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phase.09 決意



 医療モジュールに向かい腕の治療のためにポッドに入るとものの数分で裂傷が修復した。

 ダグザ錠と呼ばれる人体に必要な全ての栄養素が詰まっているタブレットを経口摂取し、

 バイオモジュールでは運動補助、学習補助、免疫補助などの複数のナノマシンを打ち込んだ。

 

 トイレに行けばちゃんと出るものは出た。出てしまった。

 VR世界では倫理規制されているはずのものがしっかりと出た。

 もう疑う余地も無く、ここは現実だ。


 異世界転生してしまったものは仕方ない

 まあそういう事もあるのだろう……


 なんて簡単に切り替えられるはずもなく、俺は馬鹿でかい艦内を虚ろな目で徘徊していた。




『艦長、精神鑑定を受けることを提言致します。バイタルに異常値が見受けられます』


 Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)の通路を歩きながら色々な部屋を回っている最中、フィアナがしつこく話しかけて来た

 

『休息は艦長室でお願い致します』

『作戦計画の立案を提言致します』

『アトラクトエネルギー変換効率の変更を提言致します』

『兵装確認をお願い致します』』

『作戦行動の発令を提言致します』



「うるせえええーー!!!!少し静かにしててくれ!!!」



 俺だって混乱しているんだ。

 ちょっと待って欲しい、ほんのちょっとでいいから待って欲しい。

 いくら無敵の艦Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)の艦長と言えど、この状況を整理するには時間が掛る



 ◇ ◇ ◇



 9人の仲間と創り上げた Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)

 ゲームの中でも現実でもいつも一緒だった9人の仲間と創り上げた、俺の青春


 人知を越えたAIにより統治された何の苦労もない世界、

 ただ生きて死ぬだけの停滞した現実世界

 誰もが仮想現実に生き、誰もが夢を叶えられるようになった世界、

 

 誰もが現実を見なくなった世界で出会えた奇跡の9人



 何か1つ不可能をやり遂げようとした俺達が選んだゲームが大海のヘイムダルだった

 アクティブユーザーが1950万人以上いた人気ゲームだったという理由だけで選んだ。

 9人の誰も船なんて興味はなかったし、ゲームにだって殆ど興味はなかった。

 このゲームを選んだのは本当にただの偶然だった


 何か1つ、誰もが不可能だという事を成し遂げたかった。ただそれだけだ。


 

 あらゆる困難を打破し、見る者全てに感動を与える、

 不可能と言われた作戦を遂行し、傷1つ付けられない伝説の艦


 多目的強襲揚陸型弾道ミサイル潜水艦『Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)


 ゲームの限界を超えた1つの伝説を創り上げた俺達は、それぞれの道に進んだ

 俺達に不可能はないのだと。9人が集まれば不可能はないのだと。


 俺達の進む道はいつかまた頂点で交わるのだと、そう信じて……




「異世界ね……」


 艦長室のベッドで横になり、美しい調度品が備え付けられている俺が創り上げた部屋をぐるりと見る


 ここが現実だという事は認めてもいいが、異世界とは何なのだろうか…

 異なる世界とはどういうものなのだろうか…


 転移は技術的には不可能ではないが、異世界などという意味不明な場所への次元を超えた転移は無理だし、それもDaoine(ディーナ) Sidhe(シー)というゲームで創造したモノを伴った転移など理解が出来ない。今からでもゲームの世界だといわれた方がまだ納得が出来るが……


「こういうのは考えても仕方ないのかもしれんな」


 現代科学を超越した事象に遭遇しているんだ。

 解明する意味はあるが、何もせずに考える事に意味はない。



「うっし……」


 掛け声とともにベッドから上体を起した。


 こういう時じっとしている事が一番の悪手だ。


「まずはやれる事をやろう……どんな問題解決も一歩ずつだ」


 脱ぎ捨てていたDaoine(ディーナ) Sidhe(シー)の制服を再び身に纏い姿見で確認した。

姿見で確認するまで気付かなかったが、鏡に映った俺の姿は大海のヘイムダルで作成したアバター『クヴァシル』ではなく、現実世界の上倉(かみくら)洋介(よすうけ)だった。何処にでもいる日本人の顔だな。



「フィアナ、聞いているか?」


『肯定します艦長』


「アトラクトエネルギーの変換効率を42%まで下げてフィールド展開に回せ。居住区、シミュレーションルーム、ブリーフィングルームを停止。艦は引き続き静粛性を最優先に周囲の艦影を探れ」


『了解しました艦長』


「すぐに発令室に向かう。現時点で取得した当海域の地形データを纏めておけ、偵察ドローンは昨日発見したフリゲート艦を追跡、言語解析のためのボイスサンプルを収拾しろ」


『了解しました艦長』


 艦長室を出て発令室に向かいながらフィアナに指示を飛ばす。



 頭の中はまだ混乱しているが、混乱している事と停止する事は別だ。

 ここがゲームではなく現実なのだとすればその方が好都合だ。

 地球ではない何処かの惑星だとすればそれでも構わない。



 Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)は停滞した現実を打破する為に創り上げた架空の伝説だ


 理解が出来ない現実に直面したのであればそれを打ち破ればいい。難しく考えるのはここまでだ。



「行こうか、Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)


お読みいただきありがとう御座います!



大海のヘイムダルはとりあえずここの導入で停止します!


この先もちょこちょこ書いているのですが、海戦って私は全然知らなくて、この後からすごくドンパチになるものの表現力がちょっと足りてないなと思いながら勉強を開始して今に至ります!


続きというか本編はのんびりお待ち下さい!

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[一言] 再開を楽しみにしています。のんびりと執筆ください
[良い点] まさにプロローグが終わりましたね! 海戦大好きなので期待してます! [一言] ナノマシンパワーで、死んでも復活可能とか、そもそも改造人間的なものになるのかなと人間時も期待してます。 気…
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