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12/30

え?これは秘技!納豆爆弾だよ!!

さて学園のお昼は給食というものはない。小学部なのに、フレンチレストラン並の学食がある。ここは中等部、高等部のお兄さんお姉さん方も食べにくるから、とにかく広いし迷うし何よりフレントーストが美味しいわね。でもね、元日本人の私はやはり味噌汁と米が食べたいなあ。


「最近小さな子どもを狙っている悪い奴らがいるって父さんが昨日騎士団の奴らと話してんの聞いたんだよな!」


赤髪で将来は騎士団の隊長になるのが夢だと語るスクアーロ。

最近町では物騒だと噂になっている。

人身売買…ちらっと紅茶を淹れてくれてるクロの様子を見た。クロだってそんな目にあった側だよね、あまり良い気分でないし話を聞きたくないよなあ。


クロは私の視線に気がついたのか、ニコッと微笑んで私の事は気にしないでくださいとだけ言い紅茶やお菓子を用意してくれている。


クロよ、完全にゲームとは違うキャラになったなあ。いい子に育ちつつ良かった良かった!


この噂の子ども誘拐事件は確かスクアーロルートのキーポイントだったはず!

人身売買を摘発する父の後を無謀にもスクアーロは追いかけて、自分も父のように犯人をやっつけようとするけど父親に叱られてしまう。落ち込んだスクアーロは一人森へ散策している途中で、ヒロインと出会う。

彼女の純粋で可愛らしい瞳にスクアーロは守ってあげたくなる気持ちに…

そして高等学園で二人は知り合いお互いあの時の二人だとおもわず最初は口喧嘩ばかりの毎日だったが、少しずつ惹かれる甘酸っぱい青春ストーリーだったわ。

悪役令嬢マリエは平民のヒロインをいじめてたりしたから、スクアーロに首はねられるんだよね、ま!今はマリエ姉様とは大丈夫そうだよね!万が一私が姉様を守る!!

しっかし子どもを誘拐なんて恐ろしいわー…



「小さな子どもって、ハッ!姉様姉様!絶対!ぜーったい一人で勝手な行動はダメだよ!?お外にでたら姉様の可愛らしさに気づいた変態に誘拐される!」


「…同じ言葉をそっくりそのまま返すわよ。マリア」





放課後になり私は一緒に帰る姉様達を待っていた。

その時見慣れた青い髪色の男の子、レオ君だ。


「レーオ君!レオ君も帰り?」


「わっ!?君さ後ろから声かけるのやめてくれる?

それに僕は今から図書室にいくんだよ」



「来週クラス替えだね!同じクラスだといーなあ」


レオ君はため息だしながら

「マリア嬢少しは勉強だけでなくマナーも学ぶべきだよ?人として」


「うんうん!そしたらさ一緒にお勉強しようね!」


さっきまでプリプリしてたレオ君は急に赤くなり

「ま、まあ教えてあげるよ。君勉強不得意そだし…じゃあね!」


「バイバーイ!」


レオ君とさよならしたあと、私は外靴に履き替えて

フと庭先の方へ目を向けると、コソコソとスクアーロは自分の小さな剣を持ち何処か一人でいこうとしていた。


「ははーん」


お父さんの仕事についていこうとしているんだね、そして怒られるんだ。


「おーい、スクアーロー!」


「わっ!そんな大きな声で呼ぶなよ!エリオス達にバレるだろ」


慌ててるスクアーロのポケットからヒラリと一枚の写真が落ちる。その写真をみたら何処かで見たことのあるおじさん…


「この人…」


「その二人が子ども達を誘拐してる犯人らしいんだよ!名前は確か…ピエロ軍団!」


うへ、何そのダサい名前は。でもこの人は…


「クロを売ろうとしていたピエロの太ったおじさんだ」


そして私の頰を叩いたやつ。

それを教えるとスクアーロはプルプルと怒りだし、

「コイツがマリアを叩いたやつだったのか!?ゆるせねえー!」


「キーラ家…」


「ん?何が?」


「このピエロの隣に写ってるのはキーラ家」


「キーラ家って、え、このおっさんが?」


攻略対象であるクロエラ・キーラの義理の父となるはずだったキーラ家当主ダイラ・キーラ。このピエロ軍団とグルになり人身売買に手を貸していたらしいとこの名探偵マリアは推測しましたよ!



「スクアーロ、また何か危ない事をするつもりかしら?」


振り返るとマリエ姉様と魔王…いやエリオス、そしてクロとトムが立っていた。


「え、いや、俺はただ…」



スクアーロは父親に怒られる前に女神様と魔王に叱られてかなり落ち込んだ。何故か私も一緒に正座をさせられたわ。二人共怖かった!姉様に叱られるのは嬉しいけどね!


「スクアーロ!落ち込んだのなら南の森へ行くことをオススメするわ!」


「なんで森にいかなきゃならないんだよー」

と面倒くさそうに返事をするスクアーロ。


そりゃヒロインと出会うからよ!と私は心の中で突っ込んだ。


「ん?あれ、ねえねえエリオス具合が悪いの?」


目をパチクリして少し驚いているエリオスと周りはそうなの?という表情だった。明らかにエリオスは顔が青いもん。


「え、なんで…わかるかなぁ」


「クッキー食べる?食べるとなおるかもよ!」


「ふふ、気持ちだけ受け取るよ。ありがとう、マリア」


エリオスは頭をポンポンとしてくれたけど、顔が青いよ。私はタオルをエリオスに巻いてあげた。


「え、ちょ、マリア?」


「これでよし!」


「ぶっ!ちょっエリオス!田舎のバアさんみてー!」


スクアーロは笑っていた。

クロや姉様は笑いを堪えていて、トムは

「王子様はなんでも似合いますねえ」と褒めていた。


「スクアーロは反省が足りないようだね」


「…すんませんした」


私達はエリオスに最近物騒だから家まで送ってくれるとのことで一緒に帰る事になった。王子専用の馬車と二人の護衛の人がいるからね。因みにスクアーロは強制連行で一緒に帰る事になった。


馬車に乗りトコトコと進む中


「!?!何者だ!うわっ!」


「グハッ!」


「何??!急に馬車が止まったわ!」


皆んなで馬車から降りて様子を見ると、護衛のお兄さん二人と馬車をひいていたおじさんが倒れていた。目の前にはピエロの格好をした集団がこちらに近づいてきた。


「ひひひっ!こりゃ王子もいるぜ」


「こりゃ、上玉だな!」


ピエロの後ろにはあのクロを売ろうとしていた太ったピエロおじさんがいた。


「あんたはピエロ太っちょおじさん!」


ピエロおじさんは何故か私とエリオスを睨み

「お前達が悪いんだ、私の仕事を邪魔しやがって…」


エリオスは私達の前に庇うように一歩出て、


「人質をとるなら僕だけで」


とても落ち着いた対応をしているエリオス。


スクアーロは自分が持っていた小さな剣を取り出してエリオスの横に立って、ほんの少しだけ手が震えている。


「エリオス!俺はお前の右腕になる男だ!それに友達を置いてかねえぞ!」


「私のお嬢様方を傷つけるようなことは許しません」


「うん、そうだね。許さないね」


クロとトムも一歩前にでた。

ピエロ軍団に囲まれていく中


「マリアっ…」


姉様はふるふる震えながらも私を守ろうとしている。


いや!なんつー大人達よ!?可憐な可愛いらしい姉様を怖がらせて!!こんなイベントないだろうが!



「あの王子と銀髪の嬢ちゃんは俺のだ!あとは好きにしろ!!」


「うひゃ!なら俺はその金髪の可愛い女の子をいただいて売るわ!」


あ?なんだと?!姉様売るだと!おいこら!


「もう私怒ったよ!アレを使うしかないわね!!!」

私はすかさず胸ポケットからあるものを取り出した。


私が作った姉様護身用の道具。お手製です!前世では昔から何か作るのが好きだったのよね!特に工作は得意よ!


エリオスや姉様達、他のピエロ軍団もぽかんとした顔で


「マリアそれはなにかしら?」


姉様不安がらないで!私が守るわ!


「うん、なんだろう僕だけかな。嫌な予感がする」


うん!エリオス!なんとかなるわ!



ピエロ軍団は「なんだそのクシャクシャな爆弾の形のオモチャは」と笑い飛ばしていた。


私はピエロ軍団をめがけて道具を投げつけた!!

その瞬間



ボンッ!!!!



モクモクと煙が放ちそして…


「くっ…くっさー!!!!!!?」


ピエロの何人かは匂いで具合悪くなっていた。



「おい、マリア!なんだ!くせーぞ!?」

スクアーロは涙出しながら私に聞いてきたけど、

今は逃げる事が優先よね!


「みんな!学園まで走ろう!」


私達はダッシュで走りだした。とにかく走りだした。


「何、この匂いっ、うぅっ…きゃ!?ト、トム!?なななななっ!なんで抱っこっ…!!」


「僕は戦力に欠けていますが逃げ足は速いですし、マリエお嬢様くらいなら抱っこして走れますから」


「えっ!あぅっ、ちょっ!!私走れるわっ!まっ…」


「マリエお嬢様じっとしてて」




おートム!!ナイス!姉様を抱っこして走るとはやるわね!


あれ?姉様なんか顔が赤くなって気絶しちゃったわ。やっぱりアレの匂いが駄目だったのかな?!


私達は走り続けて、ピエロ達もよろめきながら追いかけてくる。学園まではすぐそこだ!先生達に助けを求めよう!


「はあはあ…ねえマリア今の何?」


隣で走りながらエリオスは私に聞いてくる。


「とにかくアレは凄い匂いでしたね…お嬢様いつあんなものをおつくりに?」


困り顔で私の後ろに走るクロとエリオスよりも青い顔をしたスクアーロは

「ハアハア!…鼻が痛い、きもちわるっ」

と半泣き状態だった。

姉様を抱えながら走るトムは平気のようだった。



「ふふ、まだ改良中だけどあれは姉様を守る為の秘密道具よ!」



私はドヤ顔で皆に教えてあげた。



「アレはね!秘技納豆爆弾よ!!!」




「「いや、だからナットウってなに?!」」


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