10.プチ旅行
今日も頑張って仕事をしていると、あっという間に時間は過ぎて昼休憩だ。
会社の近くにある定食屋で昼食を取りながら美玲と話している。
「今度の土日、泊りでプチ旅行でも行こうか」
美玲の提案に当然俺は賛成をする。
「二人で旅行かー、いいね」
「一維も来るよ。一維は亮の事を見極めるとか言って鼻息が荒いんだ」
「一維君も来るのか……」
「朱莉ちゃんもだよ。聞いてないの?」
「え、そうなの? 知らなかった」
「あの子、表面上は一維に言い寄っているけど本当は亮の事が……。ううん、何でもない」
美玲は言いかけて、最後まで言うのをやめた。……やっぱり鋭いよな。朱莉はロボットだから恋愛感情はないけど、俺の手助けをしてくれているから、それを感じ取っているのだろうか?
それにしても、泊まるとすると部屋はどうするんだ? 俺と美玲は同じ部屋だろうけど、一維君と朱莉は一人部屋か? それとも四人部屋にするか?
「四人で行くとなると部屋はどうするの?」
「一人部屋を四つ」
「何が悲しくて彼女と旅行に行くのに別の部屋に泊まらないといけないんだ……」
「たった一泊するだけだから我慢しよ。夜にこっそり私の部屋においでよ」
「それもそうだね」
というわけで、週末は四人で一泊のプチ旅行に行くことになった。
* * *
――週末。
俺の車で出かける事になっているので一人ずつ拾っていく。コンパクトカーなので大人4人が乗ると少し窮屈だが、近場への一泊旅行という事もあり荷物も少なく何とかなるだろう。
運転席に俺、助手席は美玲、後部座席は一維君と朱莉が座っている。
高速道路を走っているが、車内は意外と和やかな雰囲気だ。一維君は俺の事を見極めると言っていたらしいので身構えてはいたが、一維君も美玲の前では悪態をつくわけないし、朱莉がうまく立ち回っているように感じた。
途中、トイレ休憩でサービスエリアに寄ることになった。どうしても男性陣と女性陣は別行動になってしまうので、ここぞとばかりに一維君がよってきて、さわやかな微笑みの中に敵意を混ぜて俺に声を掛ける。
「亮さん、姉さんに近づくなって言いましたよね?」
「一維君こそ朱莉と楽しそうにしているなら、美玲を俺にくれてもいいんじゃない?」
「「……」」
微笑みながらお互いに一歩も引かないと牽制していると、美玲と朱莉が近寄ってきて声を掛ける。
「何男同士で見つめ合って笑ってるのよ?」
「ね、姉さん、何でもないよ」
美玲に言われて一維君はあたふたしている。
「仲良くしてよね?」
「もちろんしてるよ! そうですよね? 亮さん!」
「ああ、そうだね」
* * *
目的のレジャー施設に到着し駐車して車から降りる。
水族館が併設されている遊園地だ。観覧車やジェットコースターを見るとこの年でもワクワクしてしまう。
入場すると、すぐに朱莉は一維君に近寄って行く。
「一維さん、あれ乗りましょう!」
「いえ、僕はそういうのは……」
一維君は苦笑いを浮かべたまま朱莉にジェットコースターへ引っ張られていった。
その後も一維君は俺と美玲の邪魔をしたかったのだろうけど、朱莉にブロックされて近づくことさえできずにいた。
一維君には少し悪いかなとも思ったけど、おかげで俺と美玲は仲良くプチ旅行を楽しむことが出来た。
思う存分遊園地も水族館も満喫できたことだし、日も暮れかけたのでそろそろホテルに行くとするか。
ホテルに着くと一旦それぞれが部屋に荷物を置いた後、ホテル内のレストランで集合し夕食となった。
食事中は和気藹藹とした様子で、一維君の方から朱莉に話しかけている。今日一日で仲良くなったようだな。
食事が終わると朱莉が「バーで飲もうよ」と誘うので四人揃ってバーに行く。おしゃれで落ち着いた内装に、大きな窓からは景色が見渡せ、いい雰囲気の店だ。
朱莉は一維君にカクテルを勧めている。酔わせて早めに無力化させる気だろうか。
「僕はお酒に弱いので……」
一維君はやんわり断っていたが、朱莉にスキンシップされ勧められると、断り切れずにカクテルを何杯か飲み干したようだ。
俺と美玲は話しながらゆっくりとカクテルを楽しんでいたが、朱莉が一維君に「一維さん、大丈夫ですか?」と声を掛けていることに気が付いた。
一維君は「少し飲みすぎました」と気分が悪そうにしている。足元がふらついているので、俺が肩を貸して部屋に連れて行った。
一維君をベッドに寝かすと、美玲が「私がすこし見てるよ、亮はお風呂でも行って来たら?」と言うので、俺は「そうさせてもらうよ」と応えて風呂に行くことにした。




