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泣き虫少年、ロンドンに到着する

第二次世界大戦前のイギリス、英国貴族のウォルズリー家の

当主ハワードの元を、日本から孫であるヘンリーが訪れる。

これが謎の魔法使いやナチス・ドイツを巻き込んだ

波乱の物語の幕開けとなるのであった。

「なんだかとんでもないところに来ちゃったみたいだぞ。」

まるでお城のような、ものすごく大きなお屋敷の前で、

ぼくはパパに買ってもらったお気入りのハンチングを

ぐっとかぶり直し、ゴクリとつばを飲み込んだ。


ぼくの名前は吉岡ヘンリー太郎。十歳になったばかりだ。

生まれ育った日本を離れ、ひと月以上に渡る長い船旅のすえ、

ここイギリスはサウサンプトンの港に

たどり着いたのは今日の朝のことだ。


港で出迎えてくれたおじさんに連れられ、鉄道を乗り継ぎ、

馬車に揺られてようやく目的地に着いた頃には陽が沈みかけていた。

馬車から降ろされたぼくの目の前には、

昔、ママに見せてもらった写真に写っていた立派なお屋敷がある。


周りは高い塀で囲まれ、大きな門の向こうには広大な庭園が広がっている。

夕暮れ時、あたりは闇にじわじわと飲み込まれていく。ぼくの生まれた町なら、

こんな時間まで表にいると人さらいにさらわれると怒られるところだ。


「ここがママの生まれたお家か。」

昔パパから、ママの実家はイギリスの名門貴族で、日本人であるパパは

付き合う事も許してもらえなくて大変だったと聞いたけど、

こんなスゴいお屋敷ならそりゃそうだろうと思う。

結果的にママは実家から勘当されてパパと

日本へ駆け落ちする事になるわけだけど。


玄関の大きな扉が開かれ足を踏み入れると、だだっ広いホールには

天井から巨大なシャンデリアがぶら下がり、左右に分かれた階段が

美しいカーブを描いて二階へと繋がっている。

ずらりと揃ったたくさんのメイドさんが

ぼくに向かっていっせいにお辞儀をした。


「おかえりなさいませ、ヘンリー様。」

こんなにいっぺんに言われると、なんだか怖い。

と言うか、ぼく初めてなんですけど。

「あ、はい。あの初めましてえ。」

数人のメイドさんが駆け寄ってきてぼくのスーツケースを取り上げ、

夏用のコートとハンチングをむしり取っていく。


「いや、あの、自分で持ちます。あの、ジャケットは大丈夫です、はい。」

ジタバタしているとノッポのおじさんがやってきて

「どうぞ、こちらへ。もうウォルズリー家ご親族一同、随分とお待ちです。」

船と列車と馬車に言ってよ!と思うけど

「はい、あの、すいません。」としか言えない。


ここまで無理して履いてきた、慣れない革靴のせいで痛い

つま先をモソモソ動かしながら、

ぼくはママとした約束を思い出していた。お祖父ちゃんを守るんだ、

これは偉大な魔法使いの血を引くぼくにしかできない

大切なことなんだって。


でも…ポケットの中の組み木細工の箱をギュッと握りしめながら

ぼくは途方にくれた。

「そんなの絶対無理だよおお」

パパとママと、妹の顔が浮かんできた。なんだかお腹も痛くなってきた。

ごめんなさい、ママ。ぼくもうお家に帰りたいです。


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