第一話 その後の物語 ~side アリア~
完結まで、あと僅か。
ーー目を覚ませば、そこは……
ーーside アリア
ふと、暖かい「何か」を感じた私は、目を開いた。
そこは一面の花畑で、少し先の丘の上には、一本の大きな木が枝を伸ばしていた。
ふわりと、花畑一帯に優しい風が吹き、色鮮やかな花びら達が、ヒラヒラと踊り出した。
やがて、一際強い風が吹き、踊っていた花びら達は、空からのびる天使のはしごへと、螺旋を描いて吸い込まれていった。
花畑から体を起こした私は、その、あまりにも幻想的な光景に、感嘆の声をあげた。
ーー … 、
時間を忘れて花びら達の踊りに夢中になっていた私は、微かに聞こえた風以外の音に、耳を澄ませた。
ーー …ァ、
「ーーッ!?」
微かに、けれどもはっきりと聞こえた、その声の主はーー
脳裏に浮かんだ姿に、息を呑んだ。
ーーアリア、
「っ、お父さん、お母さん…!みんな…!」
はっきりと聞こえたその声の主は、もう逢うことができないと思っていた、『時の一族の国』のみんなで。
丘の上の木の横に、みんなの姿を見つけた私は、考えるよりも先に、走り出していた。
「アリア、よくやった。」
「アリア、お帰りなさい。」
「アリアちゃん、お疲れ様。」「ありがとうね。」「よく、頑張ったな。」「立派な『時守』になったなぁ。」
駆け寄ってきた私に、『時の一族の国』のみんなが、私を取り囲んで、次々と声をかけてくる。
そしてそのどれもが、私を労る暖かい言葉だった。
「お父さん、お母さん、みんな…。」
輪の中心で、うつ向きながら小さく呟いた私は顔を上げて、暖かいみんなに笑顔を向けた。
ーーずっと、言えなかった言葉があるのです。
「ーーただいま!」
『お帰りなさい、アリア(ちゃん)。』
その言葉に、その笑顔に。
やっと、帰ってこれたのだと。
暖かい『時の一族の国』のみんなと一緒に居られるのだと。
そう感じた私はーー
ーー今、初めて。
歓びの涙が、零れたのです。
『時守』として 『時鐘』を使っていた時には、ついぞ流れたことのなかった涙が、私の頬を濡らした。
涙で滲む視界に、そんな私を暖かく迎えるみんなの姿があって。
ーー私は、その日。
本来の居場所に、帰ってきたのです。
ーーゴーン ゴーン ゴーン
ーー何処か遠くから、まるで祝福するかのように。
私と共に、ヒカリになって溶けたはずの『時鐘』の音が、響いた気がした。
ーーアリア、貴女に『時』のご加護がありますように。
もう存分しないはずの、彼女の声が、確かに。
私の耳に、届いた。
ありがとうございました。
~次回予告~
アリアのその後はヒカリの先に。
では、「彼ら」のその後は…?
「バカイル!それは毒キノコだ!」
………。相変わらずのようです。