ニナとナチ党2
ヘンリーとノーラは、ルーパスの背後にいる
ニナと、ドイツ・ナチ党の関係について考える。
国際問題だけに迂闊に手を出せないジレンマの中、
ヘンリーはアーサーから一つの提案を受ける。
ノーラの言葉を聞いて、ぼくはゾッとした。
「ダメ、ダメだよそんなこと!なんとしても止めなきゃ!」
「そうだ、なんとしても止めなきゃいけないんだ。
ただ、現在のところ何も証拠がない。ドイツが裏で
糸を引いているのか、ルーパス自身の考えなのか。
また、彼らがこれから何をしようとしているのか。
あくまで我々の推測でしかない。」
「ルーパスさんに直接会って話すことって
できないんですか?ぼく、会ってみたいです。」
「今のあんたには無理よ。」
ノーラが突き放すように言う。
「昨日のヘビですら逃げ回るのがやっとだったのに、
向こうが本気だったらあんたとっくに殺されているわよ。
とにかく今はニナとナチ党の関係を立証する
証拠集めが大事よ。
「それでしたら、現在ルーパス様のお屋敷に、
私と同期でウォルズリー家にご奉公に入ったものがおります。
その者に協力を頼んでみます。」
レスターさんが初めて話に参加してきた。
「大丈夫?誰?」
ノーラの問いにヘンリーさんが応える・
「ノーラ様もご存知の、メリッサでございます。」
「あのう、レスターさん。」
とりあえずレスターさんの提案でメリッサという
古くからいるメイドさんを呼んで話を聞くことに決まり、
夜も遅いので解散となった後で、ぼくは話しかけた。
「お祖父ちゃんは、どうしているんですか?」
「今朝ほど申し上げた通りでございます。
離れの塔でお一人でお仕事をされております。」
「それはわかっているんですけど、ルーパスさんは
弟じゃないですか。お祖父ちゃんが直接会って話をすれば、
また状況も変わってくるんじゃないんですか?」
「ヘンリー様。ご当主様にはご当主様のお考えが
ございます。」
「お考えってなんですか?今のままだと、ルーパスさんが
この家を継いで、みんなが不幸になるかもしれないのに、
なんで何もせず、動かないんですか?」
ちょっと感情的になったのは、ノーラに聞いた
魔女狩りみたいなことが現代で起こるかもしれないって、
想像したためだ。罪もない人がそんな目にあうなんて
おかしいよ。
「ヘンリー様。私にハワード様のお考えはわかりません。
私の仕事はハワード様にお仕えし、望まれることの
お手伝いをするだけです。失礼いたします。」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ぼくの呼びかけを無視して、レスターさんは立ち去って
しまった。
「よう、ヘンリー君。」
アーサーさんがぼくの肩をポンッと叩いた。
「どうしたんだい?君らしくもない、大きな声を出して。」
「いえ、別に。もう、いいんです。」
ノーラも、レスターさんも、
誰もぼくの話を聞いてくれない。
じゃあなんでこんな所まで連れてきたんだ!
なんだよもう!
「ヘンリー君さあ、悪いけど明日、僕に付き合って
くれないかい?」
「え、どこへですか?」
「メリッサってメイドがくるのは早くて夕方だろうから、
それまでロンドン市内の観光にでも出かけようよ。
君、まだどこにも出かけていないだろ?」
「ええ、まあ。でもいいのかなあ、こんな時に。」
「まあ息抜きも必要さ。じゃあ、明日の朝迎えにくるから!」
二人が会話を交わしているのを遠くからそっと見守る
レスターに、ノーラが話しかけた。
「ねえ、レスター。あんた、何か隠してるでしょう?」
「ノーラ様、隠し事なぞ何もございません。」
「いくら主人だと言っても、ハワードにそこまで付き合う
義理はないのよ?」
「何のことだかわかりませんな。失礼いたします。」
「ほんっとガキの頃から変わらず意地っ張りよねえ。」
ノーラはため息をついた。




