船着き場の管理者
さあ、舟にのろうとした八助は立て札を始めは信じまいとするのですが、いつのまにか騙されてしまいました。もちろん、騙す方が悪いし自分を責める必要もないと思います だけど、自分自身がこれで良いのかと反芻することは 必要
ではないでしょうか。
やっと 広い視野が広がり 其処には思いがけない大きな川があった。人っ子ひとりいない川のそばに
立て札があった
注意の事
川は危険ですので、ここに書かれたことには、
良く耳を傾けてください。
でないと 時間がかかることがあります 略
この船着き場は 近々大修理をしなければならず
その為申し訳ありませんが、お一人様あて五両の
寄付金、もしくは一年間の船着き場の管理者を
して頂かなくてはなりません。
ただ、次の代わりの者が見つかれば、その時まで
の事とします。其れは船着き場の管理者の交代
を意味します。交代の者は見つけにくいでしょう
が、もし誰かが「こんなはずじゃなかったのに」
と言ったら、それは交代のためのキーワードとな
り、つまり其のように言った人がつぎの労役者、
船着き場の管理者となり、一年間の仕事をして、
頂きたいのです。運が良ければすぐに交代者は
見つかり安全に向う岸に渡れますが、そうでない
場合もあります。時間がかかる時は、どうか御容
赦ください。
責任者 ▲▲▲
何て馬鹿げた文の立て札なんだろう‼️‼️
五両だなんて‼️‼️
そんな大金払えるか‼️‼️
馬鹿にしてるな‼️‼️
八助はかっかっと腹が立ってきたので、思わず
「こんなはずじゃなかったのに!」と言ってしま
いました。 アッと気が付いたが、周りには、
誰一人いなかったので、平然と、舟が着たら乗っ
てやるさ! そして黙って向う岸までいけば、俺
様の勝ちだ、フン!と鼻で笑っていました。
そして時間が過ぎていきましたが、舟着き場には
舟がくる様子がなくて、渋々あきらめると、周り
に散らかるゴミを集めたり、長椅子を拭いてみた
り、待合室の雨漏りを直したりと、気がつく事を
していましたが いつかそれもなくなり、舟着き
場に足止めされることになりました。
八助は首を長くして川を眺め、溜め息をつきなが
ら早く舟がこないかと思っていました。
ある時 向こうの方から 大勢の人をのせた舟が、
やってくるのが見えた時は 嬉しくて飛び上がり
ました。そして舟着き場にいくと、なんというこ
か 其処にはいつの間にきたのか、ズラーと人達が
並んでいて、10人以上のお年寄りやご婦人、子供
達まで、、、
八助もあわててならびましたが、もう少しの所で
「すみません お客さんは次の舟に乗ってくださ
い。波も結構高いので事故にあってもなんですか
ら」と断られてしまいました。「そこをなんとか」
と頼みましたが、舟はあっという間に遠くへい
ってしまいました。
良し、今度来た時には失敗しないように、ちゃん
と用意しておこう。そう決心した八助は 管理人
の仕事、、と言っても、道を尋ねる人に教えたり
するだけだったんですが、、そんな仕事をする内
に いつしか有名人になりました。あの舟着き場
の管理人さんは、気の毒にいつもひとりだね。
雨の日も風の日も管理事務所にいるから、食べ物
はどうしてるんだっぺ? 何て、、、ある人は、
さあさあ 管理人さんよ これ一つだけどおあが
り。とおにぎりや、かきや、おもちを置いていっ
てくれました。栗やざくろもありました。
そして、また舟がきたようです。
今度こそ、俺も乗るぞと、早くから並んでいまし
た。所があんまり長い時間じっとしていたせいか、
尿意を催し我慢できなくなったので、えーい!
大丈夫さ、すぐに行って帰ってくれば問題ないっ!
そして戻って来た八助は、唖然としました。
舟が遠くへ行こうとしていたから、、、、
「オーイ、引き返してくれー」「お客さーん、また
次の舟にしてくださーい」
船頭の声は、まるで鐘のように八助の頭の中に
響きわたりました。
八助はいつしか、髭や髪の毛ものびて、地べたに
へたりこみました。そうしてまた何日か経った
ある日のことです。「おじさん、なにしてるの?」
「舟をまってるんだよ、ずぅと待ってるんだが、
なかなか来なくてもう悲しくなってきたんだ。」
すると、子供が言いました。「でも、この場所で
待ってても舟はこないよ、だって舟着き場
は向こうの丘のところにあったから、ほらみ
えるでしょう?赤い小さな旗がかぜにゆれてる
のが。」八助は自分でそれを見つけると、子供に
ありがとうというや、空腹や疲れも忘れて丘にか
けつけました。其処には、立派な待合室があり中
には、数人の人達がいて、たばこを吸ってる人や
大きな荷物を横に置く人も、、、
八助は、えー!俺がみたのはなにだったんだろう
ッと、またもとの所にきてみると、壊れかけた
小屋の近くに汚れた立て札があり、読んでみると
ご注意の程
この近くには、悪質なたぬきやきつねがいて、
人々にいたずらすることがありますので、気を
つけてください。舟着き場は丘のむこうです。
念のため
責任者 ⅩⅩⅩ
「なんてこった、こんな 、、。 」と言った八助
は思わず言葉をのみこみました。
広い草原には、風がそよそよと吹いて、空の上
にはお日様が少し落ちかけていました。
全部を信じたり、また疑って生きるのはしんどいですよね。いつか、みんなが信じて生きて行けるような世界を夢見ましょう!