姉達による強制転校
「こっちです,お兄様」
前を歩いている二人を追いながら長い廊下を歩いていく。
王立の学園というにふさわしい広さと雰囲気の内装だ。
「着きました、覚悟はいいですか?兄さん」
サルビアが真剣な目で言ってくる。
深呼吸をし、俺は覚悟を決めた。
「大丈夫、行こう」
うずがドアをノックした
「失礼します、芳乃 椿を連れてきました」
すると、ドアの向こう側から女性の声が聞こえた
「入りなさい」
ゆっくりと部屋へ入った瞬間
「つばき~!会いたかったぞー!」
「またかよ……ぐっっっ!」
またタックルをくらう俺
「久しぶりだなー!椿!」
タックルをかましてきた女性がそう言う
「アズ姉久しぶりだね」
俺がアズ姉と呼んでいるこの人はアズレア アボット。
青い色のウェーブのかかった長髪、名前からわかるようにサルビアの実の姉だ。
「この日をどれだけ待ったことか~」
すごくデレデレした顔で抱きついてくるアズ姉に対しサルビアが。
「姉さん恥ずかしいのでやめてください」
「自分はさっきまで椿に触れていたくせに」
「あ、あれは治療なので…」
「じゃあ、これも治療なの!お姉ちゃんの心の!」
言い合いを始めた二人に対しうずが
「お二人ともお兄様が見てますよ」
そう言うと二人が言い合いをやめた。
「と、とにかく!本題に入りましょう!」
サルビアが恥ずかしそうにそう言うとドアからノックの音がした。
「やっと来たわね、どうぞ~」
アズ姉がそう言うと一人の青髪の老人が入ってきた。
「いやぁ、遅れてすまない会議が長引いてしまってね」
するとこっちを見て老人は微笑みながら口を開いた。
「はじめまして椿君、いつも二人が世話になっているね」
どうやら、老人はこちらのことを知っているみたいだ。
するとサルビアから
「この方はガラニチカ アボット、この学園の学園長であり、私達のお爺様です」
「が、学園長!?」
「実はそうなんだよ、はっはっは」
そう言いながらおどけて笑っているが魔法学校の学園長はかなりの実力者のはずだ。
「おっと、話がそれてしまっていたね、それでは君をなぜ呼んだのか説明させてもらおうかな、サルビア始めておくれ」
サルビアが頷くと部屋の電気が落ちモニターに映像が写し出された。
「あまりテレビを見ない兄さんは知らないかもしれませんが実は世界ではウィザードたちによるトーナメント、通称ウィザードトーナメントが年に一度行われています。」
「このトーナメントは国から代表者5名を出し一対一の個人戦で戦っていくトーナメントなんだ。」
「さらにウィザードトーナメントは高校生部門が存在し各学校からこちらも代表者5名を出して戦う」
学園長がそう続けた、だがその説明をされて俺は嫌な予感がしていた。
「あのー……ちょっと待ってください?その説明と僕がここに呼ばれたのにはどういう関係が?」
「椿は相変わらず鈍感だな~」
アズ姉がそう言った、相変わらずというのが腑に落ちなかったが話を続けてもらうことにした。
「つまり、ウィザードトーナメント出場するのは必然的に実力者が出場するのが主になっているの。」
「だからどういうことなんだ⁉」
俺がそう問いただすとアズ姉が楽し気な顔でこう告げた。
「芳乃 椿さんあなたには私達桜花学園の代表としてウィザードトーナメントに出場していただきます。」
突然そう告げてきたアズ姉に対し当然の如く抗議した。
「急に言われても困るよ!そもそも俺は違う学校の生徒なんだから!」
「それに関しては問題ない、君の師匠に頼んで転校の手続きは済ませてある、今日から君はこの学校の生徒だ」
師匠……、最初から分かってやがったな……。
「というわけで今日から宜しくお願い致しますお兄様!」
「やっと兄さんと同じ学園で…」
「椿覚悟してなさいよ~」
三者三様の言葉を口にするなか学園長から。
「じゃあ私はこれで失礼するよ、これから委員会のほうに顔を出さないといけなくてね」
そう言いながら横を通りすぎる瞬間、俺にしか分からない声の大きさで、
「きっと君はこの学園で自分の殻を破ることが出来る……期待しているよ」
そう言って部屋を出て行ったのであった……。