え?私が婚約者になったのかい!?
ゲームのメインヒーローであり、ヒロインを虐めた婚約者を断罪する鬼畜で腹黒王子エリオス。断罪だけでなく、家も周り全て関わっていた者は徹底的に排除する。
そして王子エリオスの護衛でもあり、数少ない友人の一人のスクアーロ。将来は騎士団長となるのが夢で親しみやすく明るいが、スクアーロルートの場合、この子に首をはねられるんだ。
「んー…」
私は考えた。今闘うか、逃げるか。いや、逃げたらお姉様は婚約者にさせられちゃう。それはだけは阻止しないといけないもの。
「エリオス王子、紅茶の準備ができましたわ。まずは我が家自慢のローズティーを飲んでくださいませ」
私が黙って難しい顔をしていたためか、お姉様は話題を振りエリオス王子達を部屋へ案内する。私はちょこちょこ、三人についていくとエリオス王子は私の顔を見て、ただ微笑んでいた。へんなやつ…
部屋にはローズティーとクッキーが用意されていた。
「さて、私自らここへ来たのには理由があります」
父と母は緊張しながら
「まさか、あの、馬鹿国王…いや、国王は我が娘をエリオス王子の婚約者にと?」
父よ。今貴方、国王のこと馬鹿国王って言ってたわね。
「ふふ、やはり、マリエをと考えているのでしょうか」
母は嬉しそうに王子に尋ねているけど、私は王子を睨んだよ!おうおう!許さんぞ!私はぁああ!
エリオス王子の隣にいるスクアーロは笑いを堪えてるけど、なんか笑うとこあるか?!
ハッ!!!
てか、お姉様は!?やっぱり喜んでるのかな!?
恐る恐る隣にいるお姉様を見ると…涼しい顔をしているようだけど、唇をぎゅっと我慢して手が震えていた。
え?喜んでないの?あれ?初恋はこの腹黒王子だよね?あーなんか、我慢していつものように振る舞おうとしてるお姉様は可愛いすぎます!
エリオス王子は爽やかな笑顔で両親と姉に告げた。
「僕の婚約者として、マリア嬢が良いと思い今日伺いました」
家族全員、口あんぐり。一番有力な婚約者候補は間違いなくマリエお姉様だった。はず。
「な、なんで!??」
私はエリオス王子の肩を掴み、なんでよ!と騒いだ。
「たしかに昨日まではマリエ嬢が無難だと思っていたよ。同い年だし、令嬢としての立ち振る舞いも完璧だから君のお姉さんを婚約者にしようとしたけど、マリア、君の言う事を聞いたじゃないか。
お姉様を婚約者にしないで欲しいというお願いをね」
「あ、そっか。腹黒王子の婚約者にならずにすんだのね!やった!お姉様!これでお姉様はずっと私のお姉様だわ!」
キャホー!と喜んでると、
「マリア…あの、貴女はよいの?」
「え?何が?」
「マリア、貴女がエリオス王子の婚約者として王子自ら指名されているわよ」
「……あっ」
あれ?じゃあ私が王子の婚約者ってことなわけ?あれ?んな設定ない。婚約者はマリエお姉様になるはず。それでヒロインに嫉妬して、断罪されて…
ん?
王子は私の元へ寄り
「私の婚約者になれば昨日食べたチョコレートケーキが好きなだけ食べられるよ」
「チョコ…」
あのイチジクチョコレートケーキには勝てないわ。だって美味しかったもの!そう両親達に話たら、なんだろう?残念な目で見られてしまった。
マリエお姉様だけは
「そんな理由で王子の婚約を承諾とはダメよ」と怒られたが、やっぱ可愛いわ。我が姉は。
「プハッ!おい、チョコで釣られた令嬢って見たことないや!」
「うん、何だろう。アホで可愛いね」
スクアーロ様は大笑いしていたけど、王子。今アホと言ったよね?アホって私か!?
そうね。まずは、私王子にきちんと言わなければならないわね。どちらが上なのか!!
「王子っ!」
「うん?何?」
「チョコレートケーキ以外もあるかな!?」
くっ…エリオス王子、こいつは手強いわ。私の好きなケーキを沢山用意してくるんだもの。
私は姉の代わりに悪役令嬢になってやろうじゃないの!でもその前にクッキーを食ーべよっと!
「変な子…退屈しなそうだな」
そうエリオス王子はマリアを見つめて呟いた。