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蛇の眼を狙うもの1〜ヘンリー、大嫌いなヘビに囲まれる〜

ルーパスの後ろ盾を知り、これからの作戦を考える

ヘンリーと白猫ノーラ。

そんな彼らを襲ったのは、ヘンリーが大の苦手にしている

アレだった。

「ナチ党?あの、ドイツのちょび髭オヤジのあのナチ党!?」

ノーラはぼくが夕食の時に持ち出したオマール海老の

パイ包焼きを口に運びながら叫んだ。


「うん、アーサーさんって言う、スパイの人が言ってたよ。」

パクッ。モグモグモグ。オマールの濃厚な旨みを堪能する

かの様に眼を閉じてうっとりしている。朝食とは違い、

味にうるさいノーラも、これは満足した様だ。


「納得がいったわ。」

「でしょ、そのオマール海老美味しいよね!」

「違うわよ、バカね!」

ビタン!速い!今日はノーモーションだ。痛いよう。

「おばあちゃんからの手紙にあった様に、この城の周辺で

呪いの儀式を行った形跡は発見できたんだけど、

どうもアタシたちと違うのよね。」


ノーラが説明を続ける。

「なんと言うか、使用している材料にしても、手順にしても。

だからイギリスじゃなく、よその国の魔法使いが出張って

きてるとは踏んでたのよ。しかし、ドイツってマジ?

中世ならともかく、現在のあの国は大した魔法使いなんて

ーああ、まさか!」


突然、ノーラが何かを思いついたかの様に叫んだ。

「どうしたの、ノーラ?」

「誰かがあの黒い森の魔女を復活させたわけ?」

「黒い森の魔女?どう言うこと?」

「あんた、中世ヨーロッパで魔女狩りが盛んに行われたのは

知ってる?」

「いや、あんまり詳しくは。」

「魔女ってのはその昔は人里離れた森に住んで、

自然の中で平和に暮らしていたのよ。


そして生まれ持った能力で占いやヒーリング、病気の治療

など一般人にとって医者の様な役割も果たしてきたわけ。

ところが中世になって教会の力が強くなってくると、

 そう言う他人より優れた力や考え方を持つものを

異端者として徹底的に迫害する様になるのよ。」


「イギリスでもあったんだよね?うちのご先祖は

大丈夫だったの?」


「もちろんよ。ウォルズリー家が貴族でありながら、

現在に至るまで魔法が使える一族としてなぜ

認められているかというとね、他国との軍事衝突を

自分たちの持つ私設軍隊だけで追い払ったり、

政府が財政難の時には多額の寄付をしたりと、

 長年英国政府に対して多大な貢献をしてきたからなの。


だから政府や王室はもちろん魔女狩りを熱心に行ってきた

教会も迂闊に手が出せない存在として存在しているの。」


「へー、すごいんだねえ。」

ママが育ったこの家は、どうやらぼくが考えていた以上の

すごいお家みたいだ。


「でも、他の国の魔法使いー魔女たちはそんな訳には

いかない。ドイツではバーデン地方一帯の森林地帯を

ドイツ語でシュヴァルツヴァルト、「黒い森」って

呼んでたんだけどね。昔から魔女が暮らしていた

場所だったんだけど、

教会がそれらの魔女たちを片っ端から狩り集め、

死刑にするって言いだしたのよ。」

「そんな、むちゃくちゃな話じゃないか。」


「そう、理屈も糞もない無茶苦茶な話。

教会は自分たちの権力を誇示するために行ったのよ。

でも当時、黒い森に住む魔女の中に、

とてつもない魔力を持つリーダー格の魔女がいたの。


彼女は平和主義者で、教会の迫害から逃れるために

一族が住む森の奥深くの村を魔法で村ごと

隠してしまったのよ。」


「村ごと?家も生活している人もそのまま見えなくする

事なんてできるの?」

「それをやれたのが、彼女の凄いところなの。

恐らく中世の、いえヨーロッパでも指折りの魔法使い

だったと言われているわ。焦ったのは教会よ。


いくら探しても魔女を見つけられない事で教会への

信頼度が下がるのを恐れて、近隣の村人を魔女だと偽って

大量に捕らえ、死刑にすると宣言しちゃったのよ。」

「ええ、だってその人達は関係ないんでしょ?」


「そうよ。まったく無関係な善良なる人々。その事を

知った彼女は、一般の人を巻き込む訳にはいかないからと、

自分だけが名乗り出て死刑になる代わりに、村の人たちと

自分の一族の恩赦を求めたの。」


「自分を犠牲に?」

ぼくはもし、自分の命で他人が助かるなら、

ぼくならどうするだろうと考えた。


「そう。教会は彼女を捕まえ、自分の仲間や村を隠した

魔法の秘密を教えるように彼女に迫った。


だってもしその魔法を手に入れる事ができたら、

他国への侵略なんて朝飯前よ。

見えない軍隊が突然現れ、他国の首都を制圧する

事だってできるんだから。


でも、彼女はそれを拒んだ。火、水、鋭利な刃物。

ありとあらゆる拷問にかけられたけど、

彼女はその秘密を口にはしなかった。


そして処刑の日、ボロボロにされた黒い森の魔女は

十字架に鎖で幾重にも縛られ、一般市民が集まった

刑場へ引きずり出された。その時彼女が目にしたのは、

焼かれ、切り刻まれた自分の一族の無残な姿。


自分が助けたはずの村人たちが、善良なる人々が、

教会のかけた懸賞金欲しさに彼女の一族を

教会に売り渡したのよ。」


「自分を助けてくれた人たちを?」

聞いているだけで胸が悪くなってくる。

「彼女は生きたまま火あぶりにされたんだけど、

炎の中で三日三晩叫び続けたそうよ。


『この国を呪う、すべての人間を呪う、たとえこの身は

滅びても必ず蘇り、おまえたちを呪う』ってね。」

一気に話し終えると、ノーラはふうっとため息をついた。


「彼女の遺体は刻まれ、再度灰になるまで焼かれた後、

教会がドイツのどこかに封印したはずなんだけど、

それがなんでまた。」


「アーサーさんが言うにはヒトラーはオカルト主義に

取り憑かれているようで、人間を超えた力を

手に入れるために、世界各地の遺跡や封印された

霊廟を探しまくっているって。


さっき言ってたその魔法って、もし手に入れる事ができれば、

現代でもよその國を侵略するのにすごい強力な武器に

なるんじゃないの?」


「と言うことはヒトラーが魔女を見つけ出して復活させた

可能性が高い訳ね。」

「ナチ党が一気に躍進し出したのもそのおかげじゃ

ないかって。」


「もしそのルーパスと一緒にいた女がその黒い森の魔女だと

したら大変よ。あたしたちも覚悟を決めないと」


その時、部屋のどこかでカタンという音がした。

ヘンリーとノーラが振り向くと、

部屋の隅からシュルシュルシュルと言う音とともに、

大量のヘビが這い出てきた。


「キャー!へ、ヘビ!キャー!」

ヘンリーが飛び上がって叫んだ。


「うるさい!あんたちょっと落ち着きなさい!

ひっぱたくわよ!」


ボト、ボト、ボト。今度は天井から大量のヘビが

ヘンリーの頭の上に降り注いできた。


「もうダメー!ヘビ嫌いいいいい!」

「こんなもんはねえ、こうよ!」


ノーラが空中高くジャンプしたかと思うと、

ヘビの集まっている真ん中へ跳び、着地と同時に

呪文を詠唱すると、あれだけ大量にいたヘビが

一瞬にして消えてしまった。


「え、え、どう言うこと?ヘビどこ行っちゃったの?」

「幻影よ、一番初歩の魔法じゃないの、あんたにも

教えたわよ!」

「あれ、そうだった?」


たぶん、船旅の途中、船酔いでゲロゲロの時に

教わった気がする。


to be continued

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