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時鐘のアリア  作者: 蒼咲猫
終章
18/21

第二話 その後の物語 ~side クイド~

お待たせ致しました。






  ーーあの日、俺達は。

     (そら)へと昇る、ヒカリと蒼を見た。



  ーーside クイド





「ーーふむ。そなたらのような優秀な人材を、冒険者ごときにしておくのはもったいない。騎士団に入らぬか。」

「恐れ入りますが、私共(わたくしども)は冒険者の方が性に合っていますので。」

「ほぅ。ならば仕方ない。…下がれ。」

「かしこまりました。」







「なぁ。」

「ん?」

 カイルの不思議そうな声に、弓の手入れの手を止めた。

「あれで良かったのか?」

 ーーアリアちゃんの『お願い』だろ。

 両手剣(ファルシオン)の手入れをしながらのカイルの言葉は、隣で(パルチザン)の手入れをしている、ヴェンの声によって途切れた。

「…構わない。それに…俺達は、冒険者「ごとき」だ。」

 珍しく、ニヤリとした顔で告げられたヴェンの言葉に、俺達は破顔した。

「ヴェンの言う通りだ。何も「この国」に、こだわる必要はない。」

 嬢ちゃん(かのじょ)の『お願い』。

 それは、嬢ちゃん(かのじょ)から渡された本を、国王(さいこうけんりょくしゃ)に届けることだった。






『この本には、「(アッシュ)」や、他の一族(ロア)のことが書かれています。』

『で、それを俺達がお偉いさんに渡せば良いのか?』

『はい。……きっと、今の世界には、忘れ去られてしまっているでしょうから。』



『…お嬢、この文字は…?見たことのない文字だ…。』

『この文字は、一族(ロア)達の独自の文字ですから。読める人は、もう…。』

『じゃあ、どうすれば…。』

『ふふっ、大丈夫ですよ。ちゃんと、訳してある本もありますから。

なんなら、そちらを渡してくださっても構いませんよ?』

『『…………。』』

『それに…。この文字で書かれた本は特別なんです。』

『…特別?』

『はい。本自体に意志が存在しているので。』

『『………は?』』

『『(ミュージ)』の 一族(ロア)が、文字そのものに対して力を使いましたから。』

『………。ははは……。一族(ロア)って、そんなことまでできるんだな……。』

『…大丈夫か、クイド。』

『……ああ、ヴェンか。…多分な。』






「ーーさて、そろそろ時間だ。準備はできたか?」

「…ああ。」

「準備?なんのことだ?」

 カイルの言った一言に、宿の部屋の空気が凍った。

「………こんの、バカイル!今日は、依頼だと、昨日、あれほど…!」

 怒鳴った俺に、ヴェンは妙に疲れたように声を掛けた。

「…無駄だ、クイド。そもそも、こいつ(カイル)が聞いていると思うか?」

 その言葉を聞いて、ヴェンも苦労してるな(カイルのひがいしゃか)…と同情した俺は、悪くないはずだ。





  ーーそれはきっと、

     いつまでも続く、彼らの日常。







 ガラガラガラ……

 踏み(なら)された街道を、依頼者(しょうにん)達の所有する馬車が、音を立てて走る。


 今回の依頼は、商隊の護衛依頼。

 護衛依頼は、本来は「守護者(リューカイト)」の仕事(なわばり)だが、移動に丁度良かったので、俺達は商隊の護衛依頼を受けていた。


 ガラガラガラ……

「……なぁ。」

「ん?…どうした、カイル。」

「結局、どうするんだ?この本。」

「あぁ。

 ーーもう、2年になるのか。」

 あれ(アリアとのであい)から、既に2年の時が経っていた。


 相変わらず俺達は、嬢ちゃんに渡された、意志を持つ(あの)本を持ったまま、冒険者(クェールシア)を続けている。


「…俺達が持っておけばいい。」

「ヴェン…?」

 相変わらず無表情のままだったが、珍しく強く話すヴェンに、困惑の声が漏れた。

「…お嬢に渡された、(やくしたほうの)は全て渡し終えた。」

「「……。」」

「…なら、俺達が一冊位持っていても良いだろう?」

 ヴェンの言うように、俺達は2年の間に、嬢ちゃんに渡された分の本を、各国の国王(さいこうけんりょくしゃ)に渡し終えた。

 残ったのは、意志を持つ本、一冊だけだ。

「……。そう、だな。結局、この本を渡してもいいと思える国王(さいこうけんりょくしゃ)は居なかったからな。」

「俺達が、この本を渡してもいいと思える奴に出逢えたら、その時に渡せばいいしな!

まぁ、そう簡単に渡す気はないけどな!」

「ははっ。当たり前だろ?嬢ちゃんの『お願い』だ。生半可な奴に渡してたまるかっての。」

「…同意する。」

 ヴェンの言葉を聞きながら、この本を誰かに渡すのは、相当先の話になりそうだと、ひっそりと苦笑した。

「あ!そうだ、『帰らずの森』の新しい名前、考えたぞ!」

「へぇ、言ってみろよ。」

「おう!



 ーー『時守(ときもり)の森』って言うんだ!」





  ーーそして、

      物語は終わりを迎える。




 ありがとうございました。

次回からはクード爺さん達の視点に戻ります。


「時鐘のアリア」番外編、11月下旬辺りから更新しようと思っています。

 只今、読者の皆様の「こんな話読みたい!」という要望を募集中です。


 誤字脱字等はコメントなどで報せていただけると幸いです。

 それ以外での感想や批評も受け付けていますので、遠慮なくコメントしてください。


  ~次回予告~


「……セルディオ殿。」



「ありがたく、頂戴致します。『時森』殿。」


 長々と失礼しました!

     蒼咲猫

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