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時鐘のアリア  作者: 蒼咲猫
第二章
15/21

第五話 『森の外の景色を』

 お待たせ致しました。





  ーー淡く、蒼い燐光が、時鐘から溢れ出す。

 一度零れ始めた蒼い燐光は、勢いを増してーー周囲を優しく覆った。




  ーーside アリア




「嬢ちゃん…。」

「…良いのか?」

「アリアちゃん、君は……っ。」

 彼らの、それぞれの反応に苦笑を返して。

 それでも、笑って頷いた。

「良いんです。それに、これはーー」

 ーー「あの時」から、決まっていたことですから。


 その先は、言わなくても伝わったようで。

「っ…。ーーそう、か。」

「はい。」

 一瞬だけ、哀しい顔をしたカイルさんはそれでも、私を引き留めたりはしなくて。

 その心遣いに、僅かにくすぐったい気持ちになった私は。


 もう、大丈夫だと。

 …そう、思った。


「クイド様、ヴェン様、カイル様。

 ……よろしく、『お願い』しますね。」

 この、『お願い』の為に、事情を知ってもらわなければならなかった彼ら(さんにん)に、ほんの僅かに感じた申し訳ない気持ち。

 けれどそれでも、止める訳にはいけなかったし、止める気もなかった。

 だから。

「!あ、ああ。」

「…了解、した。」

「っ!…わかった。」

 私の言葉に息を呑んだ後の、彼らの了承の言葉に。

「頼みます…。」

 ただ、それだけを口にした。






  「私は、『時守(ときもり)』だから。」


 ーーそう言って、誇らしげに笑った、彼女は。






「………。『時鐘(ときかね)』よ…!

 彼らに(どうか)、『森の外の景色を(そのちからをつかって)』。」


 時鐘から溢れ出した蒼い燐光は。

 僅かに微笑んで告げられた『時守』の言葉に従って。

 彼らを、包み込んだ。


 そして。

「ありがとう、ございました。

 ……あなた方に、『(アッシュ)』の加護がありますように。」

 私は、心を込めて、『(アッシュ)』の 一族(ロア)に伝わる礼をした。


 ーー瞬間。


 リィンリィン


 小さな鈴の音と共に、彼らの姿は掻き消えた(あとかたもなく)


 残された、私は。

 体をヒカリに変えながらも、僅かに蒼い燐光の残るその場所をしばらく眺めて。

「          。」

 声に出すこともなく、言葉を紡いだ。




  ーーそれはきっと。

        再会の約束。




 あの時、笑顔でいた『時の一族の国(アッシュロア)』のみんなの気持ちが、解った気がした。






  ーーside クイド



 俺達を優しく包み込んだ、蒼い燐光。

 その、あまりの眩しさに、目を瞑った。



 ふわり、と。

 体が浮く感覚がする。

 決して不快ではないその感覚に、身を委ねて。


「          。」


 蒼いヒカリの中で、彼女(じょうちゃん)の声を、聞いた気がした。





 ふと、空気が変わったのを感じた。

「…此処は、」

「どうなってるんだ…。」

「『帰らずの森』の前!?」

 目を開けると、そこは既にあの塔の上ではなかった。

 振り返ると、六日間を過ごした、深い森。

 あまりの現実味のない出来事の連続に、一瞬白昼夢を疑った。


 けれど。

 森に入った時にはなかった、右手にある確かな重みが。

 それに抗議するかのように、淡く輝いた。





 そして。

「なぁ、なんか『帰らずの森(そんななまえ)』ってしっくりこない」

 ふと、カイルの言ったその言葉に同意した俺達は。

 しばらくの間、森の呼び方について、頭を悩ませることになる。




 ーーあの時、確かに聴こえた声は。

  今なお俺達の脳裏に、鮮やかに残っている。


  『何時(いつ)か、時の流れの先で。』


 そう言って、時鐘と共にヒカリになって溶けていったのだろう彼女(アリア)の、満足気な笑顔と共に。



 ありがとうございました。

この話(第五話)で、第二章の内容は終わりです。

この後に登場人物紹介を挟みます。

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