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佐助の来世事情  作者: 名倉なのい
第一章 流るる前世
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全ては此処から始まった~死のその先に~

 もうこんな人生嫌だ! 死んでやる!

 そう決心したのは昼の話である。男――小鳥遊三十郎はゲーム会社に勤める三十代のくたびれたサラリーマンである。二十代の頃に幼馴染みの女性と結婚し、男女の子供を授かり、父のコネで今の会社でサウンドクリエイターとして雇用された。着々と業績を残し、辛い事はあれどそれなりに楽しかった仕事。

 だがそんな仕事とは裏腹に生活は上手くいかないものであった。

 そんな訳で仕事を終え、貯金を全部引き出し、近場のキャバクラへ向かいキャバ嬢に貢ぎ、その後は風俗で己の欲を発散した後、居酒屋で飲んで酩酊状態で現在、会社のビルの屋上に立っていた。

「どうして俺がこんな目に遭うんだ!」

 最早泣いても許されると思う。

 二ヶ月前、妻の浮気が発覚した。相手は、三十郎の親友だった。妻の言い分は三十郎が仕事ばかりで顧みなかった事が悪いと。親友もまた、己の妻を裏切り三十郎の妻と逃げた。そっちは今、警察に任せている。が、妻の浮気の発覚と同時に、子供達が全く学校に通っておらず、それどころか家にすら帰っていない事がわかった。長女に至っては暴走族に入っている次第である。どうしてこうなった。長男は今どこに居るかもわからない。そんな事になっている家庭なのに、再び悲報が入ってくる。今度は己の父母が痴呆になり、母は認知症になってしまったというのだ。それを三十郎の姉は妻に言ったらしいが、全く伝わっていなかった。その結果、家も、実家も、何もかもが崩壊していった。

「確かに俺が、妻に任せてたのが悪いけど! でもこんな事ってある!?」

 ふざけるな、神よ。こんなに身を粉にして毎朝夜まで、ゲームの新パッチが出る前は徹夜して動いていたというのに。家族のために頑張っていたというのに、家でもサービスしろだ、家事を手伝えだ、いい加減にしろ状態である。休日なんて無いに等しい仕事だ。そんな事が出来る訳ない。その代わり、金には困らないよう稼いでいた。

 それなのに、なのに。

「何がダメだったって言うんだ!」

 そうビルの屋上から叫ぶ。もう何が正解かわからない。ああ、もう、死んでしまおう。その方がいい。そうすれば来世で新しい人生をやり直せるかもしれない。どうせなら、ヒーローとか、英雄になれるような、そんな世界がいい。

 そう思い、三十郎はビルの柵に足をかけた。酩酊状態、酒が回り正常な判断なんて出来ない状態だ。己でもわかっていた。これが正しいと疑いはしなかった。三十郎はネクタイを緩め、鞄を後方へ投げ捨て、そして――飛び降りる。

 さようなら、人生! また来世!

 そう祈り、三十郎の身体は真っ逆さまに落ちていく。

 そうして彼の身体は――地面に叩きつけられ、無惨な死体を晒した。



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