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マリーゴールド  作者: かかと
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第7話

 バスでも調子は悪くなかった。リュックを下ろしてベッドへ横になる。ため息を吐きながらそのまま目を瞑る。疲れたな。何がっていうわけではないけど、疲労困憊。明日は診察があるから外に出なければいけないけど、それでも今日はもういいよな。はあ、疲れた。スピーカーの電源を点ける。iPhoneにつながった音が聞こえる。プレイリストのシャッフル再生を行う。そのまま少し横になった状態で目を瞑った。


 気が付くと外が少し陰っている。四時か。あっという間に時間が経っていく。疲れているから休まないといけないのだけど、それでもやはり何か動いていないと駄目な気がしている。無造作に置いている漫画を開く。少し読んで机の上に戻す。上から大きな音が聞こえる。何か物を落としたのだろう。なんだろうか、集中力がなくなってきている。漫画の続きも読む気がない。…、テレビでもつけようか。そのままテレビを見ているが、普段なら笑うことができるはずのところで笑うことができない。水をやかんに入れて湯を沸かす。ウーロン茶のパックを開き、パックを入れる準備する。ぐつぐつとやかんから水が温められている音が聞こえる。その中になぜか火に吸い込まれるような錯覚に襲われる。慌ててパックをやかんに入れる。少ししてウーロン茶の匂いがキッチンに充満する。ガスを切って少し蒸らす。


 その間に洗濯物を仕掛ける。今から洗えば七時くらいには乾燥までし終わる。ドラム式の洗濯機は高かったけど買ってよかった。乾かすのが部屋干しなので、乾燥機で乾かせば部屋干しの匂いを防ぐことができるから良かったと思う。なんでもかんでも一緒に入れる。唯一、上着やズボンなどは乾燥機に使うことができるか確認する。出来なければそのまま部屋干しにする。数枚だから湿気が多くなることもないだろう。まずは洗いから。セットし終えたら、ポットを準備してやかんからウーロン茶を注ぐ。


 そういえば今日が講義の予約を取る日だった。すぐにパソコンを開く。iPhoneで予約をとろうとしていたのだっけ。でも、画面がすごく小さいからな。見にくいだろう。すぐにパソコンを開いて検索をかける。ログインして画面をすぐに開くことができた。先着順じゃなくてよかった。四割ほどしかとることができる単位はない。それ以外は取らなくてはいけない講義なので強制的に取られている。いくつかの講義を選択する中で心理学という講義があった。あまりそういったものに興味なかったけど取ってみる。全て取り終わりパソコンを閉じた。


 すでに時間は五時になっている。寒さが体に堪えるからかなんか空洞になった感覚がある。…そろそろご飯の準備をしないと。明日の診察は九時からだから早く起きないと。冷蔵庫を開けると何もなかった。そうだよな。体調が悪かったし、外に出るのも億劫だった。財布を持って外に出る。


 少し肌寒いな。パーカーでも着てくればよかった。周りを見ながら歩いていく。桜の木が花を咲かせようとしている。もうそんな時期か。一年が経つのが早い。桜をiPhoneで写真を撮る。綺麗に映っているな…。しかし、どうして写真を撮ったのだろうか。別に写真に興味があるわけではないのだけど。病気してから何か変わったのだろうか。


 スーパーに着いて食材を見る。あんまりほしい物がないな。どの肉を見ても何も思わない。寿司を見た時には少し食べたいと思ったが、冷たいものは今食べないほうがいいと思った。この精神状態で食べたら心まで凍ると。幻想だろうと思うけど、そんな気がしていた。結局、肉を掴んでいる。また、焼いて食べようか。味が付いている肉を選ぶ。焼くだけで考えなくていい。玉ねぎとピーマン、レタスを買う。…、レジには多くの人が並んでいる。面倒くさいなと思う。仕方なく人の列に並ぶ。


 スーパーから帰るとすぐに手を洗って料理する。ベッドへ横になったら二度と起きないほどに疲れている。本当にどうしてだろうな。こんなに疲れるなんて。疲れを無視しながらフライパンを出す。油を引いてそのまま肉を投入する。熱してから入れると油が弾けるから温まる前胃に入れる。パチパチと肉が焼ける音が聞こえる。しかし、肉の良い匂いがしているはずなのにそこまでほしいとは思わない。少し火を弱める。野菜を取り出し切っていく。お腹がもたれるためご飯は食べない。


 肉が焼けてお皿に盛りつける。そのまま野菜を投入する。肉の味が野菜に浸透し少し美味しくなる。食べないと元気が出ないから無理しない程度に頑張る。食べてみると肉の味がほんのりする。やはりお腹が減っていないと食べ物の味はあまりしない。…しんどいな。もう少し濃い味の方が良かっただろうか。でも、あまり濃い味にしてしまうとますます味がしなくなるような気がする。


 何とかご飯を食べ終えてテレビを消す。食器を洗うと音が聞こえなくなるのでテレビは消すようにしている。iPhoneを起動し、そのままラジオを点ける。…正直、ラジオも聞くような体力も残っていない。しかし、何か聞いていないと疲れて頭がおかしくなりそう。スピーカーをキッチンまで持ってきて、音声を流していく。パーソナリティーの明るい声が聞こえる。


 いろんな曲が流れていく中で音声がごちゃごちゃに聞こえてくる。どうしてもキッチンで洗っているので別の音に聞こえてしまう。まあ、それでも気がまぎれるから良いのだけど。全ての皿を洗い終わり、手を綺麗に洗う。そのまま洗濯物を取り出す。タオルや靴下などの乾燥機でよい物をそのまま乾燥機をかける。その後で乾燥機にかけることができないものをハンガーにかけて部屋に干す。少し部屋が狭くなるけど仕方ない。部屋干し臭が気になるけどこれも仕方ない。


 少しベッドへ横になる。体がベッドにめり込むような感じがする。重いな、体が。起き上がるのも面倒くさくなる。病院に行っているから、風呂に入らないといけないな。体を無理やり起こす。立ち上がると足が地面に引っ付くような感触が。歩いていくと首が下に向いてしまう。何とか服を脱いで風呂に入る。下のタイルで滑ることがないようにゆっくりと歩いていく。シャワーの蛇口を体に向けずに少し流す。冷たい水を流す。温まったところで自分の体に当てる。湯が当たって徐々に体がほぐれていく。明日からは湯船に入ろうか。


 風呂から上がりパジャマを着る。少し汗ばむけど体が冷えては良くない。…肩を揉む。肩こりがひどい。ストレッチを行う。なんかほぐれた気がしない。iPhoneを触り、動画を見る。Youtubeでいろいろなストレッチを見ているがふと思うものがない。


 サイトを閉じてテレビを…、あ、スピーカーを忘れていた。iPhoneの接続ができていない。長く置きすぎて切れている。充電器の上にスピーカーを置く。ふーん、なんか疲れたな。テレビがうるさい。すぐにテレビを切る。音楽を流しながらゆっくりとストレッチをする。…、俺は何をしているのだろうか。健康のためとはいえ、ずっとこんなことをしているわけにもいかない。むしろ、何かしないといけないと思っている。そのこと自体が疲れているのかもしれないが、性分だから。と自分を納得させていることもいけないことなんだろうな。


 結局、ストレッチを二十分ほど行った。汗が少し額に浮いているけど体は少しすっきりした。深呼吸をしながら窓を開ける。新鮮な空気が入ってくる。空気が綺麗で心が洗われるようだ。時計を見ると七時。寝るにはまだ早いけど少し眠い。iPhoneでLINEを開きメッセージを見るが何も入っていない。今までも入っていなかったし、気にすることもないのだけど、友達からLINEが入っているのは少しいいなと思う。でも、そこまでの関係性を求めていないのも確かだ。


 テレビを見ながら少しまどろんでいるとメッセージが入った。見てみると碓井からのLINEだった。そうだった、忘れていた。終わったら連絡をくれと言っていた。「大丈夫か?」と書かれたLINEに「大丈夫」と返した。何もなかったし、診察でも問題なくCTでも何も映っていなかったと報告した。テレビを見てみると少しすると返事が返ってきた。良かったと。そして講義の予約は忘れていないか。今回は忘れていなかった。そのことを返信すると安心したと連絡が来た。これで良し。


 十時になった。そろそろ寝てもいい頃か。テレビを横になっている体を起こした。明日の準備をする。財布だけでいいか。服に関しては明日の温度の感じを見て決めよう。ベッドを整えて横になる。あ、漫画を読むの忘れた。明日でいいか。


 眠たいのに寝ることができない。何かが頭の中を通っていく。今日の医者の顔と表情、そしてCTの画像が頭に浮かぶ。本当に大丈夫だったのか、本当に病気ではないのか。病気になっているのではないかと妙な不安がある。背中が少しズキリと痛む。そして、足が少し痒くなる。…、ヒルの影響かな。なんでもかんでも気になってしまうのは良くないこと。それに助けられたこともある。しかし、こんなに嫌なことばかり覚えていてもいいことはない。もう少し何とかならないのかと思うけど難しい。


 深呼吸する。呼吸に意識を向けることで何も考えなくなることがあるというのを見たことがある。呼吸に意識を向けて目を瞑る。暗闇の中で一人倒れているような感じがして不安になる。もう一度深呼吸する。意識がまた暗闇に戻る。ふと、今日、一日を振り返る。何もなかったし、悪い病気がなくてよかった。ただ、調子の悪さは治っていない。現在の医学で発見できない病気なのか、それとも自分自身の問題なのか。いや、病気はそもそも自分自身の問題がほとんどか。感染症以外に関しては人から人へ移る病気は非常に少ない。移る病気は性感染症くらいか。他の病気に関しては自分の中で始まり自分の中で終わる。自己完結型の問題である。ならば…、もう一度深呼吸する。暗闇に戻る。講義はちゃんと取れているだろうか。


 そんなことを考えていたら寝ることができなくなる。電気を点けて水を飲む。…水が体の中にしみわたっていく。体は何も欲していないはずなのに水を飲むと少し潤ったような気がする。やはり体は万全ではない。本来なら体が欲しているはずだ。そのことも分からないほどに疲れているのだろう。ベッドに入って横になる。時計を見るとすでに十一時になっている。眠ることができなくて一時間ほどが経過した。この間に音楽でも聴くことができた。そういった問題でもないか。


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