第二話 『時鉱石』
お待たせしました!
「…『時の一族の国』?」
「そう。力持つ一族の、最期の地。」
「最期…?」
「ええ。……やがてーー」
ーー『時の一族の国』ができた時から、一族の人々はその力が見付からないように、慎重に隠して来ました。
また、この力が狙われることのないように。
そして子孫達が、狙われて隠れて暮らさなくてもいいように。
そうして、数十年の時が流れました。
その頃、『時の一族の国』のある深い森に、ある変化が起こっていました。
森の中から、蒼色の鉱石が見付かるようになったのです。
その鉱石は『時』の一族が集まって、長く一つの場所に住み続けたが故に出来たモノでした。
そのことに気付いた『時の一族の国』の人々は、その鉱石を「時鉱石」と呼ぶようになりました。
そして、『時』の一族の力によって加工された時鉱石は、一族の持つ力を少しだけ、誰もが使えるようになるという、驚くべき力を持っていました。
そして、その時鉱石の危険性もまた、『時の一族の国』の人々はよくわかっていました。
もし、この強すぎる力が悪用されてしまえば、他の一族達の犠牲は……。
『時の一族の国』の人々は、時鉱石が悪用されることを極端に恐れていました。
……故に、その悲劇は起こってしまったのです。
『時の一族の国』はその歴史の中で、一度だけ、他の国と戦争で争ったことがあります。
その国は、『時の一族の国』よりも遥かに強大な軍事力を有する、とても大きな帝国でした。
そんな、帝国との勝ち目の無い戦争の原因は、主に帝国が時鉱石を軍事力として欲した為でした。
時鉱石を軍事力として使わせる訳にはいかない『時の一族の国』の人々は、帝国に対して抵抗を続けました。
けれど。
そんな『時の一族の国』に、終わりの時は着々と近付いてきていました。
やがて、『時の一族の国』の人口が五分の一を切った時、『時の一族の国』に、ひとつの希望が生まれました。
一族のある青年が言った策が、ほぼ完成したのです。
それは、『時の一族の国』の人々にとって、まさに「希望」でした。
青年の策。その全ては、時鉱石の悪用を防ぐ為のものでした。
それは、『時の一族の国』の持つ時鉱石を、帝国が使えなくしようという、ただそれだけの目的を持った、その時の『時の一族の国』の精一杯の抵抗でした。
やがて、『時の一族の国』にある「時鉱石」を全て使って造られたのは、ひとつの大きな鐘と、高い石造りの塔でした。
……そして、『時の一族の国』の人々は、ひとりの少女に、その希望を託しました。
ーーその少女の名は、『奇跡』。
ありがとうございました。
ギ、ギリギリ間に合った、かな…?
~次回予告~
ーー『アリア、よろしくね。』
ーー『俺は、幸せだ。』
ーー『時の御加護がありますように。』
ーー『私には、まだ解らないの。』