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時鐘のアリア  作者: 蒼咲猫
第一章
5/21

第一話 日常

短いです。が、きりがいいので、ここで切ります。




「アリア、時間ですよ。」

 その声は、石で造られた塔の中に、よく響いていた。

「了解しました、シスター。」

 私は小さく返事をすると、今までやっていた編物の手を止め、立ち上がった。


 自室から出て、そう遠くない場所にある、塔の上まで続く螺旋状の階段を登る。

  コツーン コツーン

 石で造られたからか、階段を登る音が、暗く狭い螺旋階段の中に、冷たく響いた。

「……ふぅ。」

 …どれ程、この階段を登り続けただろうか。

 階段を登り切り、小さく息を漏らした私は、目の前にある、古びた扉を開けた。

  ギィィーー

「……。」

 開けると同時に、悲鳴のような音をたてて(きし)んだ扉に、眉を寄せる。


「……おはよう。」

 扉の先には、一面の深い森と、大きな鐘があった。

 私は、その大きな鐘に挨拶すると、何時(いつ)もと同じように、その鐘を鳴らした。

  ゴーン ゴーン

 鐘が鳴らした大きくて低い音は、眼下に広がる街に響いた。


 その街は、周りが深い森に囲まれた、小さな「国」だった。

 その国の中心にある、大きな噴水のある広場では、毎日のように繰り返される「日常」があった。



 やんちゃ盛りの兄弟がイタズラして、母親に叱られる光景を、周りの人々は微笑ましく見守っている。

 両親に連れられた女の子は、よそ行きの服を着て誕生日を迎えたお祝いをしている。

 通りに面した一流の料亭では、見習いになったばかりの青年が、雑用をこなしている。

 噴水のある広場の隅では、地元の画家がスケッチブックに鉛筆を走らせている。

 噴水の側では吟遊詩人が歌い、おひねりの山ができる。

 噴水のある広場に続く大通りでは、国一番の規模の市場が賑わいでいる。

 市場を抜けた先には、国の四方を取り囲む深い森に入っていく狩人達の姿。


 そして、そのどれもが、幸せそうな笑顔で彩られていた。



 その事を横目で確認した私は、また軋んだ音をたてる扉を開けて、塔を降りた。


 ーーそれは、何時も繰り返していた日常の光景。

酷く退屈で、刺激のない日常。

けれど、その中にある小さな幸せを知っている私は、その日常を繰り返すのだ。

 遥かな昔、私がそう決めたように、ずっと。



 変わらないことなどないと、既に知っていて。それでも、否、だからこそ。

 私は、変わらない「何か」を欲した。


 その先にあるのは、きっとーー

 意味不明でしょうが、しばらく待っていて下さい。少しずつ、明かしていきます。

   蒼咲猫

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