もし、あのとき違う未来を選べたなら(エリアスside)
初めて出会ったとき、彼女に見覚えがある気がした。
どこかで会ったはずだと、記憶の引き出しを何度も探るけれど、何も出てこない。
けれど胸の奥に、かすかなざわめきが残った。
目が合った瞬間、彼女もまた、わずかに目を見開いたのを覚えている。
気のせいだったのかもしれない。
けれど、あの瞬間の胸の高鳴りは、確かに本物だった。
あれは一目惚れだったのかもしれない――今になって、ようやくそう思える。
それなのに、彼女は高飛車で、自信に満ちあふれていて……
媚びるような笑みを浮かべ、甘い言葉で距離を詰めてきた彼女を、俺は拒絶した。
思っていた人物と違ったことに、激しく失望した。
期待していたのだ。根拠もないくせに、どこかで彼女が“何か”を持っていると。
期待していた分、余計に冷たく当たってしまった。
今思えば、それは高位貴族としては当たり前の振る舞いだったのかもしれない。
けれど、俺は過剰に反応した。
無意識のうちに、彼女の中にアリアの痕跡を探していたのかもしれない。
思い出せていないはずなのに、心のどこかがそれを欲していた。
おそらく、それが──
俺と彼女の、分岐だったのだろう。
……もし、あのとき彼女に冷たくせず、ちゃんと対話をしていたなら。
もっと早く彼女の“真実”に気づけていれば――
俺たちは、もっと別の未来を選べていたのだろうか。
それを今になって悔やんでも、時間は戻らない。
彼女はもう、俺のもとから遠く離れて、別の男の隣に立っている。
優しく、穏やかに笑うあの姿を見たとき、
「彼女は本当に変わったんだ」と思った。
……いや、違う。
あれが、きっと“最初から”の彼女だったのだ。
気づかなかったのは、俺のほうだった。
エリアス視点の番外編でした。
あと…エリアスのスピンオフとか需要ありますかね??
その他に、時間はかかるかもしれませんが、レティシアとリオンのその後や本編での別視点でのストーリーなど今後投稿予定です。
その時はどうぞよろしくお願いします!
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タイトル「記憶喪失の悪女は、夫の愛の檻に囚われる
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