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2度目の体験

そうと決まれば、いてもたってもいられません。

朝ご飯を食べてマルと遊んでから、ユタカ君は秘密基地に向かいました。


秘密基地に着くと、ポケットから玉を取り出して強く握りました。

「鳥になりたい!」

すると前回と同様、玉を握りしめていた手のひらから光がほとばしり、そのまぶしさに、ユタカ君は目をギュっとつむりました。


少ししてそっと目を開けると、そこはいつもの秘密基地ではなく、見知らぬ崖の上にできた巣に立っていました。


―鏡が無いからどんな姿かしっかり見れないな。


周りを見ると、白いぼってりした鳥達があちらこちらで子育てしています。


―僕もこの鳥になってるんだろうな。


その鳥に見覚えがありました。


―朝にテレビで見た鳥だ。

 ええっと名前は…思い出せないや。


足には水かきもついています。


突然背中をツンツンとつつかれました。

振り向くとヒナがいました。


―ねぇ、お父さん、ごはん!ごはんはまだ!?お腹すいたよ!


―わかったわかった。すぐに捕ってくるからね。


ユタカ君は、大きな羽をはばたかせて空に舞い上がりました。

地面がどんどん遠ざかり、先ほどまでいた巣はどんどん小さくなり、やがて見えなくなりました。

はじめは何度もはばたいていましたが、風に乗ると、羽を広げているだけで飛んでいられるようになりました。


―空を飛ぶってこんなに気持ちが良いんだ!


ひとしきり飛ぶと、ヒナに餌を頼まれていたことを思い出しました。


―足に水かきもあったし、魚を捕るってことかな。


ユタカ君は仲間の鳥と一緒に海に行きました。

仲間達の漁で捕り方を勉強し、挑戦します。

海に浮かんで水中の魚を確認し、近づいてきたところを捕まえる。

何度目かの挑戦でやっと魚を捕まえたユタカ君は、ヒナが待つ巣に戻ってきました。


巣に戻るとちょうど、母鳥がヒナに口移しで餌をあげているところでした。

あげそこなった餌が巣に落ちました。

それは藻がついたペットボトルのキャップでした。

母鳥がそのペットボトルの蓋をくわえてもう一度ヒナに食べさせようとしていることに驚いてユタカ君は止めに入りました。


―それは食べさせたらだめだよ!


ユタカ君は、母鳥からキャップを奪い取り、巣の外に捨てました。

母鳥は怒ました。


―何をするの!あんなにおいしそうな食べ物の臭いがするのに、食べ物じゃないわけないじゃない。私も食べたから大丈夫よ。嘘言わないで。


ユタカ君は真っ青になりました。


―食べたの!?今すぐ吐き出して!まる飲みしただけでしょ。

 食べらるわけじゃないよ!プラスチックは食べ物じゃないんだ!

 あんな大きなもの、体の中で詰まっちゃうよ。


ユタカ君のあまりの慌てように、母鳥はヒナに食べさせるのをやめました。


―こんなにおいしそうな藻のにおいさせて、ちょうどいい大きさなのに、食べたらだめだなんてわからないわ。

 プラスチックなんて言われても、私はそんなの知らないもの。


突然ピカッと視界が光に包まれたので、ユタカ君は眩しくて目を閉じました。

少ししてそっと目を開くと、そこは元の秘密基地でした。


フウッと大きなため息をつきました。


飛べたことの楽しさよりもペットボトルのキャップを食べ物だと思っていたことへの驚きとショックの方が大きかったからです。

キャップを食べたと言っていた母鳥は大丈夫だったのかなと心配でしかたありませんでした。


―そうだよね。

 プラスチックは人間が作ったものだって先生が言ってたもんな。

 自然にあるものじゃないから、人間じゃないと食べ物じゃないってわからないよね。


キャップを食べた猫も、犬になった時に出会った猫だけではなく、食べ物だと勘違いしている動物はたくさんいて皆困っているんだろうなと思いをはせ、ユタカ君の心にさらにショックが積もりました。


突然、茂みからガサガサと揺れ、玉をくれたおじいさんが現れました。

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