ヲタッキーズ70 新橋鮫
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第70話"新橋鮫"。さて、今回はスピンオフで敏腕警部の新橋時代の物語です。
ヲタクなサラリーマンの死体が新橋で見つかりますが、その背後には狡猾なシンジケートの女幹部の影が…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 妄想作家の登場
敏腕警部の新橋時代の物語だw
彼女がメイド服に着替えたら?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
殺人のコトばかりを考えてるのは、なりたてのシリアルキラーかライター。
僕はライターのテリィ。昼は新橋でサラリーマン、夜は聖地を巡礼してるw
「"国民的ヲタク作家"だからね」
僕の作品にちょくちょく出て来るのが刑事のラギィ。新作のリサーチで彼女に同行しては煙たがられてるw
「さぁ2人で事件を解決だ!」
「バッカじゃないの?引っ込んで」
まるで、刑事と犬がコンビの名作映画みたいw
「確かにテリィたん、犬っぽい」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
NSC警察署。
朝からカメラが押しかけてるけど、事件発生ではない。
僕の新作"新橋鮫"のプロモーションビデオのロケだ。
「イイょイイょエミリちゃん!じゃカメラ、回しちゃうぞー!」
軽薄ノリで撮影は始まりMC役のAV女優が喋り出す。
「人気ライター"国民的ヲタク作家"のテリィたん。彼が、新作のためにリサーチしたのが彼女、ラギィ刑事。主役のモデルとなった御感想を?」
「テ、テ、テ、テリィ氏の力になれて、NSC署一同、光栄に思いますぅ」
「CRだからソンな固くならないで…犯罪心理に精通したテリィたんの推理が、何度も実際の事件の解決につながったとか?」
「ちょ、そんなコト、誰に聞いたの?ってか、コレ、ランスルー?」
「テリィたん本人から聞いたわ(昨夜ベッドでw)。ウソなの?…未だドレスリハーサルだけど」
「ちょっと失礼」
ラギィは、輪になって撮影を取り囲んでいる野次馬の中から、サエない風貌の中年男を見つけて前に立つ。
「署長、ちょっと」
「え?ブロッキングの途中だろ?マズくない?」
「いいからっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
狭い署長室。西陽が差し込む。
「ラギィ。撮影には協力する約束だぞ」
「取り消します」
「なぜ?」
「ストリッパーみたいな女のインタビューに、作り笑いで答えるコトは我慢します。けど…テリィたんの推理が事件解決に役立ったですって?」
「そうだ」
「ソレはありません!」
ビシッと決めつけるラギィ。
「あのな!NSC署がインタビューのトップを飾るナンて滅多に無いンだ。知事も注目してる。協力しろ。わかったな?!」
「…わかりました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、撮影中断の間、署のコーヒーコーナーではミニのスーツ姿が眩しいAV女優が署員や撮影スタッフに(いちいち胸の谷間を強調しつつ)コーヒーを配ってるw
「取材が入るって最高だなー!」
「エミリちゃん!いつもお世話になってるよっ!」←
「今日はミニスカポリスの制服は着ないの?」
大好評だ!僕が顔を出したのは、このタイミング。
「テリィたん。昨夜の分だけサービスしといたわ。でも、コスプレは追加料金だから」
「え。今、払うょゼヒ…」
「ちょっと!アンタ達、何やってンの?!仕事しなさい、仕事!…昨夜?」
背後から怒鳴り散らすラギィが現れて、みんな蜘蛛の子を散らすように(エミリに手を振りつつw)退散w
「ラギィ。この取材は僕のアイデアじゃナイ。ただ、知事が良い広報活動になるわって乗り気で」
「別に構わないし」
「ホント?」
「テリィたんのコトなんか、どーでも良いの。取材に戻らなきゃ」
「なぜ怒ってるの?君のお母さんの事件だって、再捜査したら発見があったろ?」
「関係ナイわ。そのコトは、もう忘れたから…」
ちょっち気不味い雰囲気になりかけた、その時!
「ラギィ刑事!死体発見」
若い警官が駆け込んで来る。
「了解。出動(ちょうど良かった助かったわーw)!」
…と、内心ホッとするラギィ刑事。
「またまたテリィたんが大活躍?」
…と、谷間を強調して喜ぶAV女優。
「良い絵が撮れる!コレで知事も大喜びだ」
…と、無邪気に目を輝かせる署長。
第2章 レンガ通りの殺人
サイレンを鳴らして現場へと向かうパトカーの中には失敗したドライブデートのような空気が漂っているw
「なぁラギィ。少し話さないか」
「結構ょ。ほっといて」
「どうすれば許してくれる?」
「ココは殺人現場。白い歯は見せないで」
レンガ通りの街路樹に男の死体が引っかかってる。
高所作業車で検視を進めるのは鑑識のマグナ女医。
僕達を見下ろす。
「テリィたんも一緒なの?」
「今、ケンカ中ょ」
「あらまぁ」
枝が死体の胸を貫いているw
場を和ませる努力が必要だ←
「マグナ。スカートじゃなくて良かったね」
「…降りたらビンタだから」
「楽しみだ!」
警官が現状を報告スル。
「アジア系男性。30代後半。枝の折れ方から、手前の雑居ビルから飛んだようです。IDによると名前はジョア・レンパ。保険会社勤務の数理士」
「自殺なの?」
「とんでもない!」
撮影クルー共々やっと追いついたエミリが余計な口を挟み、笑顔の僕と仏頂面のラギィに瞬時否定されるw
「死ぬつもりなら、あんな低層のビルは選ばない。ソレに、そもそも木は避けるょ。角度からして突き落とされたンだ」
「へぇ。じゃ死因は何かしら?」
「絞殺かも」
すると、心底感心した様子で、エミリは僕のことを上目遣いで覗き込む。胸の谷間強調&妹キャラ全開←
「気管が潰されてるわ」
「索痕は?」
「索痕というのはロープの痕のコトだ。この索痕が無いと手で絞められたってコトになる」
高所作業中のマグナとラギィの会話を僕が解説したらエミリはますます感心し巨乳を揺らして大きく頷く。
「さすが!テリィたんは、捜査に不可欠ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「財布にはクリーニング券とID、クレジットカード。現金はナシ。強盗にしちゃ少し大袈裟ね…さぁ優秀なテリィたんは現場じゃMOTTAINAIわ。署に戻ってマグナの検視を手伝ってあげて」
「待て、ラギィ。僕は現場の方が活躍出来る」
「うーんソレが後は目撃者を探したり、聞き込みしたりで、絵にならないわ。撮影クルーも連れて帰って」
慇懃プレイに転じたラギィに腹を立てる僕。
が、まぁココはオトナの対応で軽くジャブ←
「そうか。エミリ、君も一緒に死体運搬車に乗らないか?またとないチャンスだ」
「え。死体と同じ車に乗るの?」
「うん。面白いネタも仕込んでアルし…」
ソレを聞いたラギィは見るだけで人を呪い殺せそうな恐ろしい視線ビームを放つが…知ったコトかw
「やれやれ。じゃ女優さん、助手席に座る?」
「いいの?」
「私は死体に慣れてるから」
万事、事情を知っているマグナ女医がエミリに助け舟を出すと、AV女優は返事も待たズ助手席へと消える。
「ダメ。テリィたん、私に話しかけないで。ラギィに聞いたから」
後部キャビンで仲良く死体を挟む僕とマグナ女医。
「怒ってるのかな、ラギィ」
「当然でしょ?彼女は3年も母親の事件に費やした。やっと忘れられると思ったのに…あ、発車ょ。テリィたん、安全ベルト締めて。私は大丈夫」
「thanks…でも、新発見もあった。聞いてないのか?同時期に同様の殺人が3件起きている。1件目は母親の教え子。2件目は事務員。3件目はNPOの弁護士ナンだけど」
「へぇ。で、当時の検視官は?」
「何もしてない」
「え。話を聞いたの?」
「4年前に死んでた。だから、ラギィに話した」
「ふーん。で、彼女は何だって?」
「僕と縁を切るって」
次の瞬間、何かが激突し大音響の中、車が横転スル!
第3章 死体強奪!
衝撃の果て、恐る恐る目を開くと目の前に血塗れのマグナの顔…をどけて次はウサギのラバーマスクのUP←
「don't move。死体を拝借」
「急げ!行くぞ!」
「ま、、待て…」
ウサギのラバーマスクはウサギ算で数が増え、ストレッチャーごと車外に死体を引き出して…ソコで僕の意識が飛ぶw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ココ何処?」
「新橋。貴方、死なないみたいょ」
「脳損傷とかは?」
「あるとしたらパーティのし過ぎ」
「…覚えとくょ」
病室。知らない天井。僕を覗き込むラギィに尋ねる。
「マグナは?」
「生きてる。撮影クルーのAV女優も無事ょ。襲撃現場と建物の屋上を捜査中。一体、誰が死体を盗むのかしら」
「解剖の楽しさに取り憑かれた医学生、モンスターを制作中のマッドサイエンティスト、地球人の臓器を売買する宇宙人…あ。死体はスパイで、極秘情報の入ったマイクロチップを飲み込み、ソレを狙った名前の逝えない闇組織が…」
「マシンガンのように陰謀論を撃ち返す反射神経には感心スルけど、取材は済んだから貴方は帰って」
「ダメだょ捜査はコレからだ。僕、目撃者だし」
「…じゃあ今回だけ同行して良いわ。でも、終わったら2度と関わらないで」
「了解!でも、警告しておく。ラギィの気は変わる」
「変わらない」
「変わる」
「変わらない」
病室の外の護衛の警官が溜め息。
「変わる、に1票」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「この人が"警察戦隊ポリスん5"原作者のテリィたん?包帯グルグル巻きで正体不明だけど?」
「いかにも。息子さんのお名前は?サインします」
「きゃー!モノホンなのね?私のブラにもサインして!」
ラギィ刑事と死んだジョア・レンパの遺族を神田山本町のマンションに訪ねる。
いきなり未亡人がブラウスの前をはだけブラボー…じゃなかった、頭を抱えるw
「何時間か前まで、ジョアはココにいたの。ソレなのに死ぬなんて」
「彼は、なぜ新橋のレンガ通りに?」
「オフィスは日比谷ですょね。食後の散歩?」
「当日、ココを出たのは?」
「仕事して来るって6時頃出た。出張から戻ったばかりで何時間かで帰ると」
「出張?」
「研修でシンガポールに。2日間」
「最近気になる行動は?」
「残業が多かったのは確か。でも、コロナだから当然。昨年部署の半数を解雇したと」
「本当に残業?」
「浮気を疑ってるの?夫は毎晩ココに帰って、息子を抱きしめては誕生日プレゼントに買う"ポリスん5"のフィギュアの話をしてた。彼はホントは、あのグレン・ミラーをバックに登場スル、悪の女幹部…あれ?誰だっけ?」
「ムーンライトセレナーダー。僕の初の警察小説"新橋鮫"にも登場してる。よろしく」
「そうそう。その"微乳彼女"のフィギュアが欲しかったみたいだけど…でも、もう彼はいない。ねぇジョアの浮気を疑うより、なぜ死んだかを捜査して」
「深夜に電話とかありませんでしたか?」
「確かにあった。夫が解雇したマクスが、深夜に電話で怒鳴り込んで来たコトがある。何か…お金が必要だったみたい」
「ソンな電話、切れば良いのに」
「ジョアは、何か無視出来ない様子だったわ」
「で、お金は渡したの?」
「いいえ。渡してもマクスのタメにならないと。夫とは会えるの?サヨナラを言いたいの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィと故ジョア・レンパ宅を後にスル。
「変な感じ。良い仕事に良い家族。社会的にも安定した地位の男が、なぜあんな事件に?」
「でも、マクスの恨みは買ってるな」
「遺体を盗まれるほど?」
暫し僕を見詰めるラギィ。おもむろにスマホを抜く。
「マクスを署に連れてきて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
当時、アキバは未だ萌え始めたばかり。
当時の推し屋敷"@ポエムカフェ"は、前橋からアキバに進出して来たばかりだ。
その後、首相官邸の"カワイイ大使"に任命される"国民的メイド"も未だ若い←
「テリィたん、大丈夫?死体泥棒に遭ったンだって?」
「げ。ヒロミン、何で知ってるの?」
「ラッキィが教えてくれた。ねぇラッキィって、ウチでメイドやりながら、新橋では警察のお仕事してるみたいょ」
「ええっ(鋭いw)!」
「あくまで、メイドの勘だけど。もしかしたら…」
「もしかしたら?!」
「ミニスカポリスのコスプレバーかもしれない」←
「そ、そうだね…」
「テリィたんは(コスプ)レイヤー好きでしょ?ラッキィ推しなの?」
「推したらTOとは逝われてる」←
「ヤッパシ?ラッキィって大胆w」
「大胆には大胆で応えたい。メイドが築く心の壁に、ドアを作って梯子をかけるか、穴を掘るか」
「テリィ御主人様のストラテジーは?」
「"ヲタクらしく"」
「ソレ、プランB?でも、テリィたんには、この後、運命のメイドが現れるよーな気もスルの…で、死体泥棒は怖かった?」
「うーん奴等の狙いは遺体だったから…もうすぐシフト明け?お茶スル?」
「あ。(家電量販店の)店頭ライブなの。テリィたんも来てょ特典アルぞ」
「この寒空にミニスカで歌うのか?何でメイドは歌いたがるのかな。ヒロミンも上京したての頃は、テリィたん何処?テリィたん心配なのってウルさかったけど…御主人様の目の前で死体が強奪されたンだぜ?」
「テリィたんは無事だって知ってたから」
「アフターの約束は?」
「でも、ブッキングライブに穴をあけると…」←
「御主人様よりライブか。ラッキィのTOになっちゃうぞ」
「え。バックれてもいいけど…」
「いや、今回は譲る」
「試したの?でも、テリィたんが生きてて良かった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、マクスの取調べに付き合う。
取調室に入って来た彼は…車椅子←
「ホ、ホントにアナタが…」
「ジョア・レンパの元同僚、マクスだ。ブースター接種の医科問診と聞いて来たが」
「やれやれ。死体強奪どころか、スポンジも投げられそうにないょどーするラギィ?」
ところが、ラギィは瞬時に立ち直ってる。メンタル強いw
「アナタ、連行の理由をご存知?」
「ブースター接種の…」
「ジョア・レンパが昨夜殺害されました。友人でしたね?」
「殺害?…会社で同僚だったが」
「最後に会ったのは?」
「D day 以来会ってない」
「D day?」
「つまり、私が解雇された日以来、会っていない」
「彼がアナタをクビに?」
「YES。15年間マジメに働いた。その忠誠心は、評価されると思ってたがポイされた。身障者にこの仕打ちはヒドい。いつか必ズ仕返ししてヤル」
「だから彼を殺した?」
「誰を?」
「ジョア・レンパを」
「どうして彼を?」
「クビにされたから」
「なるほど。でも、違う。ジョアも私と一緒にクビにされた側だ。私は、身障者枠で次の職が見つかったが、彼は確か無職のハズだ。まぁ…もう働く必要はナイが」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
NSC署は大騒ぎだ。
「事実でした!ジョア・レンパは、8ヶ月前に解雇されています」
「シンガポール出張は?」
「神田リバー水上空港からの直行便に、搭乗記録が見当たりません」
「妻に嘘をついてた?生活費は何処で稼いでたの?」
ソコへ悲報が飛び込む。
「ジョア・レンパの遺体が見つかりました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は、神田リバー沿いで水死体として打ち上がる。
「誰かが遺体に手術を施しています。臓器が摘出された模様で"中身"がありません…腹の底から憎かったンでしょうね」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何と検視はマグナ女医だw
頭はグルグル包帯巻きに松葉杖で左手は首から吊ってるが、左目と右手に持ったメスだけがギラギラ光ってるw
「完全に素人。カッターや包丁で切り刻んでるわ」
「目的はわかる?」
「血液は異常ないけど体液から微量の粉末コカインが」
「体液から?運び屋だったの?」
「YES。体内にドラッグを仕込まれ、秋葉原で無理矢理取り出された」
「でも、犯罪歴のないヲタクな保険数理士が、何で突然運び屋に豹変スルの?」
「そもそも、シンジケートに通じるコネがナイと運び屋にはなれない。彼と地下経済との接点は?」
外観的に"半分ミイラ女"なマグナ女医が口を挟む。
「忘れないで。ドラッグの取り出し手術は死後にされてる」
「じゃ…死因は?」
「犯人が両手で首を絞めた痕がある。でも、小指1本分だけ痣が薄いの。小指を骨折してる可能性アリ」
「ソレとも上品に小指を立てながら絞めた?」
「お茶会みたいに?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
NSC署は騒然となる。
「ジョア・レンパは、シンガポールではなく、タイに行ってたようです!」
「タイ?まさか…ゴールデントライアングル?」
「レトロだ。最近じゃ観光地だょ?」
「ソレょ!犯罪歴の無いヲタクが、運び屋として訪れても誰も怪しまないわ」
「ジョアなら、他の仕事も出来たろうに…」
「仕方がなかった」
「妻が口座を確認しました。ココ半年、全て支払いはカードだそうです。奥さんも驚いてた…」
「じゃ彼は毎日何処へ出掛けてたの?」
「職探しです。自宅のPCから大量の履歴書が見つかりました」
「マンションを売れば良かったのに?」
「安過ぎます」
「厳しいな。生命保険は?」
「4ヶ月前に解約してます。彼が死んでも金にはなりません」
「…金に困って運び屋になったコトは理解出来た。でも、相変わらずシンジケートとの接点が不明だわ。誰が運び屋にスカウトしたの?鑑識、何か見つかった?」
「…収穫はゼロ。衝突した車は盗難車で、車の持ち主の指紋しか残ってなかった」
"半分ミイラ女"のマグナが、包帯の下からモゴモゴと答える。タイヘン気の毒ではあるが、追加で質問。
「現場に落ちてた手袋は?」
「指紋はなかったわ」
「内側だょ?」
「内側?」
「手袋の中」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
検視室。PCが桜田門のデータベースと指紋照合中。
「海外ドラマだと、ポルノっぽい音楽がかかるシーンだね」
「テリィたん、黙ってて。割礼してあげょうか」
「間に合ってるわ」
無意識に応えて赤面するラギィ←
ムダに大きな咳払いするマグナw
「OK。指紋一致ょ。ルーサ・クラム。薬物所持で2度逮捕。共謀罪でも逮捕され、音波銃の不法所持で5年服役。現在、薬物販売の共謀罪で仮出所中」
「やっとソレっぽいのが出て来たわ。逮捕しちゃお」
「仮出所は取り消しだな」
第4章 彼女がメイド服に着替えたら
首都高 汐留JCT下の海岸通り沿いにあるプレハブ。
大都会の死角に潜む地下工場を警官隊が包囲スル。
「突入!ニュー新橋シティ警察!ニュー新橋シティ警察!」
「サツの手入れだっ?!やっちまえ!」
「裏に回ったぞ!逃すな!」
作業のBGM?なのか、ハードロックが流れる中、閃光音響弾が炸裂、眩い太陽が現出!
たちまち、短機関銃の連射の応酬!白い粉の入った小袋や天秤が吹っ飛び負傷者が続出←
「全員逮捕!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルーサの取調べをマジックミラー越しに参戦スル。
「銃の不法所持に薬物所持、暴行、死体の損壊。他にも複数の罪の証拠をつかんでるけど」
「司法取引はしない。殺人の証拠はあるのか?」
「捜査中」
狭い取調室の中で、ラギィとルーサは押したり引いたり。
一見、強面なルーサ優勢に見えるがラギィもシタタカだ。
「俺は殺してない。だから、いくら探しても証拠は出ない」
「懲役10年。仮出所の資格は5年後。要介護のお母さんの死に目に会えるか微妙だわ」
「…全部お話しします」←
「被害者と何か約束を?」
「海岸通りの湾岸食堂で7時に会う約束だったが姿を見せなかった。7500万円相当のコカインを腹に詰めたままトンズラだ」
「それで?」
「奴のオフィスへ行く途中でサイレンが聞こえた。外に出たら、警察が全員、木を見上げてて…ジョアがプラタナスに引っかかってた」
「ハナミズキょ。港区の区樹。で、ブツの回収は?」
「諦めた。アンタらが死体を持ち去ったし」
「彼はなぜ運び屋に?」
「ヤケだったんだろう」
「ジョアはそんなタイプじゃない」
「あんな泥沼に堕ちたら誰でも運び屋になる。追い込みをかけられて時間がナイと焦ってた」
「誰に?」
「ジョアは言わなかった。殺したのは、多分奴に金を貸してた連中だ。なぁ十分に協力したろ?」
「まだまだね。誰がアナタに紹介したの?」
「紹介?」
「誰の紹介でジョアを運び屋にしたの?アナタが信頼してる人ょね?」
「確かに。コッチも囮捜査を捕まされちゃカナわんからな。俺にジョアを紹介したのは、投資銀行に勤めてるロンガ。古い友人だ」
「リスクの高い投資をスルお友達ね」
ラギィは振り向き、マジックミラー越しに命令。
「連行して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロンガの取調べには、僕も取調室に入るコトが許される。
「死んだ?!」
「大声出さないで。何度聞いても答えは同じょ」
「ひどい話だ」
「ジョアって保険数理士を知ってる?」
「劇団民藝"セールスマンの死"かょ?アンタ"国民的ヲタク作家"のテリィたんだょな?戯曲も描くのか?」
「いつかな。今、警察小説"新橋鮫"を描き上げたばかりで、次はスーパーヒロインものの"MF"だ」
「え。SFも描くのか?」
「惜しい。"MF"だ。妄想科学小説」←
「…最近ジョアに運び屋の仕事を紹介しましたね?」
「知ってたか?」
「アンタに薬を売ってた連中は、全員逮捕したから」
「そうか」
「シンジケートにジョアを紹介したのは貴方ね?」
「ジョアは…俺がテーブルでした話を覚えてた」
「テーブル?」
「ジョアとは、違法ポーカー場で会った。最初は可愛く賭けてストレスを発散してた。だが、ジョアは解雇されてから、ポーカーで生活費を稼ぐコトを考えついた」
「それで東秋葉原に?」
「半島マフィアに異次元人が絡んで、レートが高い。最初は悪くなかったが"危ない奴等"に捕まって大損した」
「支払えなくなった?」
「ソコで、奴は俺の話を思い出した。ゴールデントライアングルを往復スルだけで1日に500万ドルを稼いだ話だ。儲かる情報は、他の人にも教えなきゃな」
「その"危ない奴等"の特徴は?」
「肩に"踊る悪魔"のタトゥー。恐らく元"喜び組"の半島マフィアだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査会議は紛糾スル。
「ソンな状況じゃ誰だって運び屋にナルょな」
「肩に"踊る悪魔"のタトゥーがある元"喜び組"だって。どう探す?」
「今ある証拠から捜査を進めるしかナイわね」
「その元"喜び組"がいる東秋葉原の賭博場って?」
「違法賭博場の連中は、所轄の万世橋警察の手には負えない。ウチがヤらないと」
刑事達は、揃って頭をヒネる…出番だ。
「…あのさ。僕なら警察じゃないし、しかも、ヲタクだから何かと便利だ。僕が潜入して元"喜び組"を探そうか?」
「え…良い案、カモ?」
「でも、賭博場は何処?テリィたん、知ってるの?」
「知ってる人を探すょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"@ポエム"の美少女メイド、アカナ。
そう。彼女は儚い。長い黒髪。物憂げな眼差し。
その瞳は常に問う"なぜ貴方は生きているの?"
実はミユリさんの前の推しで…僕の元カノw
「"新橋鮫"読んだわ。面白いストーリーね。冒頭も良いしヒネリも効いてる。サスガ"国民的ヲタク作家"だわ。でも、運び屋の展開は読めたけど」
「煽ってもレイズしないぞ…アカナは、違法ポーカーを開いてたょね?次に描く小説では、アジアンマフィアの賭博場の常連がモデルなんだ。アカナのテーブルで取材させてくれないか?リアリティが欲しいンだ」
「冗談でしょ?チップに命を載せてやり取りスル連中の溜まり場ょ。もう何人も死んでる」←
「マフィアに目をつけられたら終わりだ。だから、世間知らズな金持ちのボンボンが運試しに来たと思わせるょ」
「…推してるのね?」
「誰を?」
「誰なの?ヒロミン?ラッキィ?でも、ラッツが危ない橋を渡るのは、推しのタメょね?…誰なの?妬ける」
「やめてくれ。僕なら手っ取り早く橋を買ってプレゼントするさ。なぁ賭博場は何処だ?教えてくれょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の真ん中にある和泉パーク。
路肩に駐車した窓の無いSUVの中で←
「テリィたん。隠しカメラをつけたわ」
「映像OK。音声も問題ありません」
「私達の声は、テリィたんには聞こえない。何か起きても指示は出来ないわ。OK?」
「うん。1人には慣れてる。ヲタクだから」
「作戦をもう1度繰り返すわ。肩に"踊る悪魔"のタトゥーが入った元"喜び組"の画像を撮って店を出る。長居は禁物。後は任せて」
「了解。じゃオマジナイを」
「ココで?!」
「早く。決心が鈍る」
「…いってらっしゃいませ、御主人様」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
路地裏にある街中華"新秋楼"。
路地裏の、そのまた裏口に目つきの悪い痩せた男。
後で聞いたら、既に何人も死んでる現場とのコトw
「アンタが鼠?入って?」
奥の厨房から一声かかり、男はトイレのドアを開ける。
便器をどけたら地下への階段。降りると…地下カジノ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現地本部のトレーラーの中で、隠しカメラからの画像を食い入るように見てるラギィ刑事達。僕の実況中継が役に立つ…
「…肩にタトゥーの女だらけだょ流行ってるの?…こりゃ1人1人調べなきゃ…アカナの話だとテーブル席は掛け金が無制限らしい…ジョアもあそこでプレーしたのカナ…汚い手口で掛け金を引き上げるらしい怖っ…」
トレーラーの中で刑事達は頭を抱えてるw
「実況中継ナンかしなくても会話は聞こえてるのに」
「潜入捜査官気取りだ。素人なのに危険だな!」
「その内カメラつけたまま小便スルぞ」
「なぜ?」
「俺も囮捜査でやっちまった」
ラギィがさえぎる。
「静かに!テリィたん、今なんて言った?作戦と違うわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「僕もあのテーブルに座ってみよう」
僕は、地下カジノの1番大きなテーブルにつく。
「やぁみなさん。調子はどう?」
「…ココは賭け金無制限のテーブルだけど」
「無制限な僕にピッタリだ!コレをチップに…君、キレイだね。あ、変な意味じゃなくて肩のタトゥーだけど…よく見せてょ」
「黙ってゲームして」
「実は、僕はベストセラー作家ナンだけど、新作のリサーチの最中ナンだ」
「作家?作品は?」
「"警察戦隊ポリスん5"の原作とか。最近は…"新橋鮫"」
「え。もしかして"国民的ヲタク作家"のテリィたん?"ポリスん5"は息子が大好きょ。あ、私はシングルマザー」
「息子さんの名前は?サインするょ」
「ええっ!私のブラにもして!」
突然ドレスの前をはだけ…肩に"踊る悪魔"のタトゥーwいきなりビンゴ!
「"新橋鮫"も一気読みした。秋葉原のメイドが新橋で女刑事だナンて!でも、主人公をナゼ殺したの?」
「複雑でね…ところで、次の小説は違法ポーカー場の話ナンだ。その執筆のためリサーチに来た」
「リアリティを出すため?」
「その通り」
「…ねぇ私を新作に出してょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現地本部のトレーラーの中。
「"踊る悪魔"のタトゥーだ!アイツが元"喜び組"か。たしかに"元"美人…」
「しかし、テリィたん打ち解けてるな」
「そうでもない。さっきから彼女は朝鮮語で搾り取ってやるとツブやいてる」
「ちょっと萌えるな」←
若い刑事は、ラギィに睨まれて首をすくめる。
「テリィたん、深追いしないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「コール!また、僕の勝ちだ!」
「やられたわー。貴方の新作について、もっと話してくれない?私の出番は?」
「あるょ。ポーカー好きのヲタクなサラリーマンの話だ。自殺寸前に追い込まれ、全財産を賭けて…負ける」
「誰がソンな目に?」
「シンジケートの女幹部さ。獲物に金を貸し、挑発して食いつくのを待った。その獲物には家庭があった。深みにハマり、金が返せなくなる。でも、シンジケートはソイツを殺すしかない。他の債務者への見せしめだ。ある晩、ソイツはレンガ通りに呼び出され、首を絞められ突き落とされる」
「…あらぁ突き落としたのはヤリ過ぎね。絞殺だけで十分なのに。見て。私の指」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
トレーラーの中は騒然だw
「やり過ぎた!相手に正体がバレた!」
「待って。画像を拡大して」
「小指をクルクル回してる?人工指か!」
「どーりで力が入らないハズだ。犯人は彼女だ!」
「テリィたんを早く助けなきゃ!」
「下手に踏み込むと警察だとバレる」
「私が行くわ。10分で戻らなかったら踏み込んで。マグナ、化粧ポーチを貸して!」
「え?犯人をメーキャップするの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほとんどランジェリーのセクシーメイドが用心棒に絡むw
「ねぇ。私が行かないと御主人様が負けちゃうの。私、御主人様の幸運の女神ラッキィょ。え?ダメ?じゃ良い方法がアルわ。私が御帰宅して御主人様が大儲けしたら、その幸運をアナタにも分けてア・ゲ・ル」
用心棒は、奥で青菜を切ってる太ったおばちゃんの方を見る。おばちゃんはメイドの瞳を見つめ…青菜を切り続ける。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「オールイン!」
僕のコールに元"喜び組"がテーブルの下で拳銃を抜く。
「かなり大金になったわょ?でも、ベストセラー作家にとっちゃ大したコトないか」
「YES。ソレに、リサーチ費用だから税金もかからないwオールイン!」
「ドツボにハマったわね。貴方の新作と同じょ…クイーンのスリーカード」
「えっ?!ソレには勝てないな。インサイドストレート以外ではね…じゃ換金して。わぁこんなに持てないょ。でも、こんなハシタ金、シンジケートには大したコトないか」
この言葉で拳銃はテーブルの下から上へ移動←
僕の眉間を白昼堂々と狙うのに誰も驚かないw
「あの可哀想な保険数理士の話は誰から聞いたの?」
「遺族からだ」
「金さえ払えば生きていられた…次はアンタの番ょ」
「待て。僕はタダの"国民的ヲタク作家"で…」
「ウソょ。囮捜査官でしょ?」
ソコへほとんどランジェリーのセクシーメイドが登場w
「幸運の女神ラッキィょ。テリィたん、コチラのシングルマザーに何かご迷惑を?」
「邪魔ょボケナス」
「あら。私を口説くのに銃は要らないわ」
「アンタにゃ関係ナイょオタンコナス」
「いいえ」
次の瞬間、コンマ秒の速さで拳銃はラギィの手に移動w
女を逆手にとって締め上げ頭をテーブルに叩きつける!
「関係大アリなのょ。ね?テリィたん」
「遅かったじゃナイか、ラッキィ。御挨拶は?」
「おかえりなさいませ、テリィ様…あ!マイク切って!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一網打尽だ。直後に踏み込んだ警官隊が全員を検挙スル。
「ジョアの奥さんには?」
「伝えたけど、辛そうだったわ…夫に嘘をつかれていたナンて」
「全部が嘘じゃない。ジョアは、家庭を愛してたハズさ」
「でも、そのせいで人生を誤った」
僕は、話題を変える。ラギィには、どうしても話をしておきたいコトがアル。彼女がランジェリーメイドでいる間にw
「僕達は、最高のチームだね。刑事と犬がコンビの名作映画みたいだ」
「確かにテリィたんって犬っぽい」
「怖いんだろう?お母さんの事件を再捜査して、また自分を失いたくない。でも、今回は違う。かなり強力な手がかりがある。しかも、もはや君は1人じゃない。一緒にやろう」
「私は知りたくないの!ソレは考えなかったの?犯人を捕まえても、司法取引で10年でまた自由の身になるわ。再捜査は、私のためじゃナイ。テリィたん、アナタの好奇心を満たすためなのょ」
最後は…涙声だw
「事件は解決したわ。もう私には関わらないって約束して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ハートブレイクな時は萌えよう。
その夜"@ポエム"へ御帰宅だ←
「テリィたん?結局"メイドの店頭ライブ"に来なかったのねプンプン」
「あ、ヒロミン。人、集まった?」
「全然。この寒空で大根足がプルプル震えたンだぞ!ハイ、言い訳プリーズ!」
「え。実は連続絞殺魔を追って地下カジノに潜入…」
「何ソレ?どーせゲームに夢中で間に合わなかったンでしょ!ようやく御帰宅したら悪びれた様子もゼロ。メールもナシ。テリィたんって、ナゼ自分を正当化しようとスルの?素直に謝れば済むのに」
「…そうか!ありがと、ヒロミン!」
「感謝してるの?何に?」
「君がメイドでいてくれるコトに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
NSC署に入ったら、スッカリ顔馴染みになった刑事達が"ラギィが御機嫌ナナメ"とハンドサインで教えてくれるw
「ラギィ。悪かった。僕が間違ってた。ラギィの意思を尊重しないで、勝手に古傷に触れるコトをした」
「え。テリィたん…」
「もう会わないなら、逝っておきたい。心から反省してる」
ラギィは、僕を見上げる。
「テリィたん。今度、秋葉原でね」
おしまい
今回は、海外ドラマでもよくあるスピンオフで、敏腕警部の新橋時代を描き、未だ秋葉原に来る前の主人公、警部、相棒の女監察医、連続絞殺魔と絞殺魔の犠牲となるサラリーマンとその妻、ブレイク前の"カワイイ大使"、主人公の前カノ、陽気なAV女優、街中華"新秋楼"の太ったおばちゃんと用心棒などが登場しました。
さらに、主人公と"新橋鮫"、ブレイク前の国民的メイド、前カノ達との淡い恋愛感情などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、ブースター接種の進む秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。