表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

phase.07 疑念



『不明の現象を確認、映像解析を開始します』


 フィアナも少し驚いたようだが、不明の現象もなにもありゃ魔法だよ魔法

 杖をかざして呪文を唱えるとあら不思議、火とか水とか雷とかズバババーって出るアレな。

 凄い凄い、憧れるよ。

 俺だって日本人だからな、剣と魔法のファンタジーは大好きだが……



「ここは潮風に硝煙香る浪漫の海ヘイムダルだぞ!ふざけるなよクソ運営!!!」



 SF海戦浪漫と魔法ファンタジー浪漫を混ぜ合わせるな!


 あぁああぁぁあーーー!俺の青春が壊れていくううう!!



『映像からの解析は不能。解析を希望される場合、サンプルの回収をお願い致します。回収致しますか?』


「回収は不要だ。ドローンも撤退させるが……言語検索は可能か?」


『類似言語の検索から開始になりますが300時間頂ければ解析は可能です。また、対象生物と会話していただけるのであれば41時間以内に言語解析は可能です』


「300時間って……」


 ネット回線に接続さえ出来れば一瞬だったんだろうな。

しかし、困ったな……運よく見つけたプレイヤーが2000人のマイナー言語を操る帆船マニアの集まりだったとは……


「システムコール!」


 やっぱりダメか……

明日もログアウトできなくて会社にいけなかったらヤバイのは間違いないが、そんな社会的なヤバさも然ることながら腹が減ってきたしトイレにだって行きたいという生物的なヤバさもにじみ出てきた。


 空腹を感じた場合もそうだし尿意などの生理現象を感知した場合も、VRインターフェースはゲーム中だろうが何をしていようがログアウトを促す為のメッセージが出てくる。中にはトイレつきのインタフェースもあるが、あれはちょっと高いし設置工事が大変だし何より何となく嫌だ。俺はそこまでVR世界に生きたいと思っているわけではないし、飯もトイレも現実でちゃんと出来る。

 

「ゲーム内で空腹を感じているのは危険だな……トイレにも行きたいし……万が一にもリアルでもらしたらインターフェースが破損するかもしれない…システムコール!!」 


 洒落にならないバグだが、本来はゲームがどのようにバグった所でVRマンマシンインターフェース側が強制排出してくれるように設計されているはずなのにな……

 百歩譲って空腹はVR世界の食事を摂取すればある程度紛らわせる事もできるが、トイレだけはどうしようもない。食事にしたって実際に腹が満たされるわけでもなければ栄養が摂取できるわけでもないからな。

 VR世界で美味い物をたらふく食って現実では必要最低限の栄養を補給するVRダイエットなんてのもあるが、大海のヘイムダルは味覚演算は搭載していない。料理も飲み物も沢山あるが、どれを食っても味はしないゲームの雰囲気を盛り上げるためだけのフレーバー要素でしかない。


『艦長、ご指示をお願い致します』


 俺の焦りなど何も知らないフィアナは淡々と喋るだけだ。


「あー……ドローンの操作は返す。帆船が補足不能な高度まであげろ」


 モニターにはローブ姿の爺さんプレイヤーが魔法を撃ちまくっているが、正直もう飽きた。


『サンプルの回収は如何致しますか?』 


「いらんいらん。てか、サンプルってあの魔法使いの爺さんの事だろ?いいよ俺そういうの求めてないし、回線が復旧したら後で公式サイトで自分で確認するから」


 帆船で楽しく遊んでるかと思いきや魔法使いが乗船していたり、ブレブレだな。


『了解しました艦長』


「リアクターの起動はあとどの程度だ?」


『4分12秒で完了致します』


「わかった……再度索敵を開始、引き続き帆船を捉えつつ他艦影を見つけて情報を集めろ。英語や中国語スペイン語、なんでも意思疎通が出来るプレイヤーを発見したら知らせてくれ。俺は艦内を歩いてくる」


『了解しました。一部バイタルが低下しております。バイオモジュールにてナノマシンの摂取とトゥルーライトの照射、医療モジュールにてダグザ錠の経口摂取を提言致します』


「またそれか……」


 時間がある時にはそういうのも嫌いじゃないが、今は早く状況を整理したい。

 ログアウトできないなんて事件聞いた事もないからな。


 確かに、一世紀ほど昔に流行った古典娯楽の中にはそういうものもあったと聞くが………



 いやいや……今は2135年だぞ?


 ビフォアシンギュラリティーの世界

 アフターシンギュラリティの世界

 この世界は似て非なるものだ。


 技術的特異点(シンギュラリティ)を越えた世界は爆発的に進化した。

 魔法は無いが魔法などどうでもよくなるようなテクノロジーが世界を支配する

 そんな現代社会で異世界などそんなまさか……


 宇宙開発が進み人々が気軽に月面に遊びにいく時代に異世界転生など……


 人工知能が世界を整備した現代において異世界転生などという古典娯楽が……

  


 俺は目標のために仕事をしているが、今の時代は仕事も必須ではない。

 働きたくなければ自分の生体データを政府に提供するだけで後は衣食住を提供されるし、

 後は死ぬまで四六時中VR世界で遊び放題だ。

 

 AI技術が発達し、医療技術が発達し、科学技術が発達した現代……


 アフターシンギュラリティーの人間は異世界転生など望まない。

 そんな事をしなくてもVRの中に異世界はあるんだから。


 そこでは誰もが主人公になれて誰もがヒロインになれる。



 今の時代、異世界転生なんて……そんなまさか…な?


お読みいただきありがとうございます!

のんびり楽しんでください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目を通してくださりありがとうございます!
もし気に入ってくだされば評価いただけると嬉しいです!
他の作品も目を通していただければとても嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ