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佐助の来世事情  作者: 名倉なのい
第二章 未来からの刺客
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全ては此処から始まった~妄執の化身~

「……待て、なら何故魏は半兵衛を、豊臣と交渉しない? 曹操――殿なら、半兵衛を捕まえる事くらい――」

 そこで佐助は疑問を持った。まさか、と。それなら、その通りなら、佐助達は妙な事に首を突っ込んでしまったのではないか。そして、その通りだと言うように姜維は頷く。

「……魏は、異民族と呉と協力し半兵衛包囲網を敷くつもりなのじゃな。蜀を叩くのは建前、本当は半兵衛が狙いじゃったか」

 半兵衛を捕まえれば、神はその血で蘇る――そう誰もが信じていると姜維は言う。もちろん、姜維もそれを信じている訳ではない。だが、命令でやっている。そのようだ。

「半兵衛は、それを理解しているのか」

 姜維は何も言わなかった。答えはわからないといったところか。だが、このままでは半兵衛が危険に晒されるだろう。それとも、半兵衛は既に理解している――か。いや、あの性格ならむしろわかっていて動いているのかもしれない。もし、そうなら、とんでもないろくでなしで、とんでもなく性格が悪いが。

「なるほどね。貴重な情報提供、礼を言うよ。で、一つ聞きたい、姜維」

 あのお方とは誰だ。佐助はずっと気になっていた事を尋ねた。あのお方は、世界は、何をしようとしている。あのお方が黒幕なのか。気になる事を全て問い――姜維に突然槍の切っ先を突きつけられる。

「あのお方の事は知らぬ。私はただ、孟徳様の敵を屠るのみ。情報は与えた、だから、問おう。我らに協力しろ、さすれば孟徳様は貴様らを救ってくださる」

 私が取りなしてやる。私は郭嘉殿や司馬懿殿と交流がある。彼らが取りなしてくれるはずだ。だから、大人しく半兵衛を差し出せ――と姜維は告げた。

 が、答えは既に決まっている。否、である。

 佐助は覚悟を決め、右腕を振ってその槍を刃で弾き姜維と距離を取る。籠手から出ている刃の切っ先からは白い液体が飛び出ては、姜維へ降り注ごうとしていた。だが姜維は左腕で防ぐ。焦げるような音がしては、姜維の袖を焦がした。

「硫酸……?」

 この時代に硫酸なんてあったのかとか、そういう事は今更問うつもりはない。この世界は佐助が知っている世界とは違うのだから。だが「佐助」には感謝しなくてはならない。忍という身体をくれた事に。恐らくこの身体は、装備は、色々なところから色々な仕掛けが出るのだろう。さっきの硫酸――もその一つ。

 ならば、勝算はある。

 そう思った瞬間だった。一瞬で姜維は佐助の懐へ入る。佐助は瞬時に両腕を顔の前に持ってくる。振り下ろされた槍の刃を受け止める。

「っく」

 重い、重くて、強い。足が地面を削り下がっていく。いくら同じ体格でも、違う。姜維は武人として鍛え、佐助は忍として速度に重点を置いている。その点では負けていた。

 だが、佐助には勝てるものが一つ。

「忍には、着いて来られないだろ」

佐助は飛び上がり、近くの木の枝へと着地する。どういう訓練をしたらこんな事出来るのかわからないが、そのお陰で姜維と渡り合えるというものだ。

 直接相対するより、影から狙った方がいい。その方が勝てる確率は――。

「佐助ッ!」

 ガラシャの焦燥感溢れる叫び声。何だ――と思った矢先の事だ。

 背後から殺気が感じ取れたのは。


「――この姜維、そこまで優しくはないぞ」


 振り返った瞬間、肩口から斬りつけられ佐助は地面に落とされる。地面と挨拶する前に、受け身を取り、血をまき散らしながら立ち上がった。肩は深く斬られたが、咄嗟に腕で防いだため肩を斬られるだけで済んだ。出血は少なくないが。

「速度は認めてやろう。だが、私は一度狙った敵は逃がさぬ。逃げられるなど思わない事だ」

「へえ、そう。じゃ、俺も――あんたを逃がさない」

「そうか」


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