表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時鐘のアリア  作者: 蒼咲猫
終章
17/21

第一話 その後の物語 ~side アリア~

 完結まで、あと僅か。







  ーー目を覚ませば、そこは……



  ーーside アリア




 ふと、暖かい「何か」を感じた私は、目を開いた。





 そこは一面の花畑で、少し先の丘の上には、一本の大きな木が枝を伸ばしていた。



 ふわりと、花畑一帯に優しい風が吹き、色鮮やかな花びら達が、ヒラヒラと踊り出した。

 やがて、一際強い風が吹き、踊っていた花びら達は、空からのびる天使のはしごへと、螺旋を描いて吸い込まれていった。



 花畑から体を起こした私は、その、あまりにも幻想的な光景に、感嘆の声をあげた。




  ーー … 、



 時間を忘れて花びら達の踊りに夢中になっていた私は、微かに聞こえた風以外の音に、耳を澄ませた。



  ーー …ァ、


「ーーッ!?」


 微かに、けれどもはっきりと聞こえた、その声の主はーー

 脳裏に浮かんだ姿に、息を呑んだ。



  ーーアリア、


「っ、お父さん、お母さん…!みんな…!」


 はっきりと聞こえたその声の主は、もう逢うことができないと思っていた、『時の一族の国(アッシュロア)』のみんなで。

 丘の上の木の横に、みんなの姿を見つけた私は、考えるよりも先に、走り出していた。








 「アリア、よくやった。」

 「アリア、お帰りなさい。」

 「アリアちゃん、お疲れ様。」「ありがとうね。」「よく、頑張ったな。」「立派な『時守』になったなぁ。」


 駆け寄ってきた私に、『時の一族の国(アッシュロア)』のみんなが、私を取り囲んで、次々と声をかけてくる。

 そしてそのどれもが、私を労る暖かい言葉だった。



「お父さん、お母さん、みんな…。」


 輪の中心で、うつ向きながら小さく呟いた私は顔を上げて、暖かいみんなに笑顔を向けた。





  ーーずっと、言えなかった言葉があるのです。




「ーーただいま!」


 『お帰りなさい、アリア(ちゃん)。』


 その言葉に、その笑顔に。

 やっと、帰ってこれたのだと。

 暖かい『時の一族の国(アッシュロア)』のみんなと一緒に居られるのだと。

 そう感じた私はーー





  ーー今、初めて。

     (よろこ)びの涙が、零れたのです。



 『時守(ときもり)』として 『時鐘(ときかね)』を使っていた時には、ついぞ流れたことのなかった涙が、私の頬を濡らした。


 涙で滲む視界に、そんな私を暖かく迎えるみんなの姿があって。





  ーー私は、その日。

     本来の居場所に、帰ってきたのです。






  ーーゴーン ゴーン ゴーン



 ーー何処か遠くから、まるで祝福するかのように。

 私と共に、ヒカリになって溶けたはずの『時鐘(ときかね)』の音が、響いた気がした。




  ーーアリア、貴女に『(アッシュ)』のご加護がありますように。



 もう存分しない(どこにもいない)はずの、彼女(シスター)の声が、確かに。

 私の耳に、届いた(いつものように)





 ありがとうございました。



  ~次回予告~


 アリアのその後はヒカリの先に。


では、「彼ら」のその後は…?


「バカイル!それは毒キノコだ!」


 ………。相変わらずのようです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ