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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

正義マン

作者: 青水

 正義マン。

 彼は全身白尽くめの格好をした不審者である。白いマントをたなびかせて、正義マンは町に降り立つ。その目的は、正義の執行。この場合の正義とは、彼にとっての正義であり、法律などは関係ない。

 正義マンは夜道でタバコのポイ捨てをする男を発見した。


「おい、お前」

「なんだ、このおっさん」

「タバコのポイ捨ては『悪』だぞ。拾え」

「てめえみてえな変質者に言われたくねえよ」

「なんだと、貴様!? この私に対する冒涜は決して許さぬ」


 正義マンは拳をぐっと構える。


「喰らえ、正義の鉄槌」


 メリケンサックが装着された拳が、男の鼻に突き刺さる。彼は鼻血を吹き出しながら倒れた。しかし、一撃程度では正義マンは満足しない。馬乗りになると、彼が動かなくなるまで何度も何度も殴りつけた。


「ふう。これで正義は執行された」


 正義マンの白装束は返り血で真っ赤に染まった。

 正義マンは死体を放置して歩き出す。今度は、血まみれの正義マンを見て、叫び声をあげる会社員と遭遇した。


「おい、人を見て叫ぶなんて失礼だぞ」

「血まみれの男……うわああ、人殺しだあああ!」

「私は断じて人殺しではない。正義の執行の過程で、人を死なせてしまっただけだ」

「やっぱり人殺しじゃないか! 警察……警察に通報しないと……」

「貴様、この私を冤罪で警察に逮捕させるつもりだな!? この極悪人め! 許さぬ! 正義の鉄槌を食らわせてやるっ!」


 正義マンの回し蹴りが、会社員のスマートフォンを叩き落す。


「うわあああっ! 暴力反対!」

「これは暴力ではない! 暴力ではなく――」

「暴力じゃなかったらなんだ!? この犯罪者め!」

「うるさい! 黙れ! 正義の鉄槌だ!」


 正義マンのボディーブローが会社員に突き刺さる。呻き倒れた彼を、正義マンは何度も何度も殴った。


「ふう。これで正義は――」

「動くな。警察だ!」


 正義マンが振り向いた瞬間に、拳銃が発砲された。肩を撃ち抜かれる。


「ぐああああっ! 警察だと!? 馬鹿な。警察がこんなに簡単に拳銃を使うとは思えない」


 しかし、相手は警察の制服を身につけていた。


「貴様、何者だ!」

「くくく……俺は警察マニアの『銃男』だ。日頃、会社勤めでたまった鬱憤を、密輸した拳銃を使って晴らしているのだ。とはいっても、俺は悪人にしか拳銃を使わない。この意味、分かるな?」

「貴様、この私を悪人呼ばわりするか!?」

「自分にとって都合のいい正義を振りかざすお前が、悪人以外の何者であるか? どう考えても悪人で、悪人でしかない」

「貴様、この私を愚弄するか!? 許さぬ。正義を執行してやる!」

「射殺してやる!」


 そして、正義マンと銃男の戦いが始まった。

 拳銃を所持している銃男のほうが有利のように思われたが、二人の距離は三メートル。正義マンの素早い動きに、銃男は翻弄された。

 互角の戦いを繰り広げていると――。


「二人とも動くな!」


 一〇人以上の警察官に包囲されていた。彼らはマニアとかではなく、正真正銘の警察だった。拳銃を油断なく構えている。いつでも発砲できる状態だ。


「現行犯逮捕だ!」

「ぐっ……」

「何っ……」


 二人は呆気なく逮捕された。

 銃男の罪は比較的軽かったが、正義マンは多くの人を殴り殺していたので、懲役二五〇〇年となった。


 彼は刑務所の中でも、『正義を執行』しまくって、独房へと移された。彼は常に、ぶつぶつと譫言を呟いている。


「私は正義マン……私は正義……正義を執行する……正義を執行しなければ……」


 彼にとっての正義が何なのか、人々は知らない。




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