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【本編完結済】前世を思い出したら恋心が冷めたのに、初恋相手が執着してくる 〜そして、本当の恋を知る〜  作者: ゆにみ
第3章

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28/50

27、運命が動く夜

新章開幕!

 風は初夏の香りを運び、夜空には無数の星々が瞬いていた。

 

 祝福の灯りが咲く王宮の広間ではリオンとレティシアの婚約パーティーが行われようとしていた。

 婚約を祝う人々の笑顔の中、レティシアはリオン様の隣に立ち、確かな光を胸に抱く。


 けれどその背後では、鋭い視線がひとつ、夜闇の底からレティシアを射抜いていた。



 その視線は、諦めきれぬ執念を胸に秘めながら、やがてすべてを覆い尽くす運命の檻となる。

 __これは、前世の想いを抱えながらも、今を生きる決意をしたレティシアの物語が、新たな物語の扉を開く夜。




 ***


 会場の華やかな光の中、レティシアは淡いシルバーのドレスを身に纏い、ドレスの裾や胸元にはリオンの碧眼を思わせる深い青の装飾が施されている。その光沢は、まるで月の光を纏うように神秘的に輝き、優雅な佇まいを引き立てていた。


 リオンもまた、レティシアに合わせるように、同じ淡いシルバーの正装を纏う。襟元や袖口には、レティシアの瞳の色に似た紫の細やかな装飾が施されており、まるで二人だけの秘密の印のように美しく煌めいている。


 周囲の貴族たちは、その調和の取れた二人の姿に一瞬息を呑み、そして小さな囁き声が次第にざわめきとなって広がっていく。



 「見て、まるでおとぎ話のようだわ…」


 「ねえ、前回のアゼル王子の誕生日パーティー、覚えてる?レティシア様がリオン殿下に乗り換えたって噂があったけど…」


「うん、あの時は確かにエリアス様に熱心だったのに、最近じゃリオン殿下が一生懸命口説いているらしいわね」


「こうして改めて見ると、やっぱりお似合いのカップルだわ」


 小さな笑い声が重なり、宴の華やぎとは裏腹に、その言葉には微妙な嫉妬や疑念も混ざっている。


 優雅な雰囲気の中、レティシアとリオンは国王夫妻の前に進み出る。


 国王は穏やかな笑みを浮かべ、厳かに告げた。


 「レティシア嬢、我が子リオンを支えてくれることを嬉しく思う。共に力を尽くしてくれ」


 その隣で王妃も微笑み、静かに頷く。


 「あなたなら、きっとリオンを導いてくれるでしょう。どうか、その優しさで寄り添ってあげてくださいね」


 レティシアは胸に小さく手を当てて、深く頭を下げた。


 「ありがとうございます。心を尽くして、お支えいたします」


 短いながらも王家としての威厳と温かさをにじませた挨拶を交わし、ふたりはその場を辞した。




 そんな中、背後から静かな足音が響く。

 振り返ると、第一王子アゼルが堂々とした姿で立っていた。

 

 「改めて祝福を贈ろう、レティシア。今日、君がこうしてリオンの隣に立つ姿を見て、確信したよ」


 レティシアは一瞬戸惑いながらも、真っ直ぐに頭を下げる。

 

 「ありがとうございます。至らない点も多いかと思いますが、できる限りリオン様をお支えします」


 アゼルは視線を少し柔らげ、微かに笑みを浮かべる。


 「リオンは真面目すぎるところがあるからな。君なら、その隣でしっかりと支えられるだろう」


 その言葉には、兄としての優しさと信頼が感じられた。


 レティシアはその想いをしっかりと受け止め、深く頭を下げる。


 「はい。必ず......その責を果たします」


 アゼルは満足げに一度頷き、少しだけ目元を緩める。


 「そうか。……それを聞いて安心したよ。さあ、今夜は存分に楽しむといい」




 優雅な音楽が流れ始め、招待客たちはダンスフロアへと誘われていく。

 レティシアはアゼルの言葉の重みを胸に刻み、そっと背筋を伸ばした。


 リオンが穏やかにレティシアの手を取り、声をかける。


 「こうして君の隣に立つことを許されて、本当に嬉しくて仕方ないんだ。」


 リオンは柔らかな微笑みを浮かべながら告げる。


 その真っ直ぐな想いに、レティシアは自然と頬を染め、微笑み返した。


 「私も嬉しいです、リオン様」


 二人の視線が重なると、まるで世界が二人きりになったかのように静かに時が流れた。


 音楽に合わせて軽やかにステップを踏むリオンの腕の中で、レティシアの心は優しく満たされていく。


 その柔らかなぬくもりに包まれながら、レティシアは静かに確信する。


 「これが、私が選んだ未来なのだ」と____。




 ***



 静かな廊下の片隅、エリアスは一歩も動かずにその場に立っていた。

 婚約パーティーの華やかな喧騒が遠くに響く中、彼の視線は一瞬たりともレティシアから離れなかった。


 リオンと寄り添い、優しく微笑み交わす彼女の姿。

 その手を取るリオンの仕草に、胸の奥で何かがざわめいた。


 ____許せない。


 前世で共に過ごした日々の記憶が鮮明に蘇り、熱く締め付けられる心臓を抑えることはできなかった。

 あの頃の彼女は、確かに彼のものだった。だが今は違う。彼女はもう、彼の掌からこぼれ落ちてしまった。


 だが、瞳の奥にはまだ消えぬ嫉妬の炎が揺らめいている。


 「このまま、彼女を___渡してたまるか」


 そう呟く声は冷たく、しかしどこか諦めきれぬ決意を含んでいた。


 新たな夜の始まりの中、運命の歯車は静かに、だが確実に回り始めている。


 ___終わりではない。むしろ、これからが本当の戦いだ。



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