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やってきた家庭教師1〜英国貴族式のマナー〜

一人ぼっちで朝食をとるヘンリー。

手がかりを探そうとする彼の前に現れたのは、

理国貴族のマナーを教えるという家庭教師の若者だった。

舞台は再び、イギリス、

ロンドン郊外のウォルズリー家の屋敷に戻る。


「おはようございます、ヘンリー様。

昨夜はよくお休みになられましたか?」


朝食に案内された部屋でテーブルに座ると、

執事のレスターさんが話しかけてきた。

「あ、はい。ぐっすり眠れました。」


嘘。昨日は遅くまでノーラと、これからの作戦を

話し合っていて、眠りについたのは明け方近くに

なってからだ。本当はもう少し寝ていたいよ。


会話の間も数人のメイドさんたちが朝食の用意を

してくれている。たくさんの銀食器とフォークや

ナイフ、スプーンが音もなくキレイに並べられていく。

「それはようございました。」


レスターさんは無表情で答える。

「あのう、お祖父ちゃんは朝食はまだなんですか?

それに、他の親戚の人たちは?」

昨日の部屋のテーブルほどではないけれど、

この食堂のテーブルもすごく大きくて長い。

その広いテーブルに座っているのは、ぼく一人だ。


「ハワード様は離れの塔でお一人で取られております。

皆様の前に現れるのは特別な会議や報告の時だけです。

昨日の会議にご出席されていたご親戚の方々も、

それぞれ別に居を構えていらっしゃいます。」


「ああ、そうなんですか。」

朝ごはんを食べながら、お祖父ちゃんと仲良くなって、

ママからのメッセージを伝えると言う作戦の第一歩が

つまずいてしまった。うーん。


「奥方様がお亡くなりになられてからは、特に離れから

お出でになる事はございません。」

「あのう、おばあちゃんが亡くなったのはこちらに来る

船の中で聞きましたが、いったいどうして、そんな急に

亡くなったんですか。」


「持病が悪化されたのです。どうしてそんなことを?」

レスターさんの口調が、ほんの少しだけど強くなったのが

わかる。


「い、いえ、気になったものですから。」

「いずれにせよ、朝食のついでにお話するような話題では

ございません。」

ピシャリ、と扉を閉じられた気がした。


「はい、すいません。」

「お食事がおすみになられたら、しばらくご休憩の後、

家庭教師が参りますので。」


「へ?家庭教師?」

「はい。」


「ヘンリー様にはウォルズリー家の後継者にふさわしい

人物になっていただくため、正しい言葉と、基礎学力、

そして教養を身につけていただくためにと、ハワード様から

家庭教師をつけるようにとのご指示がありましたので。」


ううう、食事が済んだら、ノーラと二人で手分けして

この屋敷を調査して、おばあちゃんが発見したと言う

呪いの儀式や魔法の証拠集めを行おうと思っていたのだが、

またしても作戦の第二歩が潰されてしまった。


「それでは、また後ほど。」


「どうしようノーラ!まずいよねこれって!」

ぼくは部屋の中をウロウロしながらノーラに相談した。

「そうね、まずいわ。魚はもう少しカラッと揚げないと

ダメね。ソースもバターが強すぎる。


それと逆にお肉は火が通り過ぎているわ。

アタシがここを離れてから料理長が変わったのかな?

これじゃあとてもじゃないけど星はあげられないわね。」


ノーラは箱から出て、ぼくが朝食の時にこっそりくすねた

ドーバーソールのフライやローストビーフを、フォークと

ナイフで器用に食べながらずっと文句をつけている。


「わーきみ、そんなこともできるんだ!すごいなーって、

あのね!ぼくの話聞いてる?」

「うるさいわねえもう。ところであんたデザートはないの?」

ナプキンで口を拭きながらノーラは応える。


「あ、ごめん、忘れてた。次はちゃんとって、違うでしょ!」

「いいこと?あんたが家庭教師につかまっている間、

アタシはこの周辺を調べてくるから。

あんたはとりあえずうまくやり過ごしなさい。

家庭教師が帰るのは何時頃?」


「たぶん、夕方には帰ると思うけど。」

「じゃあ、二人で調べるのは夜の間ね。あと、レスターに

お祖父ちゃんの様子も 聞き出しておきなさいよ。

とにかく、時間がないんだから!チンタラしてたら

ひっぱたくわよ!」


「ビンタはもう勘弁してよ。」


コンコン。

「ヘンリー様、家庭教師の方がお見えになられました。」

メイドさんが告げる。

「ほら、もうきちゃった!」

「じゃあ、アタシは行くから!あんたうまくやんなさいよ!」

ノーラは窓のわずかなスキマからするりっと外へ出て行った。


「ヘンリー様?」

「あ、はい、今開けます!」慌ててドアを開けると

そこには長めの金髪をキレイになでつけ、メガネをかけた

青年がにこやかに微笑みながら立っていた。


to be continued

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