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ヘンリー、痛烈な洗礼を受ける〜

緊張しながら親族会議に出席したヘンリーだが、親戚達の厳しい洗礼を受ける。

四面楚歌状態の中、助けてくれたのは意外にも?

泣き虫ヘンリーは、この試練を乗り越えれるか!?

ノッポのおじさん(レスターさんと言って、この家に仕える執事だそうだ)に

案内されて通されたのは、この大きな屋敷の中でも、ひときわ広い部屋だった。


部屋の中には大きくて長いテーブルがあり、天井にはなんでこんなに灯りを

つける必要があるのかわからないほどキラキラしたシャンデリアが

吊るされており、部屋の周りの壁には立派な額縁に入った肖像画がたくさん飾られている。

よく見ると肖像画に描かれている人たちが、みんなどこかしら似ているのは

この家のご先祖なんだろうか。


片側の壁には大きな窓があり、広い庭の様子が一望にできる。

ぼくは長いテーブルのいちばん端に座らされた。


テーブルにはたくさんの人ーおじさん、おばさんやぼくより年上の

お兄さんやお姉さんーが座っており、ぼくのことを上から下まで

やたらとジロジロ見て、ヒソヒソ話を交わしている。なんだかこの部屋は

いるだけで息がつまりそうな、なんとも言えない空気が漂っており、イヤな感じだ。


と、その時だ。ドアが開いてレスターさんが入ってきて、大きな声で告げた。

「ウォルズリー家当主、ハワード・ウォルズリー様のご到着です。」

部屋に漂っていたどんよりとした空気が一瞬にしてかき消された。

ゆっくりと部屋に入ってきたのは、さかだった銀髪にモジャモジャの口ひげ、

レスターさんよりもさらに背の高いおじいさんだった。


その人の顔を見た瞬間、ぼくはなぜだか図鑑で見た年老いたライオンを思い出した。

おじいさんは銀色の握り手に複雑な細工が施された黒い杖をつきながら、

テーブルの一番向こう正面にゆっくりと腰掛けた。レスターさんは影のように寄り添っている。

おじいさんはジロリとテーブルを見渡すと、ぼくに話しかけて来た。

「おまえが、アンの息子のヘンリーか?」


その声はそれほど大きいわけではないのに、部屋中にとてもよく響き、

他の人たちが急にビクッとしたのが伝わってきた。

ついでに腹ペコのぼくのお腹にもズシンと響いた。


「は、はい、吉岡、ヘンリー、太郎、です。」ぼくはドギマギしながら答えた。

「ふん!」おじいさんが低く唸った。ものすごく不機嫌そうだ。

「吉岡?太郎?そんな名前は知らん!わしの孫ならヘンリーだ!」

わしの孫?と言うことはこの人がママのお父さん、ぼくのお祖父ちゃんなのか。


「ハワード様、まだ孫と決めつけるのはどうかと思いますよ。」

鼻の下にノリを切って貼り付けたようなチョビヒゲのおじさんが

得意げにひげを触りながら話し出した。


「そうですわ、叔父様!」グルングルンに巻いた金髪を顔の周りに垂らし、

レースのカーテンを二十回ぐらい体に巻きつけたような服を着たおばさんが甲高い声で相槌を打つ。

「こんなことを言ってはなんですが、あのおてんばのアンが、あんな地の果ての

島国で産んだ子供に私たち一族と同じ血が流れてるなんて考えたくもない!」


他のおじさんやおばさんがそれにつられるようにそうだそうだ、とはやし立て、

子供たちはぼくを見ながらクスクス笑っている。

「それにあのなまり!まるでなっちゃあいない。私たちの美しい言葉も、

島国の田舎者には難しいようですなあ。」


別のおじさんがやれやれといった態度で大げさに首を振る。

テーブルを囲む人たちから、ドッと笑いが起きる。

パパとママとぼくは、いつも日本語と英語で会話をしていた。


そりゃあ、英語しか喋ってこなかったあんたたちに比べたら

ぼくの英語なんて下手くそかもしれないけど、


でも、でも。言い返したいけど言葉がのどの奥でぎゅうっと詰まって出てこない。

みんなのニヤニヤしている顔を見ているとこの部屋で自分が一人ぼっちなのを感じ、

涙が溢れそうになってきた。


と、その時だ。ポケットの中から「カチリ」と音がしたと思うと

ぼくの口から、ぼくではない誰かがしゃべりだした。


『お集まりの紳士、淑女の皆さん。』

『僕は祖母である今は亡きメアリー・ウォルズリーより手紙を受け取り、

1ヶ月以上の航海を経てここ、イギリスはロンドンのウォルズリー家に到着いたしました。』

全員が耳を傾けざるを得ない、すごいはっきりした口調だ。

『然るにあなたたちは、血の繋がった一族の到着を喜ぶでもなく、

その航海の労をねぎらうでもなく、その口から聞くに耐えない侮蔑の言葉を投げつけてくる。』

『それがかつてアーサー王に仕え、偉大な魔術師と呼ばれた

当家の末裔としてふさわしいふるまいですか?恥を知りなさい!』


話し終えた瞬間、ぼくはどうしようとまわりを見渡した。みんな怒り出すと

思ったんだけど、あっけにとられ押し黙ってしまってる。ぼくも気まずくてうつむいてしまった。


パチ、パチ、パチと音がして顔を上げるとお祖父ちゃんだけがこちらを見つめ拍手している。

「素晴らしい。聡明で、負けん気が強くて弁がたつ。アンの小さい頃に瓜ふたつだ。」

お祖父ちゃんは立ち上がると、この屋敷中に轟き渡るほどの声で宣言した。

「今日からお前をこのウォルズリー家の新しい家族として正式に認め

後継者の正当な候補者に加える!よいな、みなの者!」


その後、お祖父ちゃんは執事のレスターさんに何かを二言、三言囁くと

杖をつきながら部屋を出て行った。


ええええええ~!ぼくの家族は日本に住んでるパパとママと妹と、

白猫のノーラだけだよ!それより、みんなの目が怖い!

もうやだ本当に日本に帰りたい!


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