表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/49

親族会議4

お祖父ちゃんとルーパスさんの闘いは、熾烈を極めていた。

もの凄いパワーとスピードのルーパスさんの攻撃を

かわしながら、お祖父ちゃんは至近距離から


エネルギーのかたまりを炸裂させていく。

確実にルーパスさんにダメージを与えているはずなのだが、

おかまいなしに攻撃を続けてくる。


「どうしたルーパス、おまえの抱えた怒りや悲しみは

その程度か?」

「ウオオオオオッ!」

怒ったルーパスさんは長いテーブルを片手で

一つずつ掴むと、もの凄い勢いで振り回して投げつけてきた。

「くっ!」何とかかわしたお祖父ちゃんだが、

二つ目のテーブルをかわした際にできたスキを

ルーパスさんは見逃さなかった。


「グオオオオオオオ」

咆哮とともに放たれた衝撃波を不安定な体勢で喰らった

お祖父ちゃんは膝を着いてしまった。

ルーパスさんはもの凄い勢いでお祖父ちゃんめがけて突進し、

エネルギーを集めた拳を大きく振り上げた。


「お祖父ちゃん!」

駆け寄ろうとするぼくより遥かに早く

レスターさんが飛び出して、二人の間に割って入ると、

隠し持った最後のナイフをルーパスさんの両目めがけて

投げつけた。


「グアアアアアア!」

片手で目を押さえ、振り回したもう一方の巨大な拳が

レスターさんを直撃し、何かが砕ける音とともに

レスターさんは壁に叩きつけられた。

「父さん!父さん!」


アーサーさんの絶叫が響き渡る。


「ルーパス!」

お祖父ちゃんがよろよろと立ち上がり、

ルーパスさんを抱きしめた。


「可哀想な弟よ。愛に飢え、求め、道を踏み外した

愚かな弟よ。」

「それでも、おまえはわしの大切な家族だ。

もう、離しはしない、決して。」


暴れるルーパスさんを押さえつけたまま、

お祖父ちゃんが叫んだ。


「ヘンリー!おまえの力で、わしごとルーパスを貫くのだ!」

「そんなこと、できないよ!ぼくには無理だよ!

だって、だって、お祖父ちゃんも死んじゃうじゃないか!

せっかく話せる様になったのに、ぼく嫌だよ!」

「ヘンリー、今こそ決断の時なのだ!

さあ、わしの命を無駄にするな!」


「ぼく、ぼく、だって!お祖父ちゃん!」

「やるんだ、早く!ヘンリー!!」

「うわあああああああああああああああああ!」

ぼくの両手からあふれ出した光は、

まるで巨大な剣の様な形になってお祖父ちゃんと

ルーパスさんの身体を貫いた。


二人の身体は光に包まれ、ルーパスさんは光の中で

浄化されるように、人間に戻ってゆき、

最後は少年の姿になっていった。


ルーパスさんは、お祖父ちゃんに抱かれて、

本当にうれしそうに笑っている。

お祖父ちゃんも愛おしそうに抱きしめていたが、

やがてルーパスさんの姿は光の中で消えていき、

お祖父ちゃんはゆっくりと床に倒れた。


ぼくは、自分のやった事がよくわからず、

両手をじっと見つめていた。

何だか不思議な、時間がもの凄くゆっくりと流れる

様な感覚に襲われていた。、


周りを見渡すと、

壁際では、アーサーさんがレスターさんを抱きしめて

泣き叫んでいる。

反対側では

ノーラが必死に魔女と闘っていて、小さな身体から

沢山の血が流れている。


なんだ、これ。

なんでこんな事になっているんだ?

なんで誰も幸せになってないんだ。

なんだよ、なんなんだよ、一体なんなんだよ!


「あーーー!!!!!!!!!!」

ヘンリーの叫びがホール全体をビリビリと揺らす。

アーサーも、ノーラも、黒い森の魔女さえも

動きを止めてしまっている。


「ヘンリー君!」

「ヘンリー!」


二人の呼びかけにも応えずヘンリーが絶叫を続ける。

「何だあの小憎は。」

ニナがノーラの方から、ヘンリーの方へ歩き出す。

「まだ終わっちゃいないわよ!

あの子の所へは行かせない!」


血まみれの身体でノーラがニナに飛びかかるが、

ニナの影から飛び出した刃で床に串刺しにされる。

「動くな、メス猫。おまえの目の前であの小憎を

なぶり殺しにしてやる。」

「ヘンリー、逃げて!!!」

激痛に息も絶え絶えになりながら、ノーラが叫ぶ。


ニナは絶叫を続けるヘンリーの前に立ち、じっと見つめる。

「ふん、ハワードの孫か。ルーパスも死んで、

ハワードもくたばった。これでウォルズリー家も

おしまいだし、この子もさっさと亡くなった方がー」


そこまで喋っていて、ニナはぎょっとした。

ヘンリーの顔が一瞬、弟のミヒャエルにだぶったのだ。


あの日、あの時、最後に見た苦痛と悲しみに満ちた顔。

「なんでこんな、こんな奴とあの子が重なるの!」


ニナは叫んで、ヘンリーに大量の影を襲いかからせたが、

ヘンリーの叫びの前にすべて一瞬で消し飛ばされた。

しばらくすると叫びが止まり、静寂の中に、

ヘンリーのつぶやきが響く。

「なんでこんな事になるの?

ねえ、みんな仲良くすればいいのに。なんで?

なんで殺しあわなきゃいけないの?


ニナの方にゆっくり歩み寄る。

「あの子はずっと泣いていた。

ここは、どこ?ねえさまはどこって。

おうちが見つからない、かえりたいって

ミヒャエルはずっと泣いているんだよ。」


おまえたち人間が、その名前を口にするなー!」

ニナは激怒し、ヘンリーに向けて影を鋭利な矢の様にして

一気に何千、何万と放つが、ヘンリーの身体に傷ひとつ

つける事はできない。

また一歩、ニナの方に歩み寄る。

「あなたが悲しみに縛られ、人々を憎み続け、

呪い続けるから。あの子だけじゃない、あの村のみんなが

暗闇の中、魂の牢獄に囚われたままなんだ。」


ヘンリーの身体がじょじょに光に包まれてゆく。

足元から光が伸びて、ニナに迫る。

「何だ、何だこの光は!ええい、やめろ、

畜生、こっちに来るな!」


ニナは後ずさりしながら、ヘンリーに向かって、絶叫する。

「まだだ、まだ、復讐は終わっていない!

ミヒャエルも、エミールも、村のみんなも!

罪もないのに無惨に殺された痛みを、苦しみを

忘れる事なんてできはしない!

私が、私までが忘れてしまったら、名もなき彼らの

悲しみを誰が覚えていてくれるというの!」


ヘンリーが光に包まれてそっと手を伸ばし、ニナに触れる。

「ぼくがいるよ。ぼくが覚えている。

あなたが闇から抜け出して自由になっても

ぼくは、あなたたちの受けた悲しみや痛みを

忘れたりはしない。」


光がニナの身体を優しく包んでいく。

「あなたはもう十分苦しんだんだ。

もう自由になって。すべてを忘れて

愛する人たちの元へ帰ってあげてください。」

光の中で、ニナは泣きだした。涙とともに、

瞳から影がゆっくりと消えていく。


「だめよ、わたし、たくさん、たくさん人を殺したの。

 自分の復讐のために、罪もないたくさんの人を殺したのよ。

わたしが憎んだ連中と同じ酷い事をしてしまった。

ドイツではヒトラーに力を与えてしまった。

彼は私がいなくなっても、突き進んでしまうわ。

きっと、たくさんの人が犠牲になってしまう。

憎しみの連鎖は終わらないのよ。」


「大丈夫。後はぼくたち、これから生きていく人間に任せて。」

ニナは小さく震えながら、信じられないといった顔を

している。

「本当に?信じていいの?私、もう行っていいの?


しかし、再びニナの脳裏に、ミヒャエルの悲しみの顔が、

無惨に殺された村人たちの姿が浮かびあがってくる。


表情が険しくなり、瞳に暗い影がじわじわと戻っていく。


「ダメだ、まだ終われない!もっと血を!もっと復讐を!

私はまだいくわけには行かない!」


ヘンリーが、そっとニナの手を握った。

「だいじょうぶ。ぼくが一緒に行くよ。」

ヘンリーの行動に気付いたノーラが叫ぶ。

「ヘンリー、ダメ!行っちゃダメ、戻って!」

ヘンリーとニナの二人のシルエットが、

ゆっくりと光に飲み込まれて行った。

「ダメー!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ