煉獄の炎に焼かれて2
「ンーーーーーーーーー!ンーーーーーーーーーーーー!」
男たちの高笑いが処刑場にひびく。
「おまえの弟なんだって?感心な事に街までおまえを
探しに来ていたそうだ。 魔女にも人間の真似事が
できるのだな。よかったな、涙のご対面というわけだ!」
男がおどけながら、ニナの目の前でミヒャエルの
頭部をぐるぐるとまわす。
槍が突き出したミヒャエルの顔は、一体どれほどの
苦しみを与えたらこうなるのかと思わせるほど
苦痛に歪んでいる。美しい金髪はすべてむしり取られ、
鼻は削がれ、青くキラキラと輝いていた目は
くり抜かれて真っ暗な闇と化している。
おおおおおお!神様、神様、神様!
なぜ、なぜこんな事を許されるのですか!
「そうだ、最後に一ついいことを教えてやろう。
おまえの望みは人間と共存して、静かに平和に
暮らす事だったな?
だがな、おまえの村を突き止め報告してきたのは
おまえが解放した村の人間たちだ!
教会がかけた金目当てでな!
残念な事に、人間は誰もおまえたち魔女と
共存など望んでなかったのさ!」
そんな、そんな、じゃあ私は何のために。
私のせいでこんな!
「さて、それでは観客の皆さんのためにも
そろそろクライマックスと行こうか。」
ニナの足元にみんなの遺体が無造作に積み重ねられ、
油が撒かれていく。
「哀れな魔女よ。みんな仲良く地獄へ行くんだな。
ほーらっ!」
司祭が火のついた薪を放り投げると、ニナの身体は
一気に炎に包まれた。
観衆のウオーッという歓声が、地鳴りのように処刑場を包む。
「火だ!火だ!すべてを清める煉獄の炎だ!」
「魔女に死を!魔女に死を!業火で魔女を焼き尽くせ!」
見物客の狂気じみた興奮のさけび声が処刑場に響き渡る中、
ガシャーン!という音がした。
ニナが鉄製の猿ぐつわを噛み砕いたのだ。
「呪ってやるーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
燃え上がる十字架の上から、ニナは火だるまに
なりながら天を仰いで大絶叫した。
「呪ってやる!おまえたちを呪ってやる!
この国を、すべての人間を!たとえこの身は滅びても
必ず蘇り、おまえたちを永遠に呪ってやる!
神などいない、神などいない!
おまえたちの子々孫々まで永遠の呪いを!」
「な、なんなんだこいつは!おい、こいつを黙らせろ!」
司祭や委員たちがニナの迫力に圧倒され,あわてて叫ぶ。
何本もの槍がニナを突き刺し、さらに油がかけられ
炎はいっそう激しさを増す。
だが、両目が炭化して真っ黒になり、
肉が炊け落ちても叫びは止まらない。
そしてその叫びに合わせるかのようにあっという間に
燃え上がった炎は処刑場を包み込み、魔女裁判に関わった
者や見物客すべてを焼き尽くしながら三日三晩燃え続け、
その間中、ニナの叫びは街中に響き渡った。
ようやく火が鎮火した三日後、中央教会は
ニナの呪いを恐れ、その亡骸を砕き、さらに灰になるまで
焼くと大司教自らが清めた銀の箱に収め
ドイツのどこかに隠した。
それから、長い年月、黒い森の魔女の呪いは封印されていた。
後に世界を破滅へと導く男、アドルフ・ヒトラーによって
復活されるまでは。




