『転生テンプレチートハーレム』から始まる童話
タイトル・キーワードにはなっていますが、『転生・チート・ハーレム』の要素は非常に少ないです。
テンプレかもしれませんが……。
あくまで童話です。
昔々の事でした。
ある所に、一人の勇者がいました。
その勇者は生まれた時右手を天に掲げ、左手で地面を指さして、こう言ったのです。
『転生テンプレチートハーレム』と。
え、お嬢様? ここは『天上天下唯我独尊』では無いですかだって?
……お嬢様は賢いですね、しかし実際こういう話だったのですよ。
その勇者は、『転生テンプレチートハーレム』にちなんだ名前を付けられました。
『トリニティ・ティストリア・トリプトン・ハイエリア』と。
母親の意向も無視して勝手にめちゃくちゃな名前を付けられてしまった勇者でしたが、彼は実際強く、何人かの女性とともに旅に出ました。
炎の魔女『フィオ・ファイア』
水の弓使い『セレネ・ブルーシィ』
光の僧侶『ブライト・リフェクシオン』
とともにね。
しかし彼はそれ以上のハーレムを作ることは出来ませんでした。
そのきっかけを、お話ししましょう。
勇者が小さな村に行った時の話です。
その村はまだ魔物の影響を受けていず、とても平和でした。
その村の巫女『リコリス』に、勇者は恋をしたのです。
村娘……質素と言うわけですね、と同じような姿をしているのに彼女はとても美しかったからです。
「村へようこそ、勇者様。」
少女は澄んだ声で語ります。
普段、三人の女性に囲まれて女慣れはしているはずなのに、勇者は何も話すことが出来ず、ただ彼女に付いていきました。
もちろん女性たちと一緒にね。
何も話せなくなってしまった勇者の代わりに、女性たちが彼女に話しかけました。
この村の事や、村の外の事、そして勇者が今までしてきたことを。
彼女は言いました。
「私、貴方達に憧れているんです。
いくつもの難題を解決できて、凄いなぁって。
私にはこの村一つを浄化するだけで精いっぱいだから。
能力のせいで、外の世界に出たら死んでしまうんです。
力を得た代わりに、一切外に出られなくなった籠の中の鳥――それが私なんです。」
勇者は言いました、ようやく口を開きました。
「ありがとう、私も君が好きだ。
君に外に出てほしいと思っている。
そのためには、何をすればいいんだ? 」
女性たちは呆れました、彼の気持ちに気が付いたから。
彼はとても惚れっぽいのです。
彼女たちが仲間に選ばれたときも、勇者は『パワーバランスなんて関係ないし、女性を一人なんて選べない。』と言って、女性ばかりを三人選びました。
当然彼が所属していた団体の男たちは怒りましたが、彼の能力は認めていたので諦めました。
彼が選んだ女性たちは美しさは人一番の者たちでしたが強さは普通だったということもありましたが、やはり信頼されていたのでしょう。そう思ってくださいね、お嬢様?
そうでないと勇者の友人関係がひどいものだとみなされてしまうのでね。
おっと、話が脱線しました。
巫女は瞳に涙を浮かべました。
「ごめんなさい、それは無理なのです。
丁重にお断りさせていただきます。
私は前世からの契約で、ずっとこの村で巫女として過ごさなければならないのです。
勇者様、異世界から転生してきた様子が見える貴方とは違って私はここに縛り付けられる運命なのですよ……。」
勇者も涙を浮かべました。
それは勇者の初めての挫折でした。
そうして彼女は願いました。
「勇者様、私がいなくても貴方はやっていけるはずです。
光に炎に水、バランスは十分取れているのです。
だから、今ある出会いを大切に――。」
そうして泣き崩れてしまったのでした。
それから勇者はもう二度とそれ以上のハーレムを作ろうとは思わなくなりました。
今回の話は、ここでおしまい。
おやすみなさい、お嬢様。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
村や勇者たちの設定を使いたいという方がもしもいらっしゃったら、ご自由に使ってください。
読んでみたいです!!