え?魔王降臨しましたか!
今日はエリオスと二人でお出掛けする日です。
エリオスのお願いは私と出掛ける事らしいけど、
しかーし!これはあれだわ!今日エリオスは幼いヒロインと出会うはずよ!物語のキーポイントよ!
ゲームの話ではこうだ。
エリオス王子がお忍びで城下町へ出掛けていると、可愛らしい女の子、ヒロインと出会う。同い年の女の子なのに、頑張って働いて、笑顔が素敵な名前は知らないが王子は少しの時間過ごし、美しき思い出になる。
そして、数年後学園で二人は出会い恋に落ちる。
…素敵だわ。そしてちゃっちゃっと、二人は好きになってもらい、私は姉様と海外旅行へ行きたいなあー。
「…ア?マリア?聞いてる?」
心配そうにこちらを見つめる、エリオス。
手を繋ぎ、一緒に町を歩いていてわかったことがある。
んーキラキラし過ぎて、王子とはわからなくても、やっぱりイケメン部類だから周りの女の子達は目がハートですな。平民を装っているが、目立ってしょうがない。
一応私は眼鏡かけておさげの格好をしてます!
こういう楽なワンピースが一番だわ。
「あ、ここだよ、新しくできたチョコレート屋さん」
「チョコ!?ほほーこれは行かないと!」
エリオスと私は新しいお店へ入ろうとしたら、路地裏には働いている子供などもみかける。
ピタッと止まる私。
前世だった日本もスッゴい昔は、小さい子供も働いていたと聞いた事あるけど、私のときは、きちんと義務教育があったなあ…もし、私令嬢として転生されなかったから、私も働いていたのかな。バイト、したことなかったしなあ。
立ち止まる私にエリオスは首を傾げながら
「彼らを見てどうしたの?」
「…んー小さいときから働くのは、立派、凄い事かもしれないけれどさあ、義務教育は必要だわね」
「ぎむ…?何それ」
「あまり、難しいこといえないけど、誰にだって学ぶ環境は必要だよねーそういうの王様は作ってくれると、将来お勉強できるこ沢山できていい事だと思うよ」
「ふふっ、よくいうよ。マリアは勉強嫌いだよね」
「いや、そうだけどさ。うーん、私達は贅沢だよ。こうやってチョコ食べにきてるんだもん。学びたい子も学べれる環境じゃない。あと遊びたりないでしょ!子供は遊ぶのが仕事よ!これ一番重要!」
「なんか話ズレた気がするけど、ふーん…成る程ね。誰でも学べれる環境、ね」
エリオスは何やら、少し考えながら私達はお店を入っていった。
沢山のチョコがいっぱい並んでいて、姉様にお土産だ!と色々迷っていると、横でエリオスは笑っている。
「エリオスもチョコどれがよいか迷ってるの?」
「いや、あまりにも可愛いらしくて」
は?チョコが?大丈夫かな。エリオス…
まあ確かに、動物チョコレートとかあって可愛いわね。よし!動物チョコレートセットをお土産に買おう!
私とエリオスはミルクティーとチョコレートケーキを一緒に食べてお店を出た。
またあのお店行きたいわね!姉様と一緒に!
と、はしゃいだのは覚えてます。えぇ、はい。スキップしてルンルンと歩いて、エリオスがいると思いきや、いませんでした。
「エリオスが迷子になったわ…!いや、これはヒロインちゃんと出会うイベントだし!」
ということで、私はこの町を堪能しようと見て歩いていた。珍しい果物や可愛い服が売られていたり、町の中心部であるこの市場は本当に賑やかだわ。
フと人だかりが目にとまり、何だろうと見てみると
上半身裸でズボンだけ履いていた、黒髪で黒眼の男の子がぶるぶる震えて俯いていた。そんな男の子の隣に太ったピエロ姿の男が嫌らしい声で
「さあさあさあ!皆さん!この世のと思えない、黒髪と黒眼の闇の落とし子だ!珍しいだろう!珍しいだろう!奴隷にするのにはもってけだ!さあどうだ!安いよ!」
……黒髪で黒眼の男なんてただ一人だけだ。
攻略対象者三人目。クロエラ・キーラだ。通称クロ。
この世界で、彼は変な貴族に拾われ養子とされるけど完全に奴隷扱いをされ、親の愛情を知らないまま育ち冷酷な男になる。クロエラルートは、確か娼婦館に飛ばされて男達に弄ばれ、悪役令嬢マリエは自殺…エリオス王子の次に怖!と思ったキャラだわ。ヤンデレだろ。
うん、でも今目の前の彼は、ただ悲しんでる。怖がっている。助けを求めている。
「まあ、嫌だわ、気味がわるいわ…」
「黒髪なんて不吉な…」
「珍しいから、少し大人になればそこそこ顔がよいではないか?熟女達の相手をさせるのもよいのではないか?」
私の隣で貴族らしき、痩せこけた男性が怖い事を言っていた。
おいおいおい!あんたか?!変な貴族に拾われて、虐待していたのは!?
私は息を大きく吸った。元日本人の姿を馬鹿にされた気分だわ!
「私はその髪と目は綺麗だと思うよ!!」
周りはシーンとなり、一気に私のほうへ皆集中してみる。私は攻略対象者であるクロの方へかけ寄り、手首を縛られていた縄をほどいてあげた。
クロは目をぱちくりして、私を見ていた。
「おいおい、お嬢ちゃあーん!それは売り物だよ?おじちゃん、今仕事してんの。わかる?邪魔しないでくれるかなあー?」
クロを売っていた、ピエロおじさんは私に優しく声をかけて、クロを引きずり、また続けて商売をしようとしていた。
「ちょっと!貴方のほうが醜いブタよね!この子のほうがよっぽど綺麗!ちょっとだけ皆んなと髪色違うだけで不気味とか意味わからない!おじさんのほうが気持ち悪いわよ!」
周りにいた人達はクスクス笑いだし、顔を真っ赤にした太ったピエロおじさんは
「このっ!!クソガキが!!!」
ビタン!!!!!
「あっ…!」
顔を真っ青にしたクロが私の方へかけよる。
思いっきり、私はビンタされたのだ。
「だっ、大丈夫ですか?!痛い?」
心配するクロに、周りの大人達もざわざわし始めた。
痛い…まだ私子供だぞ?頭叩くにしろ、頰を叩くにしろさ、歯が一本コロコロ落ちたわ。
「グスッ…い、痛い。うぅう…」
痛いです。涙が沢山でました。
「ガッ!ガキが悪いんだ!」
「ふえ…うぅ、うああああああん!」
私は泣いた。久しぶりに泣いた!痛いんだもの!
そんな時、また周りはざわざわし始めた。
後ろから悪寒がした。誰もが青ざめた顔をしだす。魔王と呼ぶべきか、そんなオーラを出す6歳のこの国の王子エリオスが笑顔でそこに立っていた。