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佐助の来世事情  作者: 名倉なのい
第一章 流るる前世
10/38

全ては此処から始まった~異世界転生~

□□□□


 漢中。蜀の首都である成都の北に位置する場所である。度々曹操軍が攻めてくるため、今は激戦区となっているらしい。劉備も蜀という国を持ち、それほどの期間も経っていない。つい先日、巴蜀を治めていた者を倒し手に入れたばかりだそうだ。現在は維持と、国力の増強に力を入れているらしい――。

 そんな話を漢中へ向かう道中で佐助はガラシャから聞いていた。佐助の知る三国志とは少し齟齬があるようだ。そもそも劉備が国を得た時曹操は既に死んでいるし、漢中での戦いも劉備が蜀を得てすぐの事だがそれは数年後だったはず。こんなにすぐ行う訳じゃない。佐助は馬に揺られながら、ガラシャの話に耳を傾けていた。

「つまり、この世界は俺が知ってる三国志とは違うって事か」

 そうなのじゃ、とガラシャは横で馬に揺られながら頷く。

「この世界はわらわ達が知る世界と、また違う。わらわが、細川の娘であるわらわが居る事こそがその証明じゃろう」

「確かに、戦国時代と三国時代は、時代が別物だったっけ」

 歴史は詳しい方ではない、ゲーム会社で働いていたためそういう知識も必要だった時があった。そのため、基本くらいは知っている。まあ、基本以前の問題ではあるが。

「で、何故こんな世界になってる?」

「わらわもわからぬ。わらわがこの世界に辿り着いた時は既にこのような世界じゃった」

 ガラシャは獣道を馬で走らせながら、静かに語る。蹄鉄の音で少し聞こえにくいため彼女は声を少しだけ張り上げた。

「わらわは最初、長坂ちょうはんに降り立った。気付いたらそこに居たのじゃ」

 ガラシャの本名は明智珠――本能寺で信長を討った明智光秀の娘だ。そんなガラシャには夫が居る。細川忠興――なのだが、これは佐助の世界の戦国史である。佐助の世界、現代でならそうであろう。だが、違う。

 ガラシャの夫は、此処では石田三成だそうだ。これには島左近もひっくり返るほどである。

 その細川、ではなく、石田三成の付き添いとしてガラシャは曹操軍にいた。曹操軍に居た理由はただ一つ。

「そもそも我ら日本勢は、何処かの同盟国となっておる。わらわ達豊臣は曹操だったり、蜀だったり。真田と徳川は蜀と聞いておる」

 この世界は、わらわ達の言葉で言うなら“異世界”じゃろう。わらわ達は別の身体へ転生してしまった――そう考えるしかないのう。ガラシャは馬に揺られながら、少し諦めを抱きながらそう呟いた。


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