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phase.05 帆船



『艦長、海上に複数の艦影を補足しました』



「詳細なデータは取れそうか?」


Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)の艦長たるもの切り替えは大事だ。

発令室から出るのはやめ、もう一度艦長席へと腰掛けながらフィアナの声に即座に返答した。


『音響分析は完了しております。映像化致しますか?』


「よくやった。メインモニターに回せ」


 発令室の巨大なモニターに半径20kmほどの3D処理が施された地形が表示された。

 ヤバイな…今ってこんなにリアルになってるの?

 6年間ログインしてなかったけど……ヤバイな!!すげーー!!

 会社の遅刻やら無断欠勤やらどうでもよくなるくらいテンションがあがってきた


 これだけ精巧な周辺データが取れるとなると作戦立案もはかどるというものだが……


 しかし……


「ここはラニアケア海域ではないのか?」



 ヘイムダルの主戦場はゲームスケールにおいて約1億平方キロメートルの面積を誇る『ラニアケア海』と7777万平方キロメートルの面積を誇る『シャプレー海』の2つの巨大な海と、小さな島が点在する複雑で小さな空洞海域、ボイド海域と呼ばれる3種類の海だった。


 ヘイムダルはプレイヤーがログアウトしても船は消えないので、海のど真ん中でログアウトしようものなら敵陣営に拿捕されるか撃沈されるので、本当は所属する陣営が保有している島に停泊させてからログアウトするのが基本なのだが、Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)はどの陣営にも属さない単独艦隊だった。


 その為、俺はDaoine(ディーナ) Sidhe(シー)を隠す場所を慎重に選んでいる。

なるべく複雑でなるべくバレない場所で待機させておきたいからな……1億平方キロメートルもの広大な海の地形を全て覚える事は不可能だが、もし見つかっても逃げ切れるように、起動直後に捕捉されても全て蹴散らせるようにあらゆる事態を想定するために、停泊地として決めている場所の周囲20kmの地形データは全て頭に叩き込んである。

 


『肯定します。当艦が保有する全地形データに該当する箇所はありません』


 そして現在、Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)が隠蔽されている場所は見覚えの無い地形だった。

昨日ログインした時、寝る前は確かにラニアケア海に居た。

2200日以上の間、何万人ものプレイヤーの誰にも見つけられなかったような複雑怪奇な地形にもぐりこませてあったのだから間違いない。俺達でなければ船体を破損させるような無茶な地形に全長313メートルのDaoine(ディーナ) Sidhe(シー)をもぐりこませてあった。秘密基地みたいな場所だ。


「全地形データ?それはラニアケア海域だけではなく、シャプレー海域も?ボイドという可能性は?」


『否定します。当艦が過去航行した全ての地形データに該当しません』


「いやいやいや?それはおかしくないか?じゃあどうやってここに来たんだよ?」


『不明のエラー。エラーコードを検索します……特定不明のエラー……再度エラーコードを検索します』


「エラーコードの検索は停止だ。当艦が原因不明の状況に陥っていると言う事がわかっただけで十分だ」


 他に誰かがいればもう少し何かわかったかもしれないが……今Daoine(ディーナ) Sidhe(シー)に居るのは俺だけだ……問題ない、何処かにいるであろうプレイヤーを探し出すだけの簡単な作戦だ。


 アトラクトリアクターの起動もモノポールドライヴの起動もフィアナが単独で制御可能、いけるはずだ。


「ここから北西に9km、艦影は6。艦隊と判断する」


『リアクター起動と同時に撃沈致しますか?』


「敵対行動はとるな。俺はプレイヤーと接触して何がどうなっているのかを聞きたいだけだ。」


『了解しました艦長、作戦計画の立案を提言致します』


「わかった。当該艦のハイパースペクトルは可能か?」


『完了しております。類似データを発見、資料を転送します』


 航行制御AIフィアナか、かなり使えるやつかもしれん。

大海のヘイムダルがここまで進化していたとは思いもよらなかったが、AIとの会話なんて昨日までできなかったけどな。サービス終了間際にとんでもないアプデをぶっこんできやがったな、ワクワクするじゃんこんなの……あぁ……仕事なんかやめてまた大海原を冒険したい……



 なんて事を考えていると、艦長席の手前にある小さなモニターにスペクトラル解析が完了した艦影情報が送られたきたのだが……



「ふむ……解析が失敗しているかもしれない、か?リアクターの起動までは待てない。使い捨ての探査ドローンを2機射出しろ、整備は済んでいるか?」


『肯定します。28秒で射出致します』


「まさかな……そんなはずはない。そんなはずはないがしかし……当該艦の速度は?」


『11ノットです』


「時速約20kmか……いよいよもって怪しいが……まさかな」


『ドローン射出、8秒で海面に出ます』


 それにしてもこの航行制御AI凄くないか?

こんなのが全ての船に実装されればゲームバランスが壊れそうだが、それ以上に基礎を覚える事すらできない初心者が増えそう…ってそうか、サービス終了決まってんだよな。


『当該艦を補足、ライブ映像出ます』



 フィアナの声と同時に発令室の巨大なモニターに映し出された船は、先程艦長席に備え付けてあるモニターに送られてきた類似データと似たような時代錯誤の骨董船だった。



帆船(はんせん)……だと…?」



『肯定します。単縦陣から戦列艦であると推測されます』 



 探査ドローンが映し出した映像には、木造の帆船が映し出されていた。


 それは16世紀から18世紀初頭にヨーロッパ諸国で使用された軍艦………戦列艦だった。


お読みいただきありがとうございます!

誤字脱字報告、感想、ブックマーク、評価、どれも嬉しいです!


嬉しいですが!少し前のあとがきでも書いた通り、ヘイムダルは何か月か前にお試しでかいたSFでまだ全然触りしか書いていないのでそのうち不定期更新になります!許してください!

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