煉獄の炎に焼かれて1
狭い拷問部屋から処刑場へ引きずり出されたニナは、
鉄製の十字架に縛り付けられ、
手足に太い釘を打ち込まれた。口には鉄製の猿ぐつわを
かまされ、喋ることもできない。
周囲には多くの見物客が集まっていたが、
ニナのあまりにも悲惨な姿に声を失った。
だがそれもつかの間,二百年ぶりに行われる
魔女の処刑を前に興奮を隠しきれない。
ニナは、集まった人々の中に、捕まっていた村の人間が
いる事に気づいた。
ああ、よかった、解放されたのね。約束は守られた、
もう心配することはないわ。
ミヒャエル、収穫祭は大好きな人間たちと一緒に、
みんなで楽しめるといいね。
委員会の男たちがニナをじっと見つめ、
哀れみを込めた声で話しかけた。
「哀れな魔女、ニナ・ヒルデガルト。ひとりぼっちで
焼け死ぬ気分はどうだ?」
何をいまさら。私にはもう恐れはない。
「後悔と恐怖で声もでないか。だがな、私たちも
非情ではない、おまえがいくら悪逆非道な魔女であったと
しても、ひとりぼっちで死んでいくのは見るに耐えん。
そこで、おまえに心ばかりのプレゼントを用意した。
受け取ってくれたまえ。」
処刑場の扉が開き。一台、二台、三台と布をかけた
大きな荷車が次々に入ってくる。
あたり一面に、何とも言えない血と肉の香りが立ち込める。
「魔女よ、喜べ。おまえの仲間を連れてきてやったぞ!
ほうら!」
荷車にかかる布を男たちが次々に剥ぎ取っていくと、
荷台には村のみんなが無残な姿で山積みにされている。
処刑場の周囲の見物客がウオオーッと興奮した声を上げる。
「ンーーーーーー!」
何、何なのこれは!うそ、うそ、うそ。なんて、
なんて酷い事を!
十字架の上で絶叫しているのだが、鉄の猿ぐつわで
声が出せず、縛り付けられた身体は、
身もだえする事しかできない。
「どうだ、懐かしいだろう!
安心しろ、村の者、一人残らずおまえと一緒だ!」
荷車が傾けられ、みんなの遺体がそこら中に転がり落ちる。
共に薬草を摘んだ女たち、口うるさい長老、
働き者の男たち、歌が大好きな子供たち。
みんな、みんな、顔を、手足を、ひどく切り刻まれ
嬲り殺しにされたのがわかる。
エミール、エミール!よほど抵抗したのか、
両腕を切り落とされた上に、身体を切り刻まれ
上半身だけの無惨な姿になったエミールが転がり落ちてきた。
あ、ああ、ミヒャエル、あの子はどこ?
「おお、そうだ、忘れておった。おい。」
長い槍を持った男が荷台に槍を突き刺し、
丸い何かをニナの顔の前に差し出した。
それは、切り落とされたミヒャエルの頭部だった。
to be continued




