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黒い森の記憶1

黒い森から来た魔女・ニナは、

はるか昔の、故郷の村を思い出す。

皆が仲良く、平和で暮らしていた静かな村。

ニナがの悲しい過去が明らかになっていく。

同じ頃、ルーパスの屋敷でニナは月明かりが照らす

バルコニーに佇んでいた。


イギリスにもこの屋敷にも何の感情もわかないが、

この屋敷を包む森だけは好きだ。


遥か昔のドイツの黒い森を思い出す。

みんなが暮らしていた、あの美しい森。


私は放浪する旅人。あの故郷に、

みんなの元に帰る事はできない。

ニナは一人、想い出に身を委ねていた。


時は十七世紀。ドイツ、バーデン地方の黒い森、

シュヴァルツヴァルト。


いにしえから魔力を持つ一族がひっそりと暮らす古い森。

彼らはその力で近隣の村にすむ人間たちの病気の治療や

祈祷、収穫の占いなどを行い、永く平和に共存して

暮らしていた。

当時ニナはまだ十七歳になったばかりだったが、

村の中でもずば抜けた魔力と、


聡明な頭脳、そして分け隔てのない優しい性格で

村のリーダー的存在だった。


「陽が傾いてきたわね。夕食のしたくもあるし、

そろそろ帰りましょうか。」

ニナは長い黒髪を束ねるスカーフを外し、共に薬草集めを

する女たちや子供、暇を持て余して参加している

年寄り連中に声をかけた。

「何だ、もう帰るのか?わしはまだまだ働けるぞ!」

村一番のガンコ者で百歳を超える長老の一人である

ヨゼフが不満げな声を漏らす。


「ヨゼフじいさま、陽が短くなってきたから身体が

冷えたら大変よ。腰が痛くなってまたばあさまに

怒られても知らないわよ?」

ニナに笑いながら諭されると、口うるさいヨゼフも

納得してしまう。


「ふうむ、仕方ないのう。それにしても陽が暮れるのが

早くなってきたわい。」

「もうすぐ秋だもの。そろそろ収穫祭の用意も

しなくちゃいけないわね。」


後片付けをしながらおしゃべりを楽しんでいると、

「ニナ姉様!見て、ほら!」

十歳になる弟のミヒャエルが、カゴ一杯になった薬草を

誇らしげに見せにくる。


「まあ、すごいじゃないミヒャエル、がんばったわね。」

抱きしめてミヒャエルの金髪の頭を撫でると、

お陽様の香りがする。

「姉様、今年の収穫祭も人間の村の人たちを呼ぶんでしょ?」

青い目がきらきらと好奇心に輝いている。

「もちろんよ、せっかくのお祭りだから、

みんなでお祝いしなくちゃね。」

「よかった、じゃあこの薬草を分けてあげてもいいよね?」


この子は優しい子に育ってくれている、亡くなった両親も

喜んでくれているだろう。


「そのためにがんばって集めたの?

みんなきっと喜んでくれるわよ。」

「本当?やったあ!お祭り、にぎやかになるといいね!」

普段は静かな村に、たくさんの人間が来て盛り上がるのが

大好きなのだ。


はしゃぐミヒャエルをみてニナだけでなく、

みんなが笑っている。

村へと続く一本道をみんなで手をつなぎ、

おしゃべりしながら帰る。


ニナの大好きなひとときだ。子供たちが村に伝わる

古い歌を歌い、みんなが揃って歌い出した。

村を出た若者が放浪して、再び故郷に帰る歌だ。


『覚えておこう。この黒い森を。

 夏は木陰を作り暑さを遮り、

 冬は雪化粧に彩られるこの森を。

 季節ごとに咲く花々を。

 シチューを彩るたくさんのキノコを。

 おしゃべり好きな小鳥たちのさえずりを。

 いたずら子リスに気取り屋の鹿を。

 わたしの愛するたくさんの人々を。

 いつまでも、覚えておこう。

 だからわたしは旅に出る。

 いつだって、心には森があるから。

 いつだって、帰ってこられるから。

 だからわたしは旅に出る。』


「ニナ!」

誰かの呼ぶ声がする。振り返ると、幼なじみのエミールだ。

肩から下げた籠から、たくさんの魚が見える。


「エミール、あなたも帰るところ?」

「ああ、湖で魚がたくさん捕れたからね。後で持っていくよ。」


ニナの左となりに並んで歩くのが、

小さい頃から変わらないポジションだ。

唯一変わったのは、同じ目線だったのが見上げるほど

エミールの背が伸びた事だ。


ミヒャエルが走ってきて二人の間に割り込んでくる。

「姉様、お魚は焼くの、煮るの?」

「どっちがいいミヒャエル?あなたも一緒に考えて。

お手伝いしながらね。」

「えー!」しかめっ面のミヒャエルに、また、みんなが笑う。


村の入り口が見えてきた。たくさんの村人が手を振り、

出迎えてくれる。

静かで、平和な日々。いつまでも続くと思われていた日常。


だがある日、街へ物々交換に出かけていた村の男が、

血相を変え戻ってきた。

「大変だ!魔女狩りが、魔女狩りが行われるぞ!」


to be continued

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