとはついているのかいないのか。


「そうみたいね」


 彼女は嬉しそうだ、たぶん戦わないで済んだからだ。


「なあ、これからどうする?」

「わたし、機体の整備手伝ってくる」そう言って彼女はぼくの腕の中から逃れる。

「なあ、一緒に――」

「ここは軍艦よ、大学時代とは違うのよ。一緒に機体の整備に行きましょう。上官命令よ。曹長」

「はあ……了解です。少尉殿」

 ぼくは彼女と共に機体格納庫に向かった。


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