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親族会議2

ぼくも初めて入る、屋敷内で一番広いホールに

続々と親族の人たちが入室していく。


ホールの中には長いテーブルが正面に向かって

二列に置かれており、正面の壇上に当主である

お祖父ちゃんの席が用意されている。

お祖父ちゃんのすぐ後ろに、いつもの様に

レスターさんが控え、会議の進行の役目をする。


ぼくの席はお祖父ちゃんの隣だ。

学校で宿題を忘れた罰として先生のすぐ横に座らされ

恥ずかしかった時を思い出す。


一つの親族から投票権を持つ者が二人、

従者が二人の計四人が一組になっており、

メイドさんたちがそれぞれを決められた席に案内していく。


合計で五十人を超え、初めて会う人もいっぱいで、

誰が誰やらさっぱりわからない。

レスターさんがあらかじめ指示した通りに

ルーパスさんたちの席は二列に並んだテーブルの

向かって右の奥、お祖父ちゃんから一番遠ざけられている。


やがて親族全員が座ったのを確認して、

レスターさんが大きな声で叫ぶ。

「皆様お待たせいたしました。ウォルズリー家当主、

 ハワード・ウォルズリー様のご到着です!」


お祖父ちゃんが、正面の入り口からゆっくりと入って来た。

レスターさんが素早く椅子を引き、お祖父ちゃんが席に着く。

ゆっくりと室内を一べつして、お祖父ちゃんが宣言する。


「これより、ウォルズリー家次期当主に関しての親族会議を始める。」


すべてを決める会議が、始まった。

まず、当主候補の名前がレスターさんによって

読み上げられる。


「本来でしたら、ここに三男のリチャード様、

四男のエドワード様のお名前があるはずですが、

不幸な事にお亡くなりになり候補からは

外させていただきました。

まずは当家の次男であるルーパス様!」


ルーパスさんの顔を見ると何の感情も浮かんでいない。

この人は自分の兄弟を殺した事も、

何とも思っていないんだろうか。


続いて十二親族の中で、継承の権利を持つ者の名前が

読み上げられていき、最後に

「今回特別に、ご息女アン様の長男である、

ヘンリー様も候補に加わられました。」

みんなが一斉に壇上のぼくに注目する。

そのほとんどが「オマエだれだ?」と言っている様に

思えて仕方ない。


ぼくだって何でここにいるのかよくわからない。

でも、一番強烈なのはルーパスさんと魔女の視線だ。

だってどう考えても

「オマエヲコロス」と考えているとしか思えないんだもん。


「皆様、当主としてふさわしいとお考えの方のお名前を

お手元の羊皮紙に書き込んで、廻ってくる審判の箱に

ご投入下さい。皆様のご投票二十四票に、

ご当主様の一票を加えた計二十五票の内、

多数を集められた方を次期ご当主と決定いたします。」


静寂に包まれたホール内に、羽ペンで羊皮紙に

書き込む音だけが響いている。


「それでは、只今より皆様のお手元に審判の箱を

お持ちいたします。」

レスターさんの言葉にあわせて、精巧な装飾が施された

純銀製の箱がうやうやしく運ばれてきて、

全員の席を廻っていく。


やがて、投票が終わり、集められた箱が

壇上のお祖父ちゃんの席の前に置かれた。

お祖父ちゃんは自分の書いた一票を手元に置いたままだ。


レスターさんに聞いたところでは、親族のうち、

ルーパスさんが半数近くを押さえているらしいけど、

どうなるんだろう。見当もつかない。


「それでは、開票いたします!」

箱のふたを開け、中身を読み上げ出そうとして

レスターさんが固まっている。

「こ、これは。」


「どうした、レスター。早くしないか。」

お祖父ちゃんが静かに言う。レスターさんは覚悟を

決めた様に読み上げ始める。

「ルーパス様、一票。」

「続いて、同じくルーパス様」


ぼくはルーパスさんをちらりと見た。当然という顔だ。

ただ黒い森の魔女は無表情だ。

「ヘンリー様、一票!」

ええっ、ぼく?

「続いて、ヘンリー様!」


ルーパスさんは、ほおっと言う驚きを見せたが、

まだまだ余裕の表情だ。

だが、本当の驚きはここからだった。さらに読み上げは続く。

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「ヘンリー様!」「ヘンリー様!」

「以上、ヘンリー様二十二票、ルーパス様二票となりました。」


「現当主であるハワード様、最終の投票をお願いします。」

レスターさんの声が高揚しているのが伝わってくる。


「うむ。」

お祖父ちゃんがゆっくりと皆に見える様に、

自分の投票用紙を持ち上げる。

「ヘンリーに、一票。」

「以上、ヘンリー様が二十三票で

次期ウォルズリー家当主と決定いたしました!」


ホールを埋めた親族から、おおっという大歓声が上がるが、

「ふざけるな!」

その歓声をかき消すかの様にルーパスさんの怒号が

ホール内に響く。


「こんな茶番があるか!!」

ルーパスさんが立ち上がって怒鳴り散らす。

「キサマら。このウォルズリー家の財産を、権力を、名声を!

あんな、あんなどこの馬の骨ともわからないガキに

くれてやるつもりか!」


「よさんか、ルーパス。神聖な親族会議の場だぞ。

わきまえろ。」

お祖父ちゃんがたしなめるが、

ルーパスさんの怒りは収まらない。


「おまえら、わしから多額の報酬を受け取った奴ら!

家族の命をわしに懇願してきた連中!

おまえたちの家族には、すべて血の制裁を与えてやる!」


「ルーパスよ。」

お祖父ちゃんがゆっくりと語り出した。

「おまえが買収、また脅迫して協力を誓わせた者は

すべてわかっておった。」


お祖父ちゃんがレスターさんが調査した書類の入った

茶封筒を持ち上げる。


「賄賂を受け取った者は、罪を認め金品をすべて

福祉施設に寄付をする事で許した。

そして人質にされていた者はすべて救出し、

イギリス政府の保護下に移してある。

ここにいる全員が事の一部始終を把握している。

残念ながらおまえの野望はここまでだ。」


お祖父ちゃんは怒りに震えるルーパスさんをじっと見つめた。

「ふふふ、ふふふふ、ああっはっははははは。

ははははははははははははは!」


笑い声が、ホールの中に響き渡る。黒い森の魔女が

嘲る様に笑っているんだ。


「ほうら、やっぱり人間の言う事など信用できない。

約束など何の意味ももたない。

それが、おまえたちのやり方だ。

ルーパス様、申しましたでしょう?兄弟も、親族も

皆あなたをバカにしている、あなたの味方は私だけだと。


さあ、血の饗宴を始めましょう。」


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