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言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜  作者: 水凪しおん


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第12話「認められた居場所」

 皇帝の私室から続く長い回廊を、レオニダスの隣に並んで歩いている。

 火傷の傷は彼の献身的な治療によってほとんど癒え、今では痛みを感じることなく自らの足で歩くことができる。

 身にまとっているのは、以前のようなただの豪華な布切れではなく、皇帝の伴侶であることを示す、深い藍色に銀の刺繍が施された正式な礼服だ。

 生地の重みと、肌に触れる滑らかな感触が、自分が今、この世界で確かな立場を得ていることを静かに実感させる。

 レオニダスはこちらの歩幅に合わせてゆっくりと歩を進め、時折心配そうに横顔を覗き込んでくる。

 彼の大きな右手がこちらの左手をしっかりと握りしめており、その温かな体温が指先から全身へと伝わっていく。

 魔力の暴走によって崩壊した大広間は現在も修復作業が続いているため、今日の儀式は城の東翼にある別の謁見の間で行われることになっている。

 高い天井まで続く巨大な扉の前に到着すると、そこにはすでに数十人の近衛兵が整列し、槍を真っ直ぐに立てて待機していた。

 彼らはレオニダスの姿を認めると、一糸乱れぬ動きで武器を胸に当て、深い敬礼を捧げる。

 かつて、離宮への道すがらで蔑みの視線を投げかけてきた兵士たちの態度とは、完全に打って変わっている。

 彼らの瞳の奥にあるのは、恐怖ではなく、純粋な畏敬の念だ。

 重厚な扉が、重い金属音を響かせながらゆっくりと左右に開かれた。

 謁見の間の中には、きらびやかな礼服に身を包んだ帝国の貴族たちが、身動き一つせずに整列している。

 かつて、魔力すら持たない人間のオメガが皇帝の傍らにいることを許さず、陰で嘲笑し、敵意を剥き出しにしていた者たちだ。

 しかし今、彼らの顔に浮かんでいるのは明確な緊張と、圧倒的な力に対する平伏の色だ。

 レオニダスに手を引かれ、赤い絨毯が敷かれた中央の通路を静かに進んでいく。

 靴音が大理石の床に響くたびに、両脇に並ぶ貴族たちが次々と床に膝をつき、深く頭を垂れていく。

 絹の衣服がこすれ合う柔らかな音が、波のように部屋全体に広がっていく。

 誰一人として顔を上げる者はなく、ただ静寂の中で皇帝とその伴侶の通り過ぎるのを待っている。

 彼らはあの日、城を揺るがすほどの竜の暴走を目の当たりにした。

 そして、その絶望的な災厄を、ただ一人の人間の青年がその身を呈して鎮めたという事実を、骨の髄まで理解させられたのだ。

 帝国の生命線である皇帝を救い、国を滅亡の危機から救い出した存在を、もはや誰も軽視することはできない。

 謁見の間の最奥、一段高くなった壇の上に置かれた二つの玉座の前で、レオニダスが足を止める。

 彼は振り返り、床にひれ伏す貴族たちを一瞥した。

 その眼差しは、暴走の危険を抱えていた頃の冷たく張り詰めたものではなく、真の王者としての揺るぎない威厳と、満ち足りた静けさを湛えている。


 「面を上げよ」


 低くよく通る声が、広大な部屋の隅々にまで響き渡る。

 貴族たちが一斉に顔を上げ、壇上の二人を見上げる。

 レオニダスはこちらの手をさらに強く握りしめ、すべての者に見せつけるようにしてその手を高く掲げた。


 「ここに立つアオイは、我が魂を繋ぎ止めた真の番である」


 彼の言葉には、いかなる反論も許さない絶対の意志が込められている。


 「彼の血の底にある静寂こそが、我が内なる竜を鎮め、この国に永遠の平穏をもたらす礎となる。彼を敬うことは、私を敬うことと同義であると心得よ」


 その宣言が響き終わると同時に、最前列にいた年配の貴族が深く頭を下げ、それに続くようにしてすべての貴族が再び深くひれ伏した。

 広間を満たすのは、恐怖による服従ではなく、心からの感謝と忠誠の誓いだ。

 かつて彼らから向けられていた氷のような悪意は完全に消え去り、そこにあるのは敬意という名の温かい波長だけだ。

 もう、誰にも軽蔑されることはない。

 誰にも突き放されることはない。

 孤独な離宮で膝を抱えていた日々が、遠い過去の幻のように思えてくる。

 レオニダスが掲げていた手をゆっくりと下ろし、その手を自分の胸元へと引き寄せる。

 彼の黄金色の瞳が、慈愛に満ちた光をたたえてこちらを見つめ下ろしている。

 その瞳の奥には、種族の違いという壁を完全に打ち砕いた、揺るぎない絆だけが存在している。

 彼の温かい手の中に自分の居場所があることを、体の隅々の細胞が深く理解し、歓喜に震えているのを感じる。

 差し込む陽光が、ステンドグラスを通して色とりどりの光の帯を作り出し、祝福するように二人を包み込んでいた。

 自分が召喚されたこの世界は、もはや見知らぬ恐ろしい場所ではない。

 彼と共に生きる、愛するべき大切な世界へと完全に姿を変えていた。

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